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【表現辞典】霊石典/名作家の文章〈9〉佐藤春夫『田園の憂欝』(全文無料)

霊石典

〈おしらせ・索引〉

 この記事は、私が編集している『霊石典』の派生記事です。名作家の作品の中から、『霊石典』収録の言葉が使われた印象的な文章を紹介します。言葉に興味を持つきっかけとして、あるいは、言葉をさらに深く理解する参考として、ぜひ本編の記事とあわせてお読みください。

佐藤春夫『田園の憂欝』(青空文庫)

お前はここのさびしい田舎にある豊富な生活のを知らないのだ。ここだつてどんなに賑やかだかよく気をつけて御覧。つまらないとお前の思つてゐる台所道具の一つ一つだつて、お前が聞くつもりなら、面白い話をいくらでもしてくれるのだ。生活を愛するといふことは、ほんとに楽しく生きるといふことは、そんな些細ささいな事を、日常生活を心から十分に楽しむといふ以外には無い筈ではないか……

 たいへん鋭い指摘ですが、たのしく日常を送る知恵を「生活の鍵」と表現しているところがすばらしいと思いました。身の回りのあらゆるものに意味があり、自分がそのことに気づけばなんだっておもしろくなってくる。そう思える心が鍵となり、その先にある真の豊かさにたどりつけるという意味でしょう。流行や物欲などに駆られがちな我々にとって、とても大切な考え方のように思います。

 この記事では、[かぎ(鍵)]が使われた文章を紹介しました。

 ぜひ、本編の記事もお読みください。


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ことばには、目には見えない力が宿っています。霊石典では、ひとつの記事でひとつの語句を取り上げ、意味や印象、類語や用例などを探るとともに、そ…

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