最終報告書
ドライヤーはしない習慣だった。
髪の長い人がするもの、
髪の多い人がするもの、
コームでぴっちりセットする人がするもの、
したい人がするもの、
ドライヤーとはそういうものだと思っていた。
「やった方がいい」
「抜け毛の元やで」
「フケ出るよ」
ドライヤーをしないことの弊害を同僚に指摘され、
ちょうどそれらの現象に直面していた時だったから刺さったのか、
1年半前から入浴後のドライヤーを始めた。
ドライヤーを始めても抜け毛はあるしフケもあるし。
でも「毛抜けるやん」「フケ出るやん」という文句は思いつかなかった。
僕は一旦得心して自分で始めたことにはアドヒアランスが高く、
それはそれはもの凄くしっかりと確実に継続する人だ。
歯間ブラシやフロス、舌磨きも欠かさず続けている。
ドライヤーについてもアドヒアランスが高く、入浴後には欠かしていない。
何かの拍子に欠かしてしまいそうになったら、その時点でしていることを押してでも、手を止めてドライヤーをしに行く。
それぐらい生活の中に定着したものだから、始めるきっかけになった「抜け毛」と「フケ」が少なからず続いても、文句を凌駕するアドヒアランス(その重要性を理解して継続し続けること)によって特に不満は感じず、何か別の原因があるんだろうなと、深刻には考えなかった。
「2回シャンプー⇒リンス」という習慣の人は、
ぼーっとしていると
あ、今シャンプー何回目だっけ?
リンスしたっけ?
というのはよくある「あるある」である。
リンスではなくトリートメントやヘアパック派の人は、リンスよりもしっとり感やオイリー感が増すので、シャンプー後のパシパシ感は消失し、自分がトリートメント後なのか未トリートメントなのかがすぐわかる。
しかしいわゆるリンス派の人は、ただ”毛並みを落ち着かせる”ぐらいの作用だからシャンプー後のパシパシ感が残ることがあり、たとえリンス後でもぼーっとしてたら「リンスしたっけ?」と呆けることもしばしば。
ここまで説明しておいてなんだけども、僕はトリートメントを使っているので、シャンプー後のパシパシ感に悩まされることはない。「シャンプー何回目だっけ?」は相変わらずあるが、さすがに「トリートメントしたっけ?」はないのだ。
過去に湯シャン生活や「ビオレ オールin one(髪・顔・体)」によるフケ地獄を経て、「自分にはトリートメントが必要」という認識に至り、トリートメントを使うようになった。
だから、さすがに「トリートメントしたっけ?」はないし、抜け毛とフケのの原因はドライヤーではなく、トリートメントを使っていなかったことだったと分かったのだ。ははははははは。
それでもドライヤーはアドヒアランスが維持され続けているので、それが抜け毛やフケに影響しようがしまいが習慣として息づいている。
そして今日もドライヤーをする。
手ぐしがどうも引っかかる。
温風に混ざるはずのいつものトリートメントの香りがしない。
どうやらトリートメントを忘れたらしい。
シャンプーを2回して、
「まだパシパシだから次はトリートメントだな」
ではなく
「2回したからもう頭は終わりだな」
という思考をしたんだと思う。
ここまで僕は、普段からシャンプーをさも2回するような素振りでいたが、僕は本当はシャンプーは1回しかしない。
だから
「シャンプー2+トリートメント1=3工程」
ではなく
「シャンプー1+トリートメント1=2工程」
が本当の僕であるはずだった。
今回ぼーっとしていたことにより、シャンプーの回数ではなく合計の工程数だけにフォーカスし、2回目にしたのがトリートメントではなく間違えてシャンプーだったにもかかわらず、
「2工程終わった。よし、頭は終わり」
と脳が判断してしまった。
結果、そのあとに体も洗い終えシャワーを終え、ドライヤーをするまで、何より重要なトリートメントをしていなかったことに気付かなかったと、
事故調査委員会の最終報告書では結論付けられている。