茶柱が立った日は
◇◇ショートショートストーリー
中学生のゆきちゃんはその日おばあちゃんの家で朝ごはんを食べていました。おばあちゃんはお茶好きで、少し高めの静岡の新茶を買っています。
ゆきちゃんはおばあちゃんに教わった通り、ゆっくり最後の一滴まで、湯呑みに注ぎます。そして、最後はおばあちゃんの真似をして、注いだ後の香りを思いっきり吸い込みます。
「ほんと、お茶はいいなー」と、おばあちゃんの口ぐせを真似ながら、湯呑みを持ち上げて、中を覗きます。
するとさわやかな薄緑色のお茶の中に、小さな茎が縦に浮かんでいました。
「おばあちゃん、わー、見てみて茶柱が立ってる」
「ほー、ゆきちゃん、こりゃ縁起がええねー」
「おばあちゃん、今日は、何かええとがあるねー」
「あんた、ラッキーじゃねー」
ゆきちゃんは、「日曜日の朝からものすごく縁起がいいなー」と、友達と約束していた場所に出かけました。
道中、何かいいものを拾うかも知れないと、キョロキョロしながら歩きます。
友達と合流してからは、素敵なものをプレゼントしてくれるのかもと、ドキドキしていました。
自動販売機で飲み物を買う時は、もう一本当たるかも知れないと、ワクワクの1日を過ごしていました。
でも、残念ながらとりたててラッキーなことはありませんでした。
ゆきちゃんは友達と分かれて、自宅に帰りました。「今日は、まだ終わってないからねー、あきらめないよ」と、まだラッキーな事が訪れるのを期待しています。
夕方、おばあちゃんから電話がかかってきました。
「ゆきちゃん、ありがとう、ええことがあったんよー」
「おばあちゃん、どしたん」
「おばあちゃん、スクラッチ買うたらねー、一万円当たったんよ、ラッキーじゃった」
「それはおばあちゃんの運じゃけん」
「ゆきちゃん、言うて無かったけどねー、茶柱が立ったことを他の人に言うたらねー、その人に運が移るんじゃたわい」
「えー、それは知らんかった、けど、おばあちゃんよかったねー」
茶柱の幸運をおばあちゃんに譲れて良かったなあと思うかわいい孫がいて、おばあちゃんは本当に幸せ者です。
ゆきちゃんのラッキーは、おばあちゃんに笑顔が届けられた事でした。
おばあちゃんは、数日後、ゆきちゃんに、ランチをご馳走しました。
【毎日がバトル:山田家の女たち】
《日本茶が大好きよ、茶柱が立ったらうれしいわい》
ほっと一息リビングでくつろいでいるばあばとの会話です。
「茶柱は立ったらうれしいよね、ええことがありそうで、一日が楽しく感じれるんよ、私は何よりお茶が美味しいんがええわい、ちょっと奮発しても美味しいお茶が飲みたいんよ」
「お母さん茶柱が立つこと多い・・・」
「私あんまりないよー、ショートショートのおばあさんみたいにスクラッチが当たったら最高じゃわい、うらやましい、人に言うたら運が移るんじゃったら、私もあんたには言わんよ・・・・」
何だかかわいいコメントが返ってきました。茶柱の小さな幸せ、やってくるといいですね。
【ばあばの俳句】
暗雲をかぶいて払う夏芝居
母は市川海老蔵の見得を切るシーンが迫力があって大好きだそうです。歌舞伎座も夏の再開に向けて懸命のようです。
歌舞伎の見得の中でも海老蔵さんの睨みの迫力は圧倒されるものがあります。邪気を払って厄を落とすご利益があるそうです、この暗雲を払って欲しいとの母の思いが込められた一句です。
▽「ばあばの俳句」「毎日がバトル:山田家の女たち」と20時前後には「フリートークでこんばんは」も音声配信しています。お聞きいただければとても嬉しいです。
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また明日お会いしましょう。💗