夏のキャンプ◇マジックアワーの裸ん坊
夏のキャンプの忘れられないワンシーンがあります。体操部出身の仲間が波打ち際で突然裸ん坊になって、マジックアワーの海にダイブしたのです。
日没前の美しい光の中で、私たちは彼の後ろ姿になんとも言えない解放感を覚えました。
裸ん坊の海へのダイブは自然と一体になって楽しんでいた夏のキャンプを象徴する思い出の一コマです。
私たちは会社の仲間とよく海にキャンプに出掛けていました。
夏のキャンプは、街の中心部から車で40分位の美しい海岸を基地に現地集合でスタートです。年頃の男女を中心に十数人が集まる楽しいキャンプでした。
サーフボードで遊ぶ人、ビーチバレーを楽しむ人、海を眺めて物思いにふける人など、それそれが休日の海の時間を過ごしていました。寄せては返す波の音が何故か日常の疲れを癒してくれたのです。
リーダーの「ご飯を作るよー、キャンプファイヤーに集合」この言葉を合図にクッキングタイムです。
みんなで火を囲むこの時間は、参加メンバーの心が一つになる時でした。
メニューは鶏肉・豚肉・牛肉そして野菜をたっぷり使ったバーベキューにインスタントのラーメンです。中にウインナー、ハム、もやし、ネギ、玉子などそれぞれが好きなものを何でも入れて食べる「ラーメン鍋」でした。
火のそばに集まって寄り添いながら食べていました。
「この肉キープ、僕はよく焼かないとダメなんだ」
「私、ピーマン嫌いだから、みなさんどうぞ、玉ねぎは私が食べまーす」
「ラーメンがカレー味になってるよ、誰がカレーのルー入れたの、ご飯が欲しくなっちゃうじゃない」
各々が勝手にしゃべっていましたがそれで通じたのです。
人生の時間を誰とどんな風に過ごすのかそれはとても重要で、幸せな時間は後で振り返ると、たまらなく愛おしいものです。
何故か心に残るのは、一緒に食事をしたり、遊んだり、泊まったり、共通の体験をした思い出ではないかと思います。私たちの夏のキャンプもそうでした。
キャンプファイヤーの火を眺めながら仲間同士が思い思いの話をします。
人生の話、恋愛の話、悩み、夢、趣味の話、それぞれの心の内を隠さず話していました。話は何時までも尽きませんでした。
キャンプをした後は、仲間たちを今まで以上に身近に感じることができました。自然の中で鎧を外し、触れ合うことで絆がよりいっそう深まったのです。
「マジックアワーの裸ん坊には驚いたよね」当時の仲間が集まると、必ずその話からキャンプの思い出話が始まります。
「ほんとはダメなんだよね、でもあの頃は勢いがあったんだ、だけどもう忘れてよ」裸ん坊の彼は言いますが私たちは絶対に忘れません。
キャンプファイヤーのあの炎の揺らぎと潮の香りとマジックアワーの出来事は・・・。
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