気持ちの整理 補足[ドメスティックバイオレンスをうけたら その9]
[ドメスティックバイオレンスをうけたら その8]では気持の整理のために必要な概要を述べました。そのほかにもヒントになると思ったことを書きます。
犯人探しをしない
DVやモラハラは家庭や恋人関係の狭い人間関係の中で起こります。それがDVやモラハラだったのかや、何が原因だったのかや、どうすればよかったのかを客観的に判断する材料がありません。そのため、被害が人に理解されにくく、自分でもうまく説明できないということがあります。だからといって、わかりやすい図式に落とし込んだり、犯人探しをしない方がいいと思います。
[ドメスティックバイオレンスをうけたら その7]でも述べたように、相手のやり方を知ったり、自分の回復のためにそのような知識を得ることは必要ですが、それで犯人探しをしようとしない方がいいです。なぜなら、現実はこのような本に出てくるほど典型的ではないし、実際に検証できないからです。目的が犯人探しになってしまうときりがないので、あなたはいつまでも相手から解放されません。そうならないために、「無理に相手を許そうと思わない」「自分が悪いと思わない」「第三者に原因を求めない」という3つを意識しておいた方がいいと思います。
[無理に相手を許そうと思わない]
これは「相手を憎む」こととは違います。DVやモラハラをうけるといやでも相手に対する憎しみや怒りは出てきます。それを無理に押さえつけてはいけません。スピリチュアル系の本や心の健康について書いた本では、「憎しみはよくない」とか「嫌なことは自分が変わるきっかけ」とか書かれていますが、だからといって実際にそういう心境になれるものではありません。本心では許してないのに、相手を許そうとすると、何かしら無理をしてしまいます。たとえば、許そうと意識していると、いつも相手のことを考えてしまうとかフラッシュバックに悩まされるとかが起こります。相手を無理に憎む必要がないのと同じく、許す必要もありません。
[自分が悪いと思わない]
これは「自分がしたことは全部正しい」ということとは違います。「自分がもっと○○だったら」とか、「相手の気持をわかってあげればよかった」ともっとこうしていればと思うこともあれば、「もっと早く気づいていれば」とか「そもそも結婚しなければ(つきあわなければ)よかった」と後悔することもあるでしょう。人間なのですから完璧ではありません。限りある時間と条件の中で判断したことをあとから責めてもしかたがありません。考えが足りなかったり、考えすぎて堂々めぐりになったりしたこともあるでしょう。しかし、そのときにそうすると決断して今があるのですから、あまり後悔しない方がいいです。
[第三者に原因を求めない]
自分や相手以外で、原因を特定のだれかや何かに求めすぎない方がいいです。たとえば相手の親や自分の親がDVやモラハラ気質で相手の親や自分の親を恨むとか、会社を辞めたのをきっかけにDVやモラハラが始まったなら、そのきっかけとなった上司や取引先を恨むようなことです。しかし、現実はもっと複雑で、いろんなことがからみあっての結果です。第三者を恨むことは、逆恨みととられたり、あなたの評判を落とすだけであまりあなたにいい影響を与えません。
自分や周りに違和感を抱いたら
何度も言いますが、相手と離れたあとの自分の変化に注意深くなってください。今までしなかったことをしていませんか? またそれによって生活や対人関係に支障が出ていませんか? 性的に奔放になる、ギャンブルや飲酒、買い物など何かに極度にはまる、自傷行為をする、過食や拒食をする、鬱っぽいといった行動や症状があれば、DVやモラハラという本来の問題から発生した二次障害を起こしている可能性があります。
自分の家庭環境や養育者がちょっとちがっていると思いませんでしたか? 自分の生きづらさの原因が自分にあるかもしれないと感じませんでしたか? 自分の生育歴をふりかえる中で、自分の親に虐待をうけていたとか、自分が人格障害とか精神疾患とか発達障害をもっているかもしれないということに気づく場合もあります。それは今までの配偶者や恋人によるDVやモラハラとは別の問題なので、別の対策が必要になります。
性格が変わったとか、意地悪になったとか言われませんでしたか? 怒りやすくなったと言われませんでしたか? モラハラされたりDVされると人を精神的にコントロールして支配するやり方がわかるので、知らないうちに自分もモラハラとかDV的な行動をとってしまうことがあります。これは知らず知らずのうちに被害者を生みますし、あなたも傷つけます。もし人からそういう言葉をかけられたら、加害者と同じような言動や行動をしていないかふりかえってみましょう。
安定した毎日がつまらないとか、刺激がほしいと思いませんか? DVやモラハラの人といるといつも緊張していたり、いつもトラブルが起こるので、あなたはそれを解決するために常に何か考えたりしているという状態になり、それを解決することが生きがいになったりします。そして、いつの間にか加害者への怒りが生きる原動力になってしまうと、逆に何を原動力にしていいかわからず気の抜けたような状態になってしまいます。そして、トラブルがない状態を物足りないと考え、自分からトラブルメーカーに近づいていったりします。安定した毎日はあなたが相手から逃げることによって勝ち得た勲章です。自分から傷つくことに飛び込むのはよしましょう。
さいごに
おまけとして、インターネットととの付き合い方について書いておきます。ツイッターやインターネットの掲示板や相談サイト(2ちゃんねる等の夫婦問題の掲示板やまとめサイト、教えてgooや発言小町など)など、インターネットは情報収集と心の整理に非常に役立ちますが、諸刃の剣です。付き合い方にくれぐれも注意してください。
長所は、役所や法律などの知識が具体的な事例をもとに書かれているので、ヒントが得られます。うまく自分の体験と似た事例を探し出せれば、その人の回復過程や逃げる過程をしることで自分の体験を整理できます。また、復讐した話や別のいいパートナーとめぐりあった話などを読んですかっとするときや希望を持てたりします。
短所は、具体的な話が書いてあるので、フラッシュバックに襲われることがあります。また、被害者に対する意地悪な発言や無理解ゆえの発言を読んでいやな気持になったりします。また、ブログやツイッターに体験談を書くことが自己回復につながる一方で、加害者に居場所が特定されたり、いわれのない誹謗中傷にさらされたり、炎上によってダメージをうけたりします。情報発信する際はくれぐれも本人が特定されないように気をつけた方がいいと思います。
いちばん問題だと思うのは、中毒性があることです。たとえばツイッターで離婚情報やモラハラ、DVについてのニュースを発信している人ばかりフォローしていると、世界はそういうことばかりしかないと思えて、悲観的になったり、攻撃的になったりします。掲示板や相談サイトも同様です。インターネットは、あなたの志向に合わせていろいろおすすめしてくる機能があるので、いつもDVやモラハラについての情報にさらされることになります。それはあまりあなたの心の健康にとってよくありません。一日中インターネットを見ているとか、チェックせずにいられないという状態になっていたら、気をつけてください。自分で一日○時間とルールをつくる、スマホをやめる、インターネット回線の速度を落とす、ツイッターであまりにも情報発信がひんぱんな人はミュートするなど、工夫をした方がいいと思います。
※家庭問題についての本は、「毒親」「機能不全家族」「母娘問題」「アダルトチルドレン」等で検索するといろいろ出てきますが、どれも事例がピンときませんでした。わたしには、「されたこと」という具体例で見るではなく、親以外の養育者との関係性や自分がどう思うかみたいな部分に焦点をあてている本の方が役に立ちました。
なかでも、岡田尊司さんの『愛着障害』と『回避性愛着障害』いう本がよかったです。
※精神科受診やうつの記録については、なかしまあさみさんの「なかしまあさみblog」の記述が冷静で具体的な事例があり、本の紹介などもされていて、役に立つと思いました。
※精神科受診について、わたしの場合を書いておきます。DVやモラハラをする人は「お前の頭がおかしい」ということを言ってくることがあります。
わたしは以前、職場であまりにも上司にバカとか頭がおかしいと言われるので、自分は病気かもしれないと思い、精神科を受診したことがありました。うつ的な症状は出ていなかったので、自己診断の結果発達障害的な傾向があると思ったので、発達障害のテストをうけました。しかし、診断結果は違いました。医者に、あなたの上司がパワハラをしているんじゃないかと言われたことで、上司が悪いかもしれないという視点を持つことができました。その結果を知っていたので、元配偶者に頭がおかしいと言われても平気でした。あなた以外についても誰かのことを頭がおかしいと言っていたら、その人は要注意です。
すべての事例に応用可能だとは思いませんが、ヒントになるかもしれないと思い、書いておきます。
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