【表現辞典】霊石典[となえる(唱える)](全文無料・解説つき)
霊石典
今回は[となえる(唱える)]です。
霊石典で言葉を学ぶ基本的な手順をお伝えします。[唱える]という言葉の本質がどこにあり、文章表現でどのように活かすと良いのか、わかりやすく解説します。
となえる(唱える)
用例
○呪文を唱える
○異議を唱える
○唱歌
○折口信夫『鬼を追い払う夜』(青空文庫)
「福は内、鬼は外」と言うことを知って居ますか。此は節分の夜、豆を撒いて唱える語なのです。
意味
○声に出して言う。とくに、詩歌や呪文または自説や主張などを、気持ちを込めて声に出す。
関連語
○「声に出す」というだけの意味なら、[言う]と同じ。
○なにかの感情を込めて言葉を発するという意味なら、[叫ぶ][唸る][呻く]も似たような立場にある。
表現についての考察
[唱える]は、行為としては[言う]と同じです。しかし、「詩を言う」「異議を言う」とは使いませんし、それでは表現として軽く感じます。なぜなら、[唱える]が対象とするのが、主に詩歌や自説であり、それらは話し手が特別な意志を込めて口にする文言だからです。その文言じたいに深い意味があり、その文言をつうじて何かを叶えたいという意図を、話し手は持っているのです。ゆえに、深い意図なく発せられる「おはよう」や「おいしい」に[唱える]は使いません。
ですが逆に、その文言に深い想いが込められていて、相手の気持ちを変えようとする強い意志があるなら、聞きなれない表現ですが、「愛の言葉を唱えた」という使い方も可能ということです。愛の言葉には、相手の心を動かす力が込められています。その言葉の力を信じ、相手に自分の気持ちを伝えたいと願う話し手の意志を、[唱える]が受け持つのです。「愛の言葉を言った」「愛の言葉を囁いた」よりも、発言者の真心を示す力が[唱える]にはあります。
さいごに
[唱える]を霊石典の最初に取りあげたのは、「言葉には霊力が宿っている」ということを、[唱える]が示しているからです。「呪文」「歌」「愛の言葉」には、人の心を強く動かす、目に見えぬ力が宿っています。言葉に宿った霊力を信じ、相手の心を変えようと、願いを込めて口に出す行為が[唱える]なのです。まさに、「言葉に宿った力を掘り起こして文章表現に活用する」という、霊石典の原点を完璧に表しており、まず最初に学ぶのに相応しい語句だと思い、第一回に[唱える]を取りあげました。
派生記事
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