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マイナ議論で思い出す国境近くでの検問

米国テキサス州南端のメキシコ国境近くの沿岸に、橋を渡って行くことができる南北に細長いサウスパドレ島という小ぶりなリゾート地があります。

15年くらい前の話ですが、当時フルサイズ・ピックアップトラックと呼ばれる大型のアメ車を運転していた私は休暇を取り、妻とその頃小学生の息子と娘を連れてそこに遊びに行きました。

何日か滞在したあとの帰り道のことでした。ハイウェイの入り口に向かう田舎道を走っていたところ、検問があり停められて、2人組の警察官らしき人物が運転席に近づいてきました。

「Are you a U.S. citizen ? (合衆国市民か?)」

「No, I’m Japanese but a permanent resident here. (いや、日本人だが永住権保有者です)」

「ならば永住権証明書(グリーンカード)を見せろ」と言われたのですが、国内ドライブ旅行なので、証明書(Picture ID)としては日常生活通り運転免許証だけで十分であろうと携帯しておらず、それが問題となりました。

「これならある」と財布に入れてあった運転免許証と保険証、社会保障番号証などを慌てて出したのですが、「必要なのはあなたが合法的に米国に滞在している事を証明できるものだ。運転や医療、税金の話などしていない」と相手もしびれを切らしながら、後部座席に座っている息子と娘に視線を移しました。

「これから子どもたちとも話をするが、あなたと奥さんは一切会話に加わってはいけない」と釘を刺した後に声色に変えて、「Hi, guys.」と優しく話しかけ、先ずは子どもたちの名前を聞きます。

次の質問に驚きました。

運転席の私と助手席の妻を指差して「Who are they ?  Do you know their names ? (彼らは誰だ。名前を知っているか?)」との質問です。

子どもたちは緊張しながらも、2人は父親(Dad)と母親(Mom)であると答えて、私と妻の名前も正確に言うことができました。

その後、息子と娘が通学する州内の公立小学校や担任の先生の名前など、2人の子どもそれぞれに幾つかの質問をした後に、私に再度話し始めました。

「我々は国境警備隊だが、この辺りはメキシコからの不法移民、また親子に偽装して中南米の子供を人身売買の為に誘拐して入国させる犯罪が多いので検問している。子どもの受け答えで、あなたがウソをついていない事はわかった。今回はこのまま行って良いが、今後は特に国境近くに来る際には必ず永住権証明書を携帯するように」と言われて解放されました。

この一件に出くわすまで、グリーンカードは日本国パスポートと一緒に出張用ホルダー入れて保管していたのですが、その後は運転免許証、保険証などと共に財布に携帯していつも持ち歩くようになりました。

私はこのエピソードを、日本でのマイナンバー制度とマイナカードをめぐる昨今の議論を耳にするようになって思い出しました。

男性がボディバッグやセカンドバッグ(purse)類を身に着ける慣習がないアメリカでは、ズボンのポケットに収まる三つ折りのような小ぶりな財布(wallet)が好まれますが、いかんせん収納量に限界があります。

よって「1枚のカードで複数機能を兼ねることができれば、財布が厚くなり過ぎずに良いのに」と常々思っていましたので、今般日本でマイナカードが行政サービス申請から運転免許証、健康保険証まで兼ねる方向性なのは、当時私が夢見た世界の現実化なのです。

以前に書いた記事の通り、行政効率化や利便性の観点だけではなく、社会正義実現のためにマイナンバー制度の義務化を促進すべきという考え方を私は持っています。

マイナンバー制度に関する報道を読むと、将来的にはマイナ機能もスマホにビルトインされ「モバイルマイナ」化される日もそれほど遠い未来ではないようです。

また、日本のマイナカードがいずれは日本在住外国人の在留カードの役割を兼ねる方向であるとの話にも、上述の通り米国グリーンカード携帯でトラブった経験のある者として肯定的な興味を覚えます。

何か後ろめたいことをしていない、ないしはする予定がない限り、個人情報の一元化はデジタル化が進捗する世の中において必然的な方向性であり、反対する理由はありません。

それでもどうしても抗いたいと言うのであれば、試行錯誤的に起こる技術的問題を鬼の首でも取ったかのごとく叩いて留飲を下げるレベルではない、またはオカルト国家陰謀論でもない制度反対への客観的正当事由を示してもらいたいものです。

追記:

本文に出てきたサウスパドレ島の紹介です。

サウス・パドレ・アイランド | Visit The USA (gousa.jp)

South Padre Island EDC

こちらは本記事に登場した自身3台目のピックアップトラック

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