11月の推奨香木は「伽羅らしい伽羅」=堂々とした典型的な緑油伽羅♩

9月末から10月に入って不覚にも風邪に罹ってしまい、20日間ほど倦怠感に苛まれて静養を強いられてしまいました。
新型コロナやインフルエンザで無かったのは不幸中の幸いでしたが、知らず知らずのうちに免疫力が低下していたのか気が緩んだのか…いずれにしろ40周年記念の1年があと2ヶ月ほどで過ぎようとしているところゆえ、しっかりせねばと反省しております。

寝込む前に開催できた9月の聞香会では歴史的名香をゆっくり味わって戴けて、稀少な名香を思い切って炷き出して良かったと嬉しく思いました。
内容につきましては(風邪から回復して)改めて紹介したいと思いますが、
お申し込みが間に合わなかった方々や日程の関係で都合が付かなかった方々が複数おられることもあり、大好評だった特別会を12月に再度開催することを決めましたので、聞き逃した方はどうぞお楽しみになさって下さいませ。

40年で初めての感謝企画は、12月の推奨香木(勅銘香を予定♩)と聞香会の特別会(13日に予定)とで幕を下ろさせて戴くことになりますが、その前の11月の推奨香木にも、とっておきの…と言うか、不思議なのですが、何故か今まで一度も公開していなかった「ある意味、まぼろしの伽羅」を採り上げます。

茶色ですが、緑油です

「伽羅と羅国との違いが聞き分けづらい」と仰る方が居られます。
その場合、一般的には理由が二通り考えられます。
一つは「羅国として売られている伽羅を聞いている」場合で、もう一つは「伽羅が出す苦味」と「羅国が出す苦味」との区別が曖昧な場合かと思われます。

『六國列香之辨』によると、伽羅は「苦を立るを上品とす」であり、羅国は「多くは苦を主(つかさど)る」とされています(『香道』早川甚三著)。
それだけ読めば「伽羅も羅国も特徴となる持ち味は同じだから、聞き分けられなくて当然!」と言うことになりますが、六国も五味もそんなに単純ではなくて…
(でも、その複雑さが聞香の奥深さをもたらしているのかも知れません)

六国と言いながら、伽羅と羅国とは同じ国=ベトナム=に産するのですが、同じ産地の香木でもそれらは別種と思われ、具わる「苦」も微妙に異なるのです。
繰り返しになりますが、伽羅の「苦」と羅国の「苦」とは違うのです。
ですから、その「苦」の違いを聞き分けることが、伽羅と羅国とを聞き分けることに繋がると言えるのです。

「とっておきの伽羅」は、伽羅らしい「苦」をはじめとする香味をしっかり具えており、感謝企画の一環として、自信を持ってお奨めできます。
以下の和歌から仮銘を「千歳のかざし(挿頭)」とさせて戴きました。

春くれば宿にまづ咲く梅の花きみが千歳のかざしとぞみる  (紀貫之)

羅国の「香久山」や「聞香会セット(苦)」などと聞き比べていただいて、木所の違いによる五味の違いを捉えていただければ幸いに存じます。




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