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2023キネマ旬報ベストテン得票分析
これは自分のブログに毎年書いている記事なんですが、今回(2023年度分)は割合分かりやすい結果が出たので、note にも転載することにしました。
以下がその記事の全文です:
【2月9日 記】毎年恒例のキネマ旬報ベストテンの得票分析をしてみます。
キネマ旬報ベストテンは、審査員がそれぞれ合計55点を持って、1位には 10点、2位には 9点、…、10位には1点と入れて行き、その合計得点で順位が決められています。今回 2023年第97回の審査員は、前回と同じく「本誌編集部」を含めて 59名でした。
で、僕が何をやっているかと言うと、それぞれの映画の得点を、「合計点=点を入れた審査員の人数×平均得点」という形に分解してみるのです。そうすることで映画がどんな風に評価されたかの傾向が見えてくるからです。
例えば同じ 150点獲得の映画でも、一方は
(a)合計150点=30人×平均5.00点
他方は
(b)合計150点=20人×平均7.50点
だったとすると、(a) は多くの人に広く受けた映画、(b) は特定の人の心に深く刺さった映画と言えるのではないか、ということです。
これは統計学的には正しい手法ではありませんが、投票結果の上位 10本に絞ってやっている限りは、そんなに外れていないのではないかと思っています。
さて、2023年の結果は:
せかいのおきく
192点=29人×6.62点PERFECT DAYS
188点=23人×8.17点ほかげ
171点=25人×6.84点福田村事件
144点=26人×5.54点月
136点=21人×6.48点花腐し
109点=15人×7.27点怪物
98点=21人×4.66点ゴジラ -1.0
91点=14人×6.50点君たちはどう生きるか
78点=13人×6.00点春画先生
75点=14人×5.34点
去年も票が割れてバラツキが大きいと書きましたが、今回も同様の結果になっています。
まずは制作本数が増えているということなのでしょうね。前回同様1点以上入った映画は 140本近くになっていますから。
100点以上を取った作品は5本と、前回を上回りましたが、前回は『ケイコ 目を澄ませて』がぶっちぎりで 239点も取ったのに対して、今年は飛び抜けた作品がありません。
しかし、去年は票がバラけすぎて特徴が見えなくなったと書いたのに対して、今回はそれなりに特徴が出て、面白い結果になりました。
投票した審査員数の多かった順に並べると、1) せかいのおきく、4) 福田村事件、3) ほかげ、2) PERFECT DAYS となりますが、平均点の高い順に並べると、2) PERFECT DAYS、6) 花腐し、3) ほかげ、1) せかいのおきく となります。
多くの観客(この場合は審査員に限られますが)にアピールできたのが『せかいのおきく』や『福田村事件』、特定の観客に熱烈に支持されたのが『PERFECT DAYS』や『花腐し』、両者のバランスが取れていたのが『ほかげ』だと言えないでしょうか?
もう少し下位の作品を見ても面白い結果が出ています。
7)怪物は 2) PERFECT DAYS に次ぐ 21人から票を集めながら、その平均点はこの 10作品中最低の 4.66 です。つまりは「大勢にそこそこ受けた」作品ということになります。
きっちり検証はしていないのですが、是枝裕和作品でこういう傾向が出るのは珍しいんじゃないでしょうか? あるいはそれは、僕が彼がまだ無名の頃から彼の映画を見てきたからそう思うのかもしれません。
是枝監督も、知名度が上がって「大御所」になるにつれて、大衆受けする傾向にシフトしているという可能性はあります(必ずしも「大衆受け」ではなくて「審査員受け」かもしれませんが)。
一方 8)ゴジラ -1.0 は、投票した審査員は 14人と、下から2番目に少ないのですが、平均点は 6.50 と上から数えて4番目です。こちらは「それほど広がりはなかったけれど熱狂的なファンがいた」ということではないでしょうか?
ちなみに 9) 君たちはどう生きるか も、これと似た傾向が出ています。
どうです? お楽しみいただけましたでしょうか?
去年は「書き甲斐のない記事になってしまいました」と書きましたが、今回のように割合はっきりと傾向が見て取れると大変面白くて、やっぱりこの分析は毎年続けようという気になります。
はい、来年もやります。
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もし、もっと古い記事をお読みになりたければ下記ページにある毎年の「【キネ旬全ランキング総括】 » その2」をお読みください:
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こちらの記事は毎年 note に掲載しています:
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