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おとぎばなしの手紙〈五通目〉こうもり

こうもり

 こうもりが生まれるのは月のない晩で、魔女が呪文をとなえながら錆びたはさみをじゃきじゃき鳴らし、まっくろい闇を四角にきりぬいたのが、一尾のこうもりとなります。切りぬかれたこうもりはすぐに飛びまわり、魔女がくすりの調合につかう虫や木の実をあつめにむかうのです。

 魔女は鍋をまぜる棒をつるしておくみたいに、こうもりをそのへんの枝とかに引っかけておきますから、こうもりはいつだって逆さまに保管されていて、いざとなれば魔女のかけごえひとつで一斉にとびたち、生まれふるさとである夜の闇をでたらめに羽ばたきます。

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512字
おとぎばなしの世界でみつけた、たのしいおはなしや、めずらしいおはなしを手紙にかいて、つむじかぜゆうびんで送ります。つむじかぜゆうびんはいいかげんなので、いつ届くかわかりません。渡り鳥の切手の代金をいただきます。

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