見出し画像

演劇を楽しみたい人が心地よく過ごせる「演劇空間」をつくりたい

2021年3月、今からざっくり2年前にさよならキャンプという演劇ユニットを立ち上げた。その年の10月に旗揚げ公演を、翌年2022年5月に2回目の公演を行って、来る3月には3回目の公演「あなたがどこにいても」が開幕する。

▽新作「あなたがどこにいても」公演情報はこちら

さよならキャンプを立ち上げたとき、主宰のぬまちゃんと二人で「やさしく、まじめに、たのしい演劇」という、モットーというかキャッチコピーのようなものを決めた。この言葉の主語は公演を観に来てくれるお客様であったり、作品をつくっていく自分たちであったり、もしくはいろんな方面から応援してくれる人たちだったりする。とても広い意味で、関わってくれる人みんなが気持ちよく演劇を楽しめたらいいなと思っていて、心地よい演劇空間をつくっていきたいという思いを込めている。

2021年2月/さよならキャンプ旗揚げ1か月前

こういう言葉を掲げた背景には、それまでに演劇を観たり作ったりした中で「なんかしんどいなあ」とか「たのしくないなあ」とか「そこはふざけるとこちゃうやろ」と、多かれ少なかれ思ってきたという事情もあったりする。でもマイナスな気持ちばかりではない。それまでの演劇空間にだって、あたりまえだけれど、やさしく、まじめで、たのしいシーンは沢山あったし、だからこそ続けてこられた。ああいう穏やかな時間で満たされた演劇空間が作れたらいいなあと思っている。

話が少し逸れてしまうけれど、私は演劇以外にもまちづくりやものづくり、子どもたちとなんやかんやする活動など、いろんなことをやらせてもらってきた。どれも自分一人では絶対に形にできないことで、本当にたくさんの人と出会ったり別れたり、仲良くなったり喧嘩したりした。

出会った人たちの中には「プロジェクトの成功」と「プロセスのしんどさ」がガッチリつながっているんじゃないか?という人が結構いて、「しんどい思いをすればするほど良いものができる」というジンクスのようなものがあるみたいだった。
たしかにしんどい思いをしたからこその結果というものはあると思う。しんどい体験も含めすべてのことは無駄ではないよ、という意味だとしたら、それも良く分かる。でもできればしんどい思いはしたくない。最初から最後までずっと楽しいって活動を目指してもいい気がする。

なんて言うと先輩方から「気持ちは分かるけど、残念ながら社会ってそういう(しんどい)もん」「人が集まったら絶対、なんか問題起こる」「美味しい物でも食べて明日から頑張って」と励まされ、美味しいものをご馳走してもらえたりもらえなかったりした。

何が言いたいかというと、そうは言われたけれど、しんどい思いをしなくてもちゃんと良いものはつくれるんじゃないか?いや、できるに違いない!という根拠のない自信がずっとあって、それを実証しようとしているのが今なのだと思う。誰も無理しない・傷つかない穏やかな演劇空間。それでいて、そこで生まれる作品もちゃんとおもしろいという状況を目指しています。

「演劇をつくる」ことについては、今一緒に演劇づくりをしてくれている皆さんやこれまで参加してくれた皆さんがどのように感じたか、分かるところと分からないところがある。「なんにも問題なく、みんな楽しく大成功でした!」とは言い切れないし、第100回公演とかになっても多分言えない。「この活動みんな楽しいかな」「嫌な言い方しちゃってないかな」と、ずっと自分を振り返りながら進めていくことになると思う。

それでも今のところは、大きなトラブルが起きてどうにもならなくなったり、不満が積もり積もって誰かがいなくなっちゃったり、そういうことはまだ起きていない。もちろんこれは関わってくれた皆さんの温かい気持ちやお互いへの敬意があったおかげなので、本当にありがたいこと。自分たちはなんて恵まれているんだろうねといつもさよならキャンプは話しているのです。

「演劇を観る」つまりお客さんに作品を観劇してもらうことについても、いかに心地よく演劇を観てもらうかを考えながら公演を打っては振り返っている。思いつく限りの準備や工夫をしてみるけれど、上手くいったと思うこともあれば、「あれはいらんかったな」「申し訳なかったな」と思うこともある。終演後にいただいた感想を分析して、楽しかったと言ってもらったり、期待はずれという言葉をもらったり、いつも来てくれるけれど特に反応がない人もいたりして「良かった?嫌だった?ねえどっち?ねえ」とドキドキしたりすることもある。

作品の良し悪しについては人それぞれの好みやコンディションがあるので、来てくれた人全員に100点満点をもらおうとは思わない(むしろそんな作品があったら何かしらの権力や動いていそうでこわい)。けれど「演劇に没頭するための環境」については、工夫や努力次第で100点に近い所を目指せるんじゃないかなと思い始めている。

演劇を観ることを楽しみたい人に、他のことに意識を奪われることなく、とことんリラックスした心とからだで作品を味わってもらいたい。例えばこんなかんじに思ってもらえたらいいなと思う。

― さよならキャンプの公演って、面白さは回によっていろいろだけど、居心地はめちゃくちゃいいよね

― 今日は演劇がっつり観たいからさよならキャンプ行く!

― あ~これこれ!この感じ。演劇観た感じするわ~

みたいな。公演に来てくれた人がこんな満足感を抱えてほくほくと家路につく。まっすぐ帰るのがもったいなくてどこかに寄り道したりしてもいいなあ。そんなうれしい、あたたかい、幸せな光景を自分の目で見たいのです。そのために、演劇を観るために最適化された環境というものを模索していきたいと思っているのが、今の私です。

すでに始めていることもあるしこれから考えていきたいこともあるので、具体的になんなんだ?というところは次回以降に言語化してみたい。例えば、演劇を観たことがない人が心配になりそうなポイントがあるとして、その緊張感をどうやってほぐすかとか。


2021年12月/4人組ユニットになってすぐ


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?