いつものバスに揺られて
私は自宅に帰るために、いつものバスに乗っていた。ただ違っているのは、私が心配事を抱えていることだ。体調が思わしくないのだ。何だかおかしいことは分かっているが、検査をしていないので、なおさら不安が募るのだ。
私は大丈夫なのだろうか、バスの乗降者も、駅への案内コメントも、私の耳には届かない。空の青さも目には入らない。空虚な気持ちになっている。人はこんなにも脆いものなのか。虚ろな気持ちで車窓から街並みをぼんやり眺めている。一駅がとてもとても長く感じる。
私はこれから何処へ連れ去られるのだろう、悪魔が連れ去るのか、天使が迎えにくるのか、まどろみの中、バスはいつの間にか、いつものバス停に、到着した。私は、バスに揺られながら、不思議な夢を見ていたようだ。
三日後には検査が待っている。
☆☆☆
検査の日がやってきた。私は早朝から準備をした。そして、何事があっても対応できる心づもりでいた。仏壇にしっかり手を合わせた。亡くなった父の声が聞こえた。
「大丈夫だよ」後ろから父が私の肩を抱いたような気がした。
家族や友人のさりげない励ましや思いやりが有難い。いざという時に人のやさしさや思いやりが分かるものだと思う。
病院までの道中、私はもう不安を吹き払っていた。「今日まで楽しい日々を過ごすことができた、何かやり残したことはあるのだろうか、母を一人には出来ない、それだけは何が何でもどうにか避けないと・・・」などと考えながら、いよいよ、検査が始まった。
流れに身を任せて進み、7時間、いよいよ検査の結果を聞くことになる。医師の隣に座って、私は神妙な顔をしていた。
本当にありがたいことに、問題ないようだ。数日間、悶々としていた気持ちが一気に晴れた。本当にありがたいと思った。
「大腸も、胃も問題ありませんでした」
「本当ですか、あー、良かった、ありがとうございます」
私は思わずほっと胸を撫で下ろした。
その日、私は心配してくれていた友人と共に空腹を満たすために、うどんを笑顔で食べていた。いつも以上にしっかりかみしめながら。
一番安心したのは母だろう。
私はいかに健康に過ごしていることが有難い事なのかを今まで以上に実感していた。
同じような繰り返しの日々であっても、それがいかにあり難い事なのか今また心に刻んでいる。
明日、何が起こったとしても後悔しない毎日の過ごし方をしなければと思った。
そして、母より早く人生を終わることが無いよう、娘の務めを果たさねばと思う出来事だった。
【毎日がバトル:山田家の女たち】
《私も気が気じゃなかったわい》
リビングで朝ごはんのバナナを食べた後のばあばとの会話です。
「私も一生懸命拝んどったんよー、一日中心配しよったんよ、とにかく良かったねー、とにかく健康が一番幸せよ」
「同じ朝なのに、悩みが吹っ切れたらこんなにも違うんじゃなーと思うねー」
「私も、気が気じゃなかったわい、ホントに良かった」
母に心配をかけたなと改めて思いました。
【ばあばの俳句】
経唱え祈る平穏梅雨晴間
母は心配事があると仏壇に手を合わせます。一心にお経を唱え、亡き父にそして先祖にお願いをしているようです。
私の体調が思わしくない時も、お経を唱えた後で涙をぬぐっていました。ありがたいなあと思いました。今は毎日、大げさでなく国の平穏を祈っています。届くとこを願いながら。
▽「ばあばの俳句」「毎日がバトル:山田家の女たち」と20時前後には「フリートークでこんばんは」も音声配信しています。お聞きいただければとても嬉しいです。
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また明日お会いしましょう。💗
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