注意してみた。
公衆浴場で子どもが二人はしゃいでいた。大浴場の真ん中のメインの湯船にダイブして潜ったり、サウナ横の水風呂に三角座りのポーズで飛び込んだり。
絵に描いたようなはしゃぎっぷり。
「お子さま連れの方はホニャララホニャララ」
の注意書はなかったけど、そんな注意書の挿し絵のようなはしゃぎっぷりだ。
おぉ~
僕は血が騒いだ。
保護者は?
どうやら見当たらない。
事情は分からないけど、良い状況ではない。見過ごすのは勿体無いな。
勿体無い?
何が?
僕は先に頭と体を洗っていた。洗い場の仕切りの向こうがメインの湯船なので、子どもらの様子は見えないが、水のスプラッシュ音とはしゃぎ声が浴場に反響。
はしゃぎ声は何を喋ってるんだろう。反響してよく聞き取れないな。
やっぱり聞き取れない。
そして僕は、子どもたちは日本語を話していないなと考えた。
日本語なら反響してようがどこかのタイミングで単語が聞こえるだろうが、どこまでいっても耳馴れた単語は出てこない。
よし洗い終わった。
このチャンスを逃したら勿体無い。
だから勿体無いって何よ?
遊びとちゃうんやで?
いやいや勿体無いでしょ。
外国の子どもとのコミュニケーションのチャンスを逃すなんて勿体無いよ。
なんだそういうことかぁ。
そういうわけで、僕はタオルを巻かずに威風堂々と濡れた石畳を歩き、メインの湯船に浸かった。
二人の子どもは水風呂にダイブしているところだ。
やはり日本の子ではなさそうな顔立ち。中華系?もう一人はラテン系?やはり保護者らしき人はいない。とても楽しそうだ。しかし日本の子でも日本の子じゃなくても、良くないものは良くない。悪気はなさそう。マナーを知らないだけだ。ただ旅先で綺麗な広いお風呂。気持ちよくて楽しい。ただそれだけで、プールよろしくダイブしたり泳いだりしたくなっても当然。端的に優しく伝えよう。
Hey、hey!
This is not for playng.
OK?OK.
こっちをじっと見て聞いてくれた。うなずいてくれた。…ように見えた。
二人は湯船で少し何か会話を交わしたあと、静かに湯船、浴場から、脱衣所に出ていった。
通じた。
日本の子にさえ注意したことは一度もなかったけど、英語をしゃべるチャンスとばかり、初めて外国風の子に注意してみた。
子どもたちには少し苦い思い出になったかもしれない。しかし日本のおじさんにはいい経験になって、むしろ楽しかったよありがとう。
不謹慎か?いやそんなことない大丈夫。自分で言う。
素直に聞き入れてくれてありがとうね、少年二人。