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「(はじめて)ストーンズ(を聴いたとき)にはショックを受けましたね。『何て下手なんだ!』と」(坂本龍一/2005年『サンケイスポーツ』に掲載されたインタビュー記事より)
1979年──ワンタイム的に結成された
伝説のフュージョンバンド
『KYLYN(キリン)』
…を久々に聴いてみたら…
「故・坂本龍一さん」
…のエキセントリックな
シンセサイザー演奏が妙に耳に残り…
あらためて
「惜しい人を無くしてしまったなぁ」
…と、つい感慨に耽(ふけ)ってしまいました。
…なので、このたびは
いささか唐突ではありますけど、
坂本龍一さんについて語ってみようかと思います。
映画『ラストエンペラー』で
アカデミー賞の作曲賞を受賞し、
テクノミュージックバンド
『イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)』
…のメンバーとしても名を馳せた
音楽家の坂本龍一さんが、
都内の病院で死去なされたのは
2023年の3月28日。享年71歳──まさに
「芸術は長く、人生は短し」
…という、ご本人の座右の銘を
地でいく生き様を見せてくださった、
「孤高の芸術家」でありました。
ところで、ぼくは大学時代から
ジャズドラマー・池長一美氏に師事して
ドラムを学び…
ドイツでアシッドジャズのCDを
数枚リリースしたこともある
ミュージシャンの端くれであります。そして、
「一(いち)ミュージシャン(の端くれ)」
…としての視点から「唯一無二の音楽家」
…であったと同時に、
優れた「コピーライター」でもあった
坂本龍一さんの名言を、
今日は「3つ」に厳選して、紹介してみましょう。
【1】「歌詞はまったく受け付けない(=頭にはメロディしか入ってこない)。だから、歌詞の意味は全然(自分には)必要ない」(※過去に『爆笑問題』の太田光さんと音楽について語り合ったときのコメント)
ゴメス補足:「ヴォーカルもあくまで楽器の一つ」という考えのぼくとしては、「世界のサカモト」のこの後押し的発言は、とても力強く感じました。じつは、楽器を演奏する人に多い傾向なのかもしれませんが、歌曲を聴いても、旋律やメロディや和音、リズム……などに神経が行き過ぎて、歌詞の部分が頭に残りにいのです。それが「良い悪い」は置いておいて…個人的に私は歌詞が前面に出てくる、たとえば「ラップ」とかはけっこう苦手だったりします。ちなみに、ぼくが日本で一番好きなシンガーソングライターは、歌詞に深い意味が銜まれていない、心地良さだけで完結している井上陽水さんです。
【2】(小学5年生で、はじめて自分で買ったザ・ローリング・ストーンズの『テル・ミー』を聴いたとき)「その頃にはもうバッハを弾いたりしていましたから、ストーンズにはショックを受けましたね。『何て下手なんだ!』と。下手さがカッコいい、という衝撃ですね」(※2005年の『サンケイスポーツ』に掲載されたインタビューより)
ゴメス補足:もう20年近く前のインタビューなのですが、この記事をたまたまリアルタイムで読んで、凄まじい天啓を受けたときのことを、ぼくは今でも鮮烈に憶えています。それまでのぼくは、極論「手足をとにかく細かく複雑に動かせるドラマーこそがいいドラマー」──すなわち「テクニックに裏付けされた演奏だけが良質な音楽を生み出す」みたいな頭でっかちの偏見がありました。「下手さがカッコいい」という新しい音楽との接し方を享受できたことによって、ぼくの音楽観はいっそうの広さと深みを得たのです。
【3】「僕は “ながら” では
絶対に音楽を聴きません」(※出典不明)
ゴメス補足:なんのインタビュー記事で読んだのかは忘れてしまいましたが、間違いなく坂本さんはこんなようなことをおっしゃっていました。ぼくも音楽が大好きだからこそ、「ながら」では絶対に聴きません。コラムを書きながら…なんてえのはもってのほかで(※「好きな音楽」を聴きながらだと、集中できずに一文字も書くことができない)、読書中でもオネエちゃんを口説いている最中でも、理想を言えば「無音」──もしくは「最低限に抑えたボリュームで映画音楽や王道のクラシックが申し訳程度に流れている」環境が望ましい。いざ音楽を聴くときは「さあ、今から音楽を聴くぞ!」と覚悟(?)を決めてから臨みたいのです。かろうじて「ながら」が許されるのは、「スポーツジムでランニングマシーンをやり “ながら” 」「料理をつくり “ながら” 」……くらいでしょうか?
あと、これは「音楽の話」じゃないんですけど、
「日本は美しい三等国になればいい」
…という言葉も、
ぼくが胸に刻み続けている名言中の名言であります。
それと最後に! かつて
『ダウンタウンのごっつええ感じ』(フジテレビ系)
…でマッちゃん&ハマちゃんと共演した
「アホアホマン」
…の坂本さん──相当に吹っ切れているので、
YouTubeなどで検索して
ぜひ一度ご覧になってみてください。