【一般TCG理論】脳死プレイのすゝめ
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序
TCG界隈では(スラングとして)よく使われる表現である”脳死”。
当然、学術的な意味の"脳死"とは全く関係はなく、通常は「脳死で」と副詞的用法で使われるスラングであり、「深く考えずに」「軽率に」「無計画に」といった意味になることが殆どである。
ニコニコ大百科によれば"脳死プレイ"とは「思考を放棄してゲームをプレイする事」と定義されている。
上記使用例からもお察しの通り、しばしばこの言葉はネガティブな文脈で用いられる。
ただ、本当に脳死プレイすることは悪なのであろうか。
もちろん脳死プレイによって悪い結果が引き起こされることは多々あるし、筆者もそのような経験は数えきれないほどしている。
しかしながら、それは脳死プレイで正解を導けないことが本質的な悪なのではなかろうか。
本記事では敢えてこの脳死プレイの有用性に切り込んでいく。
破
"脳死プレイ"という言葉がネガティブな表現に用いられる一方で、「思考を省く」という点で共通していそうな"直感"や"直観"という言葉はポジティブな表現としてよく使われる。
ちょうど筆者も寄稿した一般TCG理論本においても、曳山まつり氏が「直観を信じる」をテーマに記事を書かれていた。
では、果たして脳死プレイと直感プレイの差は何なのであろうか。
上記記事でも引用されているが、直感を論じる上では稀代の棋士たる羽生善治氏・著の直感力には触れざるを得ないであろう。
無数の選択肢から最適解を瞬時に導く際に如何に直感が大切かを、氏は論じており、TCGと比較すると将棋は確定完全情報ゲームという違いこそあれど、大変参考になる書である。
同著によれば、直感とは先天的なものではなく磨かれるものであり、それには蓄積された知識や多様な価値観が必要なのだという。
筆者の話に戻るが、筆者の遊んでいるMTGアリーナにはクイックドラフトというフォーマットが存在する。
このクイックドラフトはリミテッド・フォーマットの一つであるのだが、通常対人で行われるドラフト(ピック)を人ではなくbot相手に行うフォーマットである。
botが何をピックするかの傾向が推測しやすい性質上、プレイヤー側のピックも単調になりやすく、好き嫌いの分かれやすいフォーマットである。
しかしながら、筆者はこのクイックドラフトを愛している。
筆者のクイックドラフトのプレイスタイルはこうだ。
まずは環境毎にある程度botの傾向を認識する。
その後自分なりにカードのピック優先順位を設定し、それに従って半ばアーキタイプ決め打ちでピックを行う。
ピックの際はできる限り早くピックするよう心掛ける。
ピック後のゲームプレイ時もできるだけ長考を避ける。
これにより、通常対人ドラフトでは15分程度~それ以上かかるピックを、クイックドラフトでは5分以下で行え、非常にタイムパフォーマンス良くランク戦を駆け上がることができる。
筆者の毎月のノルマであるミシック#250以内に素早く到達するためにも重要な脳死プレイテクニックである。
このテクニックはクイックドラフトに特化しすぎていて対人ドラフトに悪影響が出る、と感じる方もいると思うが、筆者はそうは思わない。
なぜなら、機械的に(≒直感で)クイックドラフトにおける最善手を指せるようになれば、対人ドラフトにおいて残りのピック時間を「対人ドラフトとクイックドラフトでの違いの分析」に充てられるからである。
対人ドラフトでは一つ一つのピックに制限時間が設けられており、その時間内に最適解に近づくためには、脳死プレイで瞬時に導かれる解は重要な叩き台になるはずだ。
(この叩き台/叩かれ台という言葉もネガティブなイメージを包含しているのも面白い)
事実、筆者は対人ドラフトにおいても、まずは直感(=クイックドラフト)で候補を見極めてから対人ドラフトであることを考慮して解を導くようにしている。
今更ではあるが、本記事ではどのようにすれば直感を磨けるか、確かな直感を導くことができるか、の具体的な手法については触れない。
筆者はMTGのリミテッドにおける直感を磨くために17Lands.comのデータを大いに参照しているが、瞬時に解を導けるようになるのであればその元となる知識・インプットは何でもよい。
(あくまで様々な知識の中でも17Landsデータが最上位であり、それを参照した方が直感の精度が高くなるという持論に基づいているだけである)
直感を磨くための蓄積された知識や多様な価値観は人それぞれであり、それらに直感が基づくからこそ個性も生み出されるものと筆者は信じている。
ここまで筆者なりに直感を活用する実体験の例を述べたが、ただ一つ言いたいのは直感は論理的に導かれるものということである。
ここまでの話から筆者なりに「直感」を解釈すると、直感とは「過去の蓄積された経験等に基づき、ある前提条件下においては思考プロセスを飛ばしても得ることができる論理的結論」である。
時間というリソースを節約するために思考プロセスを飛ばしているだけで、直感で得られた結論は時間さえかければ自ら思考して得られる結論と同じになるべきだし、論理的に導くことができるもののはずである。
もりゆき氏が過去近いテーマで記事を執筆されており、ここに紹介する。
氏も理論派と直感派は相反概念ではないと述べている。
論理の限界を認識し、論理を直感の補強手段として扱う点は、まさに先述した筆者の対人ドラフトにおける解の導出過程と合致する。
下記記事では「論理的に説明できる」ことが必ずしも言語化を意味していないことも述べられており、大変興味深い。
翻って、脳死プレイと直感プレイの差はこの論理的説明をできるか否かにあるのではないか。
脳死プレイと呼ばれるものには、後日時間をかけても自ら論理的に説明できないプレイ(≠直感プレイ)が含まれているようにも思える。
TCGにおける「直感力を鍛える」とは、「直感自体を磨く」ことに加えて、「脳死プレイにおける直感プレイの割合を高める」ことも指すと考えれば合点が行く。
そしてこの直感力を鍛えるためにも、脳死プレイでのアウトプットの場数は必要と考える。
アウトプットの場は小さな成功体験の積み重ねの場でもあり、その経験が後に直感を磨くことにも繋がる。
脳死プレイの数を重ね、失敗から直感プレイの難しさを知り、その割合/精度を高めていくことこそが、脳死プレイの有用性と言えよう。
繰り返すが、直感を磨くには蓄積された知識や多様な価値観といったインプットが不可欠である。
インプットのない状態で脳死プレイを続けても、知識・経験に基づいて生まれる直感プレイの成功体験は中々生まれず、好循環も起きない。
あくまでインプットありきのアウトプットの場としての脳死プレイである点は誤解なきようされたい。
急
最後に、先ほど記事も引用したもりゆき氏考案・開発のトレーディングじゃんけんというゲームを紹介する。
シンプルなルールの上にアプリのインストールも不要で遊ぶことができるため、まだの方は是非試されたい。
本ゲームは一定の運要素を含みながら実力で勝率を高めることができる点で、確定完全情報ゲームでないTCGとよく似ている。
ルールがシンプルなため検討すべき選択肢は多くのTCGと比べて少なく、脳死プレイスキルを高めるにはもってこいである。
究極的には運ゲーだが、各人に与えられた時間というリソースは有限である。
まずはルールに則った最適解を各場面で選べるようになったら、あとは如何に瞬時にその解を導けるようになるか(=有限の時間内にそれだけ回せるか)がこのゲームの肝だと筆者は理解した。
このやり方で筆者はスコアボードのTOP10に入れた。
TCGのプレイ速度に課題を感じる方、脳死プレイに興味はあるがどうやればいいか分からない方、ひいてはTCGを強くなりたいと感じている方は、このトレーディングじゃんけんで一度直感力を鍛えてみてはいかがであろうか。
読者の脳死プレイによって直感が研ぎ澄まされ、少なからずTCGの上達に繋がることを願って、本稿を締めたい。
もし少しでも共感いただけたのであれば、筆者の今後の執筆モチベーション向上・維持のためにも「スキ」していただければ幸いである。
チラ裏
以下は何の肥やしにもならないが私がこの記事を書こうと思ったきっかけである。
公開するような内容ではないため、興味のある奇特な方向けに有料部分で述べる。
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