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204.運命に翻弄される

冬を前に新しい毛布を注文した。

高い毛布とはどんなものかと興味が湧き、多少値が張る毛布を注文したのだが、届いた毛布は相当に暖かく、肌触りが滑らかでツルンツルンのテロンテロンだった。

これは良い物を買ったとウキウキしていたのだが、いざ夜になり共に寝床に入ると、どうしても毛布から足がはみ出してしまうという事態に陥った。

その結果、一晩持たずに毛布としての役目を終え、ブランケットとして生を全うさせるべく寝室のベッドからリビングのソファへと大胆な配置換えを行ったのである(詳しくは前回参照)

その配置換えを行ってから数日後の事。

私は夜、家に帰り夕飯の準備を進めながら台所とリビングを右往左往していた。そして少し早足にソファの側を通った時、ソファから落ち、床で横たわっていたブランケットを踏ん付けてしまった。その瞬間、体が宙を舞った。

そのまま床に向かって背中から体を打ちつける。ドガンッと大きい音が家に響き渡った。

大ゴケである。

『(・・・いってえ・・)』

通常の繊維の塊なら踏ん張りが効いたかもしれない。だが、この子はツルンツルンのテロンテロンが売り。あの滑らかな肌触りが裏目に出た形である。

落ちていたブランケットに気付かなかった私のミスなのだろう。ちゃんとソファの上に置いていなかった私に非があるのだろう。

だが転んだ瞬間、私の脳裏には一つの言葉が思い浮かんでいた。

【ブランケットの復讐】

なにせこの子は我が家に毛布として到着したその当日、主人と共に布団に入ったと思ったら、突然布団からその身を剥がされ『君は今日からブランケットだ』という謎の任務を請け負ったのだ。青天の霹靂だっただろう。

そんなブランケットによる《無言の復讐》というものを感じざるを得ない。自ら床に舞い降り、虎視眈々と私を狙い撃ちした可能性すらある。

だが私はそんな可能性を覆す大きな事態に気付いた。

『(・・・肘・・痛えじゃねえか)』

転んだ時にぶつけたようだ。その事に気付くと今度はこの言葉が脳裏に浮かんだ。

【花山薫登場】

簡単に説明すると、数年前、ここの投稿を休止していた時に肘を骨折したのだが、その骨折をきっかけに投稿を再開した。そこからあれよあれよと投稿を継続させ、書籍まで発行した。あの骨折が無かったら起きなかった出来事の数々。私は《何者かが骨折させてでも私に文章を書かせ、書籍を発行させたのではないか》と勝手に運命めいた妄想を展開させたのだ。

それから時を経た今年の夏前、投稿200回の区切りを前に《もう書かなくていいっしょ》と200回を目処に再び投稿を休もうと画策していたのだが、いよいよ区切りになる数週間前に20年ぶりにベッドからの落ち、肘を痛めてしまった。それはまるで運命から『書かなくなったら・・わかるっしょ?』と喉元にナイフを突きつけてきているというか、感覚的には花山薫(グラップラー刃牙:握力激強)あたりに肘を掴まれ、《休止したら握ります》とでも言いたげな脅迫感。そして今日のこの日まで投稿を継続させたのである。(200回目の投稿参照)

その花山薫の影を感じた。

再び肘を掴まれ、脅しの様に軽い痛みを味わせる。やつの常套手段である。

身バレを防ぐため、ブランケットを駆使して遠回しにアプローチしてきたのかもしれないが、私にそんな小細工を仕掛けようとも無意味である。すぐ察する事が出来るのだ。だって肘痛いんだもの。

ただ、"投稿を継続しているのに"という思いもあったが、心当たりが無いわけではなかった。私は心のどこかで薄っすらと考えた事があったのだ。《とりあえず200回は突破したし、やめようと思えばいつでもやめれる》と。

ただこれは薄っすら思っただけで、感情を伴って発した心の声では無い。幾多もある脳内の言葉の一行だ。私はしっかりと《次は何書こうかな》という言葉だって脳内で発していた。まだ続ける気は全然あったのだ。なのに何故。心の中の言葉遊びすら許されないのだろうか。

『(あの・・花山さん、心の声を読むのは結構なのですが、都合の良い一文を切り取るのではなく、何というかこう、全体を読み取ってもらえません?)』

不意に出た心の声。もちろん返事などない。痛みは引く事なく、鼓動を打つ様にドクンドクンと痛みを発し『いつでもやってやんぞ!』と言わんばかりに時折シャープな痛みが訪れる。

全然話が通じない。というか、何故いつも肘なのだ。確かに顔を怪我しても目立つし、手を怪我したら生活出来ない。足を怪我したら歩けない。そう考えると狙い所としては割と良心的ではあるが。そこはありがとう。だがそれにしても他のやり方はなかったのだろうか。突然天然パーマになるだとか、陰毛がストレートになるだとか。

それだと伝わりづらいかもしれないが、割と察しは良い方だ。何か変化や違和感があれば気付ける方だ。頼むよ花山さん。このままだと私が"書く"というより"書かせられる"という事になるが良いのかい花山さん。そんな様々な思いが溢れる。

まるで運命に翻弄される様に過ごしているが、この花山運命論は私の大いなる勘違いなのだろうか。気にし過ぎなのだろうか。

いずれにしても大丈夫だ花山さん。来週も書くから。

とりあえず肘痛くするのやめて。

おわり

余談
昨日まで沖縄に遊びに行ってたんだけど、こんな戯言をね、飛行機の移動時間に書いてたわけですよ。
んで、向こうで飲んでたら福島の仲間達から突然が連絡あって、まあその内容が何というか、要は世話になってるバーのマスターが亡くなったと。
ここにもね、何度か"行きつけのバー"って名目で書かせてもらってたんだけど。十数年お世話になってたからね、まあ衝撃でね。今も実感が無いんだけど。
いつも会う度に"note毎週見てるよ"って言ってくれて、最近はあまり会ってなかったけど、3ヶ月前、最後に会った時も言われて。まあまたもう少し続ける理由が増えたというか、今はやっぱやめられないというか。もうちょい書きますよ。

最後に。今週も見てもらえると信じて。

長い間ありがとうございました。またどこかで。

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