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自由詩
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#毎日note

翡翠の瞳が開いたよ
ひまわり ひらひら 昼下がり
緋色のひぐらし一目見て
柊ひめごとひとりきり

夕涼み

葉脈を透かす西日
青はますます深く
人々は目を細める
遠くへ行ってしまった声を拾い集めるように

無線拡声器から
大きな大きな鐘が鳴る

虫たちは飛び続ける
呼吸を忘れることなく
光の差す方へ
ただ 光の差す方へ

通り雨

にわかにもたらされたそれらは
雨樋を伝って陸へ

トタン トタン

雲間から覗くパステル
あのおじいさんは
イーゼルを下げて出かけるかしら

ガラス窓の水晶
草花たちがいちばん美しいとき

夏を想う

濃密な睡眠をよそに
向こうの世界は水底に沈み
鍵盤をなでる薄桃色
あどけなさと狂気に見惚れた

刺すような日差しを思い起こす
シャボンのマーブル模様
汗ばんだ首筋をさらう
見上げた窓はがらんどう

ここにいないのは なぜ

言霊

美しくいたいなら 美しい言葉を話すこと
たましいの神話

優しくありたいなら
優しい言葉を話すひとといること
未来永劫

遥か先の生命へ
絶え間なく 叙情詩を詠み合えば
きっと健やかであれると