ドライヤーをひねったら止まるから、代わりに首をひねる
うちには2台ドライヤーがある。
そのうち1台は僕専用で、もう1台は家族が使う。
僕は優遇されているのか?
いや、そうではない。
僕専用の1台は使い方にコツがいるので、あとの家族はめんどくさがって使わないだけ。
そもそも1台でいいところを2台所有になったいきさつはこうだ。
元々は今家族が使っているほう(以下Aとする)が最初にあった。Aのヘッド部分のプラスチックカバーが破損し、直射の勢いが弱まったので、妻が2台目を買ったところから話は始まる(2台目を以下Bとする)。Aは直射の風は弱まったけど、通常の使用には一切支障がない。しかし妻はそれが気に入らなかったのでBを買ったわけだが、僕としてはAがもったいなかったのでAを使うことにした。Bは当然勢いが強くイオン付きなので、妻と長女・次女が使い、自動的にAは僕専用になった。僕は全く不自由なく快適にAを使っていた。Aと楽しく毎日を過ごしていた。
ある日、妻・長女・次女がBを使うのをやめ、Aを使いだした。
僕は理由を問うた。
「B壊れてん。取りあえずA使うわ。もう新しいの買わなあかんな」
Bが作動しなくなったという。壊れたなら仕方ないが、にしても、「新しいの買わなあかんな」って、妻はBだけでなくAも破棄しようとしているじゃないか。今Aを使っているのはBが壊れたから仕方なくであって、Aは風量が弱いからAもBも捨てるという。Aは腰かけに使われている。
待てよ。勝手に腰かけにするんじゃないよ。僕はAと楽しく過ごしていたんだよ。僕の短髪にはAの風量でも十分なんだよ。勝手にAとの日々を奪っておいて、Bも壊したからってAを腰かけにして、しまいにはAもBも捨ててしまうなんて、まるでモノみたいに扱うんじゃないよ。モノだけど。
僕以外の家族3人がAを使いだしたので、僕はBに目を向けた。見向きをされなくなった対象に意識がいくタイプだから、僕は。
壊れたって、どんな風に壊れたのか。
ホントに壊れたん?
…ブォーーーーーーー
「Bちゃんと点いたでー?」
って洗面所から妻のいる方に振り返った瞬間、
フォン……
?
止まった。
Bをいろいろ眺めまわしていると
…ブォーーーーーーーーー
点いた。
Bをいろいろな角度に動かしていると
フォン……
止まった。
ブォーーーーーーーーー
フォン…
ブォーーーーーーー
フォン…
角度を変えたら止まることが分かった。
コードは鏡の横のコンセントに差し込んでいる。
まっすぐ自分の顔正面にコードとBのヘッド部分が向いているときは作動、
鏡を見た状態で側頭部や後頭部に風を当てようとBのヘッドを回してくると停止、
ということが分かった。
一見不便なようだけど、僕の感覚では全然問題ない。
Bのヘッドは動かさない。Bは固定した状態で、自分の頭を回せばいいだけだ。マジシャンのナポレオンズさんの「あたまぐるぐる」の要領だ。
「Bも使えるよー」
誰も「あたまぐるぐる」してまでBを使おうとは思わないみたいで。
その日からBは僕専用、Aは妻・長女・次女が使っている。
しかしドライヤーの性能に関する根本的な問題は、何も解決されていない。