シェア
山田萌
2020年5月30日 20:44
翡翠の瞳が開いたよひまわり ひらひら 昼下がり緋色のひぐらし一目見て柊ひめごとひとりきり
2020年5月29日 22:33
葉脈を透かす西日青はますます深く人々は目を細める遠くへ行ってしまった声を拾い集めるように無線拡声器から大きな大きな鐘が鳴る虫たちは飛び続ける呼吸を忘れることなく光の差す方へただ 光の差す方へ
2020年5月28日 18:14
にわかにもたらされたそれらは雨樋を伝って陸へトタン トタン雲間から覗くパステルあのおじいさんはイーゼルを下げて出かけるかしらガラス窓の水晶草花たちがいちばん美しいとき
2020年5月27日 23:18
濃密な睡眠をよそに向こうの世界は水底に沈み鍵盤をなでる薄桃色あどけなさと狂気に見惚れた刺すような日差しを思い起こすシャボンのマーブル模様汗ばんだ首筋をさらう見上げた窓はがらんどうここにいないのは なぜ
2020年5月26日 23:11
美しくいたいなら 美しい言葉を話すことたましいの神話優しくありたいなら優しい言葉を話すひとといること未来永劫遥か先の生命へ絶え間なく 叙情詩を詠み合えばきっと健やかであれると
2020年5月25日 22:58
平らな街の静けさ好むと好まざるとに関わらず喧騒が戻る薄目を開けたお月さままどろみの湖に今ももの言わぬ生命回路は接続され ざわめきを捉える恋の歌は歌えないのだと言ったひとがいた夢の中さえ見上げた闇と 眠りに落ちる
2020年5月24日 23:07
ウィスパーボイスの女神半永久的に失われた旋律何度も書き直す弦楽器の声帯待つことは難しくありません思い込みであったとしても満ちる日のひとつ手前でただ 丁寧な振動を繰り返す
2020年5月23日 23:49
たとえば映画を観ているひととおなじ部屋で本を読む隣の部屋で猫と戯れるたとえば二度目に目覚めたとき悪夢のことは忘れているたとえば新しい服を着て出かける日常と非日常の境振り返らずにはいられなかった野ばらの呼び声凛と立つ杜若に変わる
2020年5月22日 23:35
わたしたちは知っている目に見えないものたちのことを忘れたふりをしているだけ朽ちた花びらは土に還る誰しもが みなさびしさを食糧として 枝葉を伸ばすとうにそこにあったものが再生産されるどうぞまた笑って笑ってみせて
2020年5月21日 23:12
脳内仮想空間の朝現実と交錯する朝夢と呼べなくもないかもしれない 朝ここ何日か 夕暮れを見ていないまだ覚えているだろうかヒントは与えられている浮遊するモールス信号悲観によって遮られるせめてあなたがひとりでなければいい抱きしめてくれる誰かが そばにいたらいい
2020年5月20日 23:02
降り注いだ水分が蒸発するまでの間角砂糖が角をなくしていくのを眺めていた雨の日のアルペジオ確かな安心を得るこの部屋には何もない散乱した光の他には僕らはとてもよく似ているそれでいて ひとつもおなじではない雨の日のアルペジオ確かな安心を得る
2020年5月19日 23:23
遠い国の言葉で綴られた恋文宛どころのない更新される宇宙微かなノイズあたらしい智を得る幾分視野が広がる心づもりができる悩み事は尽きない都合のいい解釈甘やかな記憶----------------------------おまけ先日の新曲 たんぽぽ歌詞をすこしだけ
2020年5月18日 23:49
片足立ちでエッセイを読む曇り空 窓の向こうレンズの内側の指紋すべてが見えてしまわぬように美しい指だった忘れられないこと忘れなくてもいいと思えたら隠れているから 覗きたい離れているから ただ募る遠回りをして 帰った
2020年5月18日 00:04
いつかの5月 夏の気配を連れていた分散するソーダ水溶けたキャンディ過剰な自意識を持て余すたんぽぽの綿 写真集眩しさに目を細め浮遊する足下シャボンの向こうに映るのはいつもおなじひと