春眠暁を覚えず
眠い。
晩酌したことを差し引いても翌朝には気だるさが残る。
スマホのアラームに起こしてもらう。
カーテンのすき間から漏れる明るさのみを頼りに、薄い暗がりの中でベッドの下のスマホを手探りする。
スマホを枕元に置かないのは、できるだけスマホの電磁波から頭の位置を離そうという小手先の手段だ。
気休めでしかない。
目覚めの気分にそぐわない、ポップなメロディーのアラームが流れ続ける。
Galaxyにプリインストールされているメロディであって、何か僕自身が目覚めにこだわりを持たせているわけではない。
目覚めさせるという機能性だけで考えると、目覚めの気分にそぐわないメロディの方が目覚めの気分にそぐうメロディよりも、より早く目覚めさせてくれるだろう。
目覚めの気分にそぐうと、気分を良くしてそのまま逆に目覚められなかったら本末転倒だ。
フジテレビ「めざましテレビ」のキャラクター「めざましくん」のような初期型の目覚まし時計は、目覚ましの機能性を必要十分に担保している。
要は初期型の目覚まし時計は、目覚めの気分にすこぶるそぐわないものだ。
あのタイプの現物は生まれてこの方見たことがない。
一度拝見してみたい。
そうこうしているうちにベッドの下のスマホに手が届く。
しまった、画面に変な触れ方をしてスヌーズにしてしまった。
基本は二度寝はしないので、スヌーズはせず一回で音を消すようにしたい。
画面にワンタッチするだけだとスヌーズになる。
しっかり消すには画面をスワイプしないといけない。
寝ぼけまなこにいきなりブルーライトを浴びた状態で、正確にスワイプするのは難しい。
一旦スヌーズにしてしまうと、5分後に下の部屋で顔を洗っているときに上でやかましくポップなメロディが流れ出し、急いで階段を駆け上がって消しに行かないといけないのがすごく気だるいから、どうしても一発目でアラームを消しておきたいという、寝起きながら強い気持ちがいつもある。
何とか消した。
ブルーライトは毒だ。
ブルーライトは毒だという科学的根拠を差し引いても、寝ぼけまなこに突き刺さるブルーライトは毒だという感情が、ブルーライトを浴びながら頭の中を駆け巡る。
ベッドから足を下ろして座り、床の冷たさに苛立ちを覚えつつ、スリッパをはくか靴下を履くか、どっちでもいいけどとりあえず早く冷たさを回避させてくれと思いながら靴下を履く。
寝起きで固まった背中を丸めて靴下を履こうとすると、背中がバキバキ鳴る。
スマホは2階の机の上に一旦置く。
もしスヌーズを消したつもりで消せてなかったら5分後に下で顔を洗っている時に駆け上がって消しに来ないといけない。
そんな心配するんだったら一緒に下にスマホを持って降りればいいんだけど、寝ぼけまなこでスマホをパジャマのポケットに入れていくと、入れ方が不十分で固い床にスマホを落としてしまうことがある。
画面にヒビが入ろうものなら最悪だ。
うちが固い床ではなく、イオンモールの2階以上の専門店街に見られるような柔らかいカーペットの床ならいいのにと、心から思う。
それならスマホにヒビが入る心配も、床の冷たさに苛立ちを覚える必要もない。
そうは言っても仕方ないから、今のところはスマホは寝ぼけまなこで下に持って降りずに、2階の机の上に置くのが、当面の僕の中での正解だ。
スマホにヒビを増やすよりはポップなメロディのアラームを消しに階段を駆け上がる方が、いくぶんかはましだ。
ちなみに今日は階段を駆け上がらず、余裕を持ってコーヒーを淹れることができた。
朝が眠いという話だ。