低速の車は
公道を自動車で走っていたら、前の車がとても丁寧だった。
要はとてもゆっくりだった。
とても丁寧だったので感心した。
僕の後続車が渋滞し始めていた。
後続車にとっては、ともすると僕が先頭だという嫌疑をかけたくなるかもしれない。僕の車体の外郭が、皆既日食の様に僕の前の本当の先頭車を覆い隠してしまうから。
だめだめだめ
僕じゃない。
僕はやってない。
僕じゃないんだ。
僕の前の車の人、もうちょっと頑張ってくれ。60キロ道だよ、まだ35くらいは出していいよ。
お爺さんかお婆さんか、体調の悪い人か分からないけど、もう少しいけるよ。
そうだ、
もしかしたらニトロ爆薬を大量に運んでいるのかもしれない。少しの衝撃で爆発を起こす傍ら、狭心症治療薬でもあるという、昼と夜の2つの顔を持つあのツンデレ化合物だ。
路面の振動と、ニトロ同士の接触に細心の注意を払っているんだな。
そうだ。きっとそうに違いない。
だとしたら説明がつく。
逆にだとしなければ説明がつかない。
きっとそうだ。
よし。
よしとしよう。