妻はドアとふた
妻は頓着しない。
自由だ。
ドアが開けっぱなしである。
MAXにオープンなわけではない。
勢いよく閉まりすぎないように最後フワッとなるタイプのドアで、案の定フワッとなって数センチ隙間。
ガチャンと閉めきらない。
夏、冷房が逃げる。
冬、暖気が逃げる。
しかし冷房や暖気が逃げてるときに部屋にいるのは僕だけ。その時、妻はもう既にいない。他の場所にいるか用事で出掛けて我関せず。
僕だけが冷房と暖気を失っているわけだから、
僕がドアを閉める。
床の水。
台所の床の水。
洗い物をする時に飛散する。
ある程度はやむ無く飛散する。
僕が洗った後は拭いている。
妻が洗った後、飛散して残る。残っている。
僕が靴下で上を踏んで通過する。
靴下濡れる。
妻は、もう既にいない。
他の部屋か用事で出掛けて不在。
僕だけが家にいるのだから、僕が通過する時に初めて水を踏む。
妻はスリッパを履いてるので
永遠に水を踏む被害を認識することはない。
被害を認識して、僕が水を拭く。
ドレッシング。
冷蔵庫のドレッシング。
冷蔵庫の深煎りごまドレッシングのふたが開けっぱなしである。
MAXにオープンなわけではない。
最後パチッと閉めきる努力を怠った結果、フワッと数ミリ隙間。
パチッと閉めきらない。
次に取り出すのは僕。そのとき既に妻はいない。妻出勤日、僕休みの日。僕だけがフワッと数ミリ隙間の深煎りごまドレッシングを取り出す。
平日につき子どもらも学校で不在。
僕だけが深煎りごまドレッシングを冷蔵庫から取り出す。
持ち上げた瞬間、がしゃんドパッ
冷蔵庫のとびらの他の牛乳や調味料の底面、
下の冷凍室と野菜室の引き出しの手を引っ掛けるくぼみ、
床、
冷蔵庫と床の隙間、
そういった箇所に、
深煎りごまドレッシングが絶妙に拡大して飛散する。
家にいてこぼしたのは僕なわけだから、
僕が調味料の底面や引っ掛けるくぼみや床の隙間を拭く。絶妙に疲弊する。
妻は頓着しない。
面白い。
妻は、自由だ。
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