【プロット】陽気な産業スパイが、美術館に
ロボット技術の開発部門にいた安井は、行き詰ると美術館へ行く。
開発部門の若手研究員5人を連れて、西洋美術の常設コレクションが有名なS美術館にいた。
「ううむ……」
全員理系のため、作品を鑑賞して哲学する脳みそが欠落している。
だが安井が時間を割いて、連れ出したのだ。
文句を言う者はいなかった。
「科学の発展は、芸術的な発想力が必要だ」
熱っぽく語るが、いざ美術館に足を踏み入れると不可解な物体が転がっている。
研究員の一人、大村はライバル会社に情報を流す産業スパイだった。
数々の発明を手がけてきた安井の班に潜入したものの、有益な情報を
掴めず苛立っていた。
「安井係長、私には芸術的センスがなくて理解できませ~ん」
思い切って、陽気に疑問を投げかけてみた。
従っていても、埒が明かない。
「大村君。
ロボットはアートだよ。
技術だけでは解決できない部分が多いと思わないか」
「仰ることは何となく分かりますが、彫刻や絵画を見ても何も吸収できないので~す」
安井の顔が、みるみる険しくなった。
「吸収するんじゃない、考えて見いだすんだ」
スパイとしては、成果がないままでは済まされない。
尚も食い下がるしかなかった。
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