フード・デリバリーは定着するか?の考え方。上位概念を理解して隙間から狙うスタートアップ的戦略
緊急事態宣言で、飲食店が20時閉店となって、1ヶ月以上経ちました。牛丼などのファストフード店もイートイン認めないのは過剰対応だなと思いつつ、自宅やオフィスでデリバリーを使う機会は増えますね。
フードデリバリーは割高?
一人の食事だと割高に感じることが多いのですが、そんな時にこんな分析記事を見つけました。ミクロ経済っぽい切り口で、比較しています。
・食材:30%
・人件費(ホール):15%
・人件費(厨房):15%
・家賃(ホール):5%
・家賃(厨房):5%
・マーケティング費用+決済手数料:7%強
なので、27%強は妥当と計算。
現状のフードデリバリーで飲食店が負担する標準的な「手数料」は売上額の35%程度と推測されていて。8%分割高という試算になっています。
まずは、こういう現状の数字を把握、比較することは重要なので、参考になる記事だと思います。
その上で、起業家的に必要なのは、サービスの価値を俯瞰して再定義してみることです。「デジタル革命」が起きて以来、すべての産業は「再定義」が迫られました。テクノロジーの発展に合わせて、その都度、俯瞰した視点で自らの顧客にとって、社会にとっての価値を再定義することが頻繁に求められるようになりました。スマートフォンの普及で前提条件が変わり、新たなビジネスがたくさん生まれました。ブロックチェーンや人工知能の一般的な普及(コモディティ化)は、これからも前提を変えていくでしょう。
シェアエコノミーは、所有する必要性が低下し、使うときだけ使うという変化を伴う新しいビジネス潮流です。UBER EATSが先陣を切ったことからもわかるように、フードデリバリーも、シェアエコノミーである、シェアライドの派生として生まれた側面も持っています。
食分野のシェアエコノミーとは?
フードデリバリーを、シェアエコノミーの一環、サービスとしての利便性の向上を捉えるとどうなるでしょうか?
シャアエコノミーが起こす大きなパワーは、価格破壊です。タクシー会社が既得権として行っていた「車で人を運ぶ」というビジネスを、副業ドライバーが自家用車に行っても利便性が下がらないようにして(むしろ体験としては楽にして)価格を下げたのがUBERでした。
そういう意味では、割高感を覚える現状のフードデリバリーは、緊急事態宣言による、市場合理性とは違う意思による早期閉店や、Stay Homeの増加による一時的な現象を捉えることもできるでしょう。元々、「出前」自体は古くからあったビジネスモデルで、配送を受け持つことで、出前できるお店の選択肢を増やしたのが今の状態です。
理由は何であれ、自宅等でのフードデリバリーの体験をしたユーザーが一気に増えたことは大きな進展です。コロナ自粛が終わっても、一定の市場としてはおそらく残ることでしょう。
新しいサービスは「最初に体験させる」ことは大きなハードルです。人口の一割以下の新しいもの好き(イノベーター)から広めて、アーリーアダプターを経て、レイトマジョリティに広めていくというマーケティングの基本的な考え方がありますが、コロナ禍の状況は、普段なら新しいサービスに飛びつかないユーザー層が体験していることは間違いないでしょう。
「中食」の発展形としてのゴーストキッチン
以前、デパートの地下の食表品売り場が人気だっことを、外食と内食のあいだの「中食」ブームと言い方をしていましたが、フードデリバリーは、レストランビジネスの延長というよりも、「中食」ビジネスの発展形で捉えたほうが良い気がしています。
デリバリーを専門としたキッチン設備のみで展開する「ゴーストキッチン」という業態が注目を集めています。フードデリバリーの存在を前提としたビジネスで、「プロが作った食事を自宅等で食べる」という概念で捉えると、店舗を構えて、店内での食事体験を提供しているレストランよりも、届けた先で美味しいということに注力するほうが、よりユーザーの満足度を高められる可能性が高いのは道理です。
以前、『フードテック革命』という書籍を紹介しましたが、日本であ「食」は有力な分野です。日本の洗練されたユーザーを相手に鍛えられますし、伝統と多様性を持った日本の食が、訪日外国人観光客増加の一翼を担ってきたように、国際競争力も持っています。
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