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『ビルボードジャパンの挑戦 ヒットチャート解体新書 』は歴史に残る名著です(#全文公開)

[追記]出版記念イベント3/10ハイブリッド開催!無料!!

 素晴らしい二人のゲストを招いて立体的にヒットチャートの価値を話します!著作では、紙数の都合で掲載できなかった内容を礒崎さんが語ります。それぞれREMIXESとOUTTAKEと呼んでいます。そして、4人のトーク=SESSIONもありますので、是非、ご参加ください。御茶ノ水でのリアル+YouTubeライブの配信ともに無料です。下記のpeatixからお申し込みください!!

  この本を企画して、監修者となりましたが、手を動かしたのは巻末の解説文を書いただけです。「音楽データマーケティング講座」から溢れ出ていた礒崎さんのパッションは強いのは知っていましが、初めての著書ですし、交通整理はお手伝いすることがあるかなと密かに思っていたのですが、リットミュージックの名編集者山口一光さんとのコンビネーションもよく、快調に執筆が進んでいきました。僕は3人のメッセンジャースレッドで、「素晴らしい!」「これは面白い!」とか合いの手を入れているだけでした(笑)
 音楽がデジタルサービス上で聴かれることが主流になり、ユーザー行動データが入手できるようになりました。日本の音楽業界ではデジタル化が遅れていたので、データ活用も遅れていましたが、その間、着実に歩みを進めてくれていたビルボードジャパン礒崎さんの蓄積が花を咲かせて、著作になりました。二つの素晴らしい対談(柴那典、SKI-HI)も含めて、日本の音楽史に残る本になることは、入稿前の原稿を読みながら確信しています。
 3月10日にリアル+オンラインのハイブリッドで出版記念イベントを予定しています。間も無く情報解禁です。是非、いらしてください。
 監修者の言葉を全文公開します。


監修者の言葉:「ヒット曲とはなにか?」を 考え続けた人間の戦いの記録

2006年から15年以上、ヒットチャートに取り組んできた礒﨑さんの熱い想 いと、深い洞察に圧倒されます。1人でも多くの方にこの本を読んでもらいたいです。「自分は音楽好き」と思っている方、紹介されているアーティストのファンの方は、必読です。楽曲の楽しみ方が広がることは間違いありません。必ずしもChapter1から順に読む必要はありません。好きなところから拾い読みしてください。気づけば、全体を読み通すことになるはずです。

「推し活」を超えて、音楽ファンに 

最近は好きなアーティストが人気者になり、活動が広がっていくために、 ファンが一体となって応援する様子を「推し活」と表現します。K-POPが広めた「ファンダム」という言葉も、起源は日本的なコアファンの活動をデジタル上に拡張したものでした。 本書の元になった「音楽データマーケティング講座」の受講生も、アーティ ストを応援している中でチャートの仕組みに興味を持った人がいました。好きなアーティストのチャートを上げようとする中で、ヒット曲の定義や生まれ る仕組みに興味を持ち、他の楽曲やアーティストに関心が広がることで、 音楽ファンが増えています。 音楽業界にとっての、ヒットチャートの最大の価値は、ユーザーの興味を喚起することです。例えば海外の音楽シーンを知りたいと思ったら最初に その国の人気曲をチェックするでしょ? ヒットチャートが、音楽ファンを増やし、活性化する役割を果たすことは、ビルボードが日米で提供してきた チャートの歴史や現状を知ると、ご理解いただけるかと思います。 著者は、おそらく日本で一番「ヒット曲とはなにか?」について考えてきた人です 。 定義を考えること は 、「どうすれば ヒット曲 が生まれるのか?」につながります。音楽業界 で著者がキーパーソンになっている理由です 。

データ駆動社会の音楽シーンの指標

企画監修をした者として、本書想定読者のもう1つはtoC向けのビジネス、特にデジタルマーケティングに関係がある方々です。情報伝達の中心が、マスメディアからSNSに移行し、デジタルサービス上での口コミが最重要になっている時代に、集約された形で可視化されるヒットチャートの形成の経緯や、そもそも「ヒット」をどのように定義づけるのか、そのためのロジックはどのように組み立てるのかを知ることは、音楽以外の業種の方にも有益です。楽しんで読みながら、データが最重要になっているビジネスで役立ててください。
「音楽データマーケティング講座」は、「音楽マーケティングブートキャンプ」という音楽ビジネスに強いマーケターを育成しようという講座から派生して生まれました。音楽マーケティングに興味を持たれた方は、本書監修者が2023年5月に上梓した『音楽デジタルマーケティングの教科書』に目を通してみてください。講座を母体に音楽に特化して、マーケティング会社、(株)LABも設立され、日本の音楽界の活性化に寄与しています。

他では読めない2つの対談

本書の見逃せないポイントに2つの対談があります 
柴那典さんは『ヒットの崩壊』などのベストセラーを持つ、日本No.1の音楽ジャーナリストです。音楽トレンドだけではなく、社会的な背景、テクノロジーやメディアの変遷などとの有機的な関係の中で音楽を捉えています。個人的にも親しくさせてもらっていますが、ビルボードチャートの進化と重要性をいち早く理解した1人です。テクノロジーとメディアの文化的なトレンドを複合的にとらえた示唆に富む対談になっています。J-POPとK-POPを1つの系譜で見るグローバル視点での音楽シーンの捉え方も、さすが的確と我が意を得た思いでした。
 新世代のプロデューサーSKY-HIとの対談内容は画期的と言って良いでしょう。AAAのメンバーからプロデューサー、それも自らマネージメントの責任者として新人アーティストを売り出す姿は、これからのプロデューサーとして光り輝いています。クリエイティブプロデュースとビジネスの両面で責任を持つことを、アーティストとして顔を出しながらやるのは、日本ではこれまでになかった言っていい、新しい在り方です。さまざまなリスクを背負いながら取り組む姿勢は、周りの懸念をものともせずにやり切った大谷翔平ばりの「二刀流」に僕には見え、心底、尊敬します。本対談でも、いろんな側面がある音楽アーティストビジネスを深く洞察した上で、因習と戦いながら、成功しようとしている様子を窺い知ることができます。礒﨑さんとは、次の音楽シーンを切り拓く同志のように感じました。立場も年齢も超えた音楽への熱い想いが2人には共通しています。

10年かけて取り組んだ日本音楽界のDX

音楽界DXの同志と言えば、10年前のトークイベントを思い出します。
「The State of Music Discovery〜音楽市場とテクノロジーの未来を考える〜」と題され、既にストリーミングサービスが主流になっていた欧米
では、ユーザーに新たなアーティストや楽曲との出逢い、発見を提供することが課題とされ、レコメンドエンジンの研究開発が盛んに行なわれていました。それを意識したタイトルです。登壇者は礒﨑さんに加えて、鈴木貴歩、野本晶、TAKU TAKAHASHI☆、ファシリテーターの僕を含めて5人です。当時は鈴木さんはユニバーサルミュージックジャパンのデジタル責任者、野本さんはSpotify Japanの最初の日本人スタッフ、 m-froのリーダーとして有名なTAKUさんは、blockfmというダンスミュージックに特化したネットラジオ局を起業していました。当時の僕らは、音楽シーンがデジタル中心になるのは自明わかっていて、海外には遅れているけれど、日本でも3〜4年で実現するだろうと思っていたのです。しかし実際は、大手レコード会社の消極的な姿勢が原因でSpotifyのサービス開始の遅れるなど、欧米に比べて音楽市場のデジタル化が6〜7年遅れました。 
鈴木さんはコンサルタント兼起業家として大活躍しながら、JASRACの委嘱理事や日本音楽制作者連盟の顧問も務めています。野本さんは世界のインディーズレーベルの配信会社との交渉を代行する世界的な組織Merlinの日本代表です。僕もスタートアップ育成を主とする方向に舵をきり、現在代表を務めるスタートアップスタジオ設立につながっていきました。音楽界DXのために戦った同志がいたことを、10年前のイベントレポート記事が示していますその象徴的な存在が、ビルボードチャートを築き上げた礒﨑さんなのです。

興味のある方はこちらのレポート記事をご覧ください。終了後の5 人の記念写真は今見るとDX志士決起集会のようです

忖度なしのヒットチャート

音楽業界から危険視されたり、無視されるところから始まり、日本を代表するヒット曲指標になるまでの道のりは容易ではなかったはずです。本書では穏便に書かれていますが、業界関係者のコンサバな態度には、忸怩たる思いがあったことでしょう。本書は、日本音楽業界の守旧派との戦いを終えた節目を示す書籍とも言えるとも思います。
昭和を象徴するオリコンチャートは、大手芸能事務所の機嫌を損ねることはできませんでした。反面教師としたビルボードチャートは、忖度は一切しない、がポリシーです。ポリシーは貫きながらもレコード会社スタッフやアーティストに気遣いをし、悩む姿も本書では記されています。そして、その真摯な姿勢が、信頼関係を築き上げたのです。
僕自身10年以上にわたって、音楽ビジネスの主戦場は「デジタルとグローバル」と主張してきました。日本の音楽界もやっとその戦場に参加してきたようです。ここでも牽引するのはビルボードチャートです。2023年9月に公開された日本市場を除いたデータによる日本楽曲のチャートは、音楽ファンとアーティストの意識を海外に向けてくれるでしょう。国ごとの傾向が分かることは海外戦略構築に非常に有益です。

日本の音楽界の歴史に残ることになるだろう本書を、ぜひ、お読みになってください。この本を通じて音楽ファンが増えますように 。




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山口哲一:エンターテック✕起業
モチベーションあがります(^_-)