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ゴーストオブツシマを体験デザインの観点から語る〜その壱〜

前回の記事でゴーストオブツシマというゲームが「ゲームにおける体験デザインの構造が綿密に組み立てられた高い完成度のゲーム」であるということを書きました。

前回の記事
https://note.com/yamadaction/n/n4a0dcc88aa79

今回はどのように完成度が高かったのか?

その構造を書いていきたいと思います。

が、その前にこのゲームの構造を語る上でとても大切な本を1冊紹介したいと思います。

コチラの本は元・任天堂の企画開発者の玉樹真一郎さんという方が書いた本で、心を動かす体験を作る方法「体験デザイン」と名付け、実際のゲームを例にわかりやすく解説した本です。

本書では主に以下の3つの要素について、書かれています。

・人はなぜ「ついやってしまう」のか
・人はなぜ「つい夢中になってしまう」のか
・人はなぜ「つい誰かに言いたくなってしまう」のか

この3つは言い換えれば、人を動かす「直感・驚き・物語」のしくみです。

ゴーストオブツシマは、本書で語られるこの3つの要素が非常に高次元でまとまっており、それゆえにオープンワールドゲームの中でも屈指の完成度を誇ると評されるに至っているのです。

今回はまず「ついやってしまう」という部分について見ていきたいと思います。

オープンワールドゲームの問題点とは?

オープンワールドのゲームというのは、広いフィールドが特徴です。

その広さはゲームによってまちまちで、広いものだと端から端まで歩くと実際の時間で3時間はかかってしまうようなものも。

ちなみにゴーストオブツシマの舞台である対馬の実際の面積は708.7 km²。

ゲーム内の対馬は実際の対馬と多少地形が異なるので、広さも異なるとは思います。(ゲーム内対馬の正確な面積を示すデータは見つからず)

そういった広いフィールドがあることで問題となるのが、次にどこへ行っていいのかわからないという問題です。

従来のオープンワールドゲームだと、画面内に目的地の位置と距離を示すマーカーが表示されるなどの措置が取られることが大半だったと思います。

また合わせてミニマップを表示し、カーナビのように進むべき道を示してくれるといった機能なんかが馴染み深いでしょうか。

しかしこれらの要素は便利ではあるものの、少し興ざめしてしまうのも事実です。

広くて美しいグラフィックが特徴のオープンワールドゲームであるのに、背景ではなく地図のマーカーとにらめっこしてゲームを進めていくという、なんとも味気ない感覚を感じていました。

これが原因かどうかはわかりませんが、今までプレイしたオープンワールドのゲームは結構な確率で途中でやめてしまっていました。

ゴーストオブツシマも今まであった数多くのオープンワールドゲームのように広いフィールドを持ち、その中に数多くのクエスト・サブクエスト(ゲーム内では「仁之道」「浮世草」と呼ばれる)や探索要素が散りばめられています。

ゴーストオブツシマではこれらの要素にどう案内させているのでしょうか?

「風」に行き先を案内させる

それはすなわち「風」です。

ゴーストオブツシマではゲームへの没入感を阻害しないために、マーカーを自然現象や動物に置き換えています。(厳密にはマーカーは出るのですが、それも最小限に留められています)

イベントが終わったときやメニューからプレイ画面に戻ってプレイヤーが操作できるようになった時に風は吹きます。

この風が向く方向に進むべき道や、探すべき何かが存在します。

この風はPS4のコントローラーのタッチパッドを上にスワイプすることでも吹かせることができます。

僕はこの機能を使い、風の向くまま気の向くまま、どこへなりと旅する風来坊的感覚になりきってプレイしていました。

さりげない視線誘導

さらにイベント中のさりげない視線誘導もポイントです。

3Dのゲームは視点を360度自由に動かせます。

自由に動かせるということは、探すものもそれだけ増えるわけで、これがどこへ行っていいいかわからないという原因の一つになっています。

ゴーストオブツシマはそこらへんが非常にさりげない視線誘導によってある程度解決させています。

カメラそのものを微妙に動かし、追跡するものの足跡などを注目させることで、向かうべき道をさり気なく示しています。

また向かった先にアイテムが置いてあったり、イベントの核となる事件の痕跡を残してあったりと、本当にさり気なくその道が正解であるということを示してくれています。

この一連の流れは、仮説→試行→歓喜という自発的な体験を実にシンプルに実現させてくれます。

仮説:こっちへ進むのかな?

試行:進んでみよう

歓喜:やっぱりこっちで合ってた!!

ゴーストオブツシマをプレイしていて特に強く感じたのは、この流れが非常に繊細に配置されていたことです。

これは冒頭で紹介した書籍「ついやってしまう」体験のつくりかたに書かれていた「直感のデザイン」という概念です。

直感のデザインを一通り体験し、プレイヤーは最終的に歓喜することになります。

そうなるとどうなるかというと、そんな気持ちにさせてくれたゲームを「面白い!!」と評価する以外になくなってしまいます。

「直感的にわかるものは、面白い」という真理です。

ゴーストオブツシマはこの広い対馬という舞台に、こうした直感的にわかる体験がいくつも散りばめられています。

この小さな体験の連続が、このゲームをついやってしまう大きな要因になっているのです。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

少しでもこのゲームの魅力が伝わったのであれば幸いです。

次回は「つい夢中になってしまう」仕組みについて書いていきたいと思います。

それではまた。


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