二律背反
道すがらの商店の壁に、支援政党とおぼしきポスター、「日本共産党」。
その横に並べて貼ってあるのが、地元の高齢重鎮有力幹部議員のポスター、「国土強靭化へ 自由民主党」。
1軒の商店の壁にだ。
この家主は何を考えているのか。
どういうつもりなのか。
どちらかが本命でどちらかが義理なのか。
昔こっちを応援してて、歳月がイデオロギーを変え、今こっちに変わったけど、昔のを剥がし忘れてるのか。
忘れてはないけど剥がすのがめんどくさいのか。
応援の気持ちがたまたま丁度五分五分なのか。
両者とも親戚で仕方なしなのか。
両者からそれなりのものを貰ってるのか。
両者とも本当は応援してないけど、本当に応援している中庸の政党を貼り出すのが何だか恥ずかしいから、やじろべえのように180度違う両翼を貼り出すことでバランス取ってるのか、あるいはカモフラージュしてるのか。
目抜き通り沿いの商店だけどかなり年季の入った佇まいだから誰も見やしねーと高を括っているのか。要は灯台下暗し、「木を隠すには森の中」といった忍者の極意のようなことを推奨した理屈なのか。
1軒の商店に見えてたけど実は長屋で、2枚のポスターの間が実は2軒の別々のイデオロギーを持つ家主の境界線だけど、外観からはたまたま2軒の区別が付かないだけなのか。
両者とも息子か。
両者とも親か(実の父と、『金持ち父さん貧乏父さん』的に片方は血縁関係にない場合も含む)。
両者とも兄貴か(実の兄と、いわゆる「アニキ的存在」のように片方は血縁関係にない場合も含む)。
両者ともおじか(最もリアリティー)。
家主は実は無関係で、各々の支援者が勝手に貼ったのか。
その場合、どちらが先かは分からないが暗闇に紛れてお互い先に貼られたポスターが暗くて見えておらず、結果的に自分が一番に貼ったと勘違いしながらミッションを終えたのか。
昼間にお互い同時のタイミングで商店の壁の前で鉢合わせ、にらみ合いながら結局二者とも威圧感が拮抗して2枚並べて貼られることになったのか。
もし上記の2エピソードが家主の許可なく現実だとすれば二者とも捕まっているはずだが、どうなのか。
家主はイデオロギーとやらがなんのこっちゃ分かってないのか。
プレスリーとビートルズのレア物ポスターぐらいのノリで貼ってるのか。
実はVILLAGE VANGUARDで買ってきた限りなくホンモノに近いパロディものなのか。
答えはいつも風の中。