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【読書】失われた30年の始まりをハマコーの著作とともにと考える? 前篇



利用上の注意

この記事では、浜田幸一氏の著作を元に話を展開しています。したがって、山田(仮名)が特定の政治信条を批判したり、政党や政治家を非難したり、また支持することを意図したものではありません。

記事を読んでいて、気分を害されることも生じるかもしれません。もし、当方の表現力の無さからくるものでしたら、あらかじめ、お詫びします。

あと、本書の良さを引き出す手段として、ここからは政治家に敬称をつけませんので、悪しからず。


歴史的名著

今回は、あの問題作「新版 日本をダメにした九人の政治家」を取り上げます。

著者は、政界の暴れん坊として名を馳せ、政界引退後は政治活動家として暴言を吐きまくった、あの浜田幸一。通称、ハマコーです。

ハマコーといえば、私と同世代か上の方であれば、多分知らない人はいないであろう、名物政治家です。

その有志は、日テレNEWSでもアーカイブにされているほどの活躍です↓

田中角栄相手にも、物おじしないのはさすがです。

今回は、令和にも語り継いでおくべき政治家・浜田幸一の渾身の著作をから、失われた30年前を振り返るきっかけを作りたいと思います。

本が出た時期

この本が最初に登場したのは1993年12月です。

浜田幸一は、この年7月施行の第40回衆議院議員総選挙を前に政界を引退します。

引退時に「暴露本の出版を準備している」と発言し、発売前から注目されていました。

1993年12月に刊行されると、あっという間にミリオンセラーになり、当時は大反響でした。

ちなみに、感が鋭い方なら、お気付きかもしれませんが、第40回衆議院議員総選挙は、

①新党ブームで、自民党が単独過半数を取れず。8党の非自民・非共産連立で、細川護煕が総理に。自民党が下野し、55年体制が終わる。

②中選挙区制で行われた最後の衆議院議員選挙。

③ちなみにこの選挙で衆議院議員に当選した議員はこんなメンバー

自民 安倍晋三、岸田文雄、野田聖子など

日本新党 細川護煕、野田佳彦、前原誠司、枝野幸男、海江田万里、茂木敏充、小池百合子、河村たかしなど

新生党 上田清司、松沢成文など

共産党 志位和夫、穀田恵二など

公明党 太田昭宏

無所属 田中眞紀子、高市早苗、遠藤利明、玄葉光一郎など

という選挙であり、若返り、新党ブーム。

そんな中、自民党は金丸信の脱税問題に揺れている…そんな時代でした。

主要な登場人物

この本が刊行された当初、新聞広告では、

中曽根康弘
竹下登
三塚博
宮沢喜一
小沢一郎
梶山静六
田辺誠
宮本顕治

の顔写真が掲載されていましたが、最後の九人目は?となっていました。

聡明な方ならお分かりでしょう。

正体は浜田幸一本人です。一番最初に登場します。

ちなみに新版では、序章として、渡辺美智雄の死から始まり、自さ社政権の村山富市河野洋平武村正義の話のあとに、日本をダメにする十人目として池田大作が登場します。

まー、日本一ですから

自らを「日本一の悪タレ政治家」と称し、数々の逸話を残して1993年に政界しましたが、このとき自ら身を引いたのは浜田幸一だけ。

あとの8名は、1993年7月時点では議員や党の要職を辞めていません。

そのため、次の章以降、舌鋒は鋭くなります。

特に一章を全部割いている三塚博には、大変厳しい指摘をしています。

また、宮本顕治に対しても、当時衆議院予算委員長をしていた浜田幸一と正森成二との間の議事録を引用しながら、論を進めています。

ただ、その後の清和会、そして日本共産党が、失われた30年のうねりでどのような道を辿ってきたか?

浜田幸一の話をすべて詭弁だと断罪できず、その後の趨勢を予見していた面もあるとも言えるでしょう。

発言の是非

本書は、暴露本の体裁を取りながらも、浜田自身の政治信条を主張している箇所が散見されていますので、今回は2つ紹介します。

"足して二で割る"政策

浜田は、

重要政策、つまりインポータント・ソシアル・ポリシーについては、基本的には各党が合意しなければならない。合意できない場合は、その論拠に基づいて、徹底的に論争を展開する必要がある。

本書P84より

と主張しています。

この主張に異論をはさむ方は、皆無でしょう。

ただ、当時は国対政治が華やかだったころ。

国対政治とは、与野党の国会対策委員長が密室において国会審議の日程などを中心に駆け引きを行う国会のあり方です。

浜田は、当時の自民党は野党にカネを配って安易な妥協を図り、"足して二で割る"政策を行ってきたと批判しています。浜田は自民党の体たらくから、同党を惰眠を貪る「自眠党」と蔑称し、断罪しています。

本書でも、田辺誠が登場していることを考えると、1970年代から続く与党と野党で持ちつ持たれつの関係にあったことが十分伝わる話だと感じました。

ちなみに国対政治については、Tetete様が詳しく記事にしてくださっているので、そちらをご覧ください↓

教育の在り方

浜田は、1993年の時点で、教育についても相当ダメ出しをしています。

私は、日本に唯一存在する資源は、教育だと思っている。ところが、現在の日本の教育の実態は、惨憺たるありさまだ。学校でも家庭でも、「自分の欲求を満足させることが大切だ」という教育しかしていないのではないか。

確かに個人はなくなってはいけない。しかし、その個人の権利というのは、地球上における国家の生存権がきちんとしていなければ達成されないであろう。

本書P88より

まず、「『自分の欲求を満足させることが大切だ』という教育しかしていない」に関しては、30年たっても大きく変容していないと私は感じます。

ただ、元をただせば、1984年の臨時教育審議会から始まる詰め込み教育からゆとり教育への段階的移行が進みました。「一人ひとりの子に合わせた教育ができていない」と同義である「個性重視の原則」の部分が、過度に強調されてきたのも一因かなと、私は考えます。

あと、「個人の権利 < 国家の生存権」というのは、2つの観点があろうかと、私は考えます。

1つは、そもそも国家が正しく生存していないと、個人の権利は無視される点です。現在、紛争の真っただ中にいる地域の住民を考えれば、想像に難くないと思われます。

2つめは、本書が刊行された当時の時代背景です。


もちろん、浜田幸一が自民党所属であったこともありますが、本書で、

国際貢献なくして日本の生存はあり得ないのに、国際的な責務を果たさず、「石油だけちょうだい」などと寝言を言うような恥ずかしい国になってしまっている。

本書P89より

と述べています。

この話は、冷戦が終結した1990年の湾岸戦争の際に多国籍軍に対して資金援助だけを行ったこと、その後のアメリカやイギリスの批判を受けての1992年通常国会でのPKO法案の審議状況という視点で顧みると、意図は伝わるかと思います。

まだ語りつくせぬ

浜田幸一という政治家を肯定するにも、否定するにも、私の中では、まだまだ語り足りない部分があるようです。後日、後篇をお届けできればと思います。

(続く)

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