ヤバい統計学
ヤバい統計学(NUMBERS RULE YOUR WORLD)
カイザー・ファンク著/矢羽野薫訳/ 阪急コミュニケーションズ
プロレスのヒールみたいな名前の著者が10のエピソードを使って5つの統計学的思考を伝える本。
第1章、ファストパスとランプメーター
ディズニーや交通渋滞の行列を解消するために容量を増やす(乗員数や車線数を増やす)という選択は適切ではない。その行列を解消するために生み出されたのがファストパスとランプメーター(高速道路への車の流れを制御する信号)だ。
ファストパスは待ち時間が短くなる訳ではないが、待っている時間を他のことに使えるため、当事者の感覚としては待ち時間に感じない。この仕組みはディズニーが人の知覚を管理しようとする努力から生まれた。例えばエレベータホールに鏡を設置すると、エレベータを待つ時間が短くなったように感じる。人は鏡で自分の姿を見ている時間は、待ち時間と感じない傾向があるためだ。
これに対して、ランプメーターは当初、実際の待ち時間を減らす(交通量を増やす)ため導入された。ミネソタ州において、ランプメーターは実際に渋滞を減らす効果を発揮した。しかし実験の結果、ドライバーはランプメーターで一定時間停止させられるよりも、渋滞の中少しでも進んでいく方が、目的地に到着する時間が例え長くなったとしても、不快感が少ないという結果がでた。知覚が現実に勝ったのだ。
その結果を踏まえ最終的にはランプメーターの最大待ち時間を4分に制限し使用していくことに落ち着いた。
第2章、O175とクレジット社会
性別、年収、年齢等で分類した人々の中でO157に感染した人としてない人を比較し、感染源を突き止めた話。
第3章、大学入試
人種によって正答率が異なる問題を排除する方法として、グループ分けをして正答率を比較する方法がある。しかしこのグループ分けを黒人生徒と白人生徒という単純な方法で分けることは適切ではない。比較するのであれば、成績の良い黒人生徒と白人生徒同士、成績の下位の黒人生徒と白人生徒同士を比較することで、排除すべき入試問題を見つけ出すことが出来る。比較を行う際は、どうグループ分けするかが重要だ。
第4章、ドーピングと嘘発見器
ドーピング検査も嘘発見器も精度は100%じゃない話。
第5章、飛行機事故と宝くじ
墜落した飛行機と全体を比較して、飛行機の墜落に関連性はなく、アメリカの国際線も途上国の国際線も安全性は同じであることを証明する話。
比喩表現と専門用語が多くて、わかりにくかった。けど、ディズニーの人の知覚を管理する話は面白かった。待ち時間を無くすことよりも待ち時間を不快に感じさせないことを目的にしたとこが核心を突いてると思った。
訳者あとがきで、
おなじみの「真っ赤な嘘と統計」の本、ではない。
って書いてて、自分はそっちが読みたかったんだと気づいた。