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日本にあるアメリカ──Starbucks と DEAN & DELUCA

Starbucks

僕が生まれて初めて入った Starbucks は旅行中のニューヨークだった。まだ日本に入ってくる前のことだ。

そうか、これが今アメリカで流行りだしたというコーヒーショップか、これは入ってみなければ、と思って入ったのだが、列に並んでいる間に壁に貼ってあるメニューを見ても何のことだかさっぱり分からない。

今でこそラテだとかマキアートだとかフラペチーノだとか言っているが、考えてみればそれらの言葉は後に日本に上陸した Starbucks で憶えたものだ。その時はお店でそれを初めて目にして、「一体何語?」という感じだった。

いや、別に何語でも良いのだが、それは一体何でできていてどんな味なのかが分からない。

そうこうしているうちに自分が注文する番が回ってきて、僕は思わず言った:

Um, Today's Special, please.

そう、それが壁に貼ってある中で唯一ちゃんと読めて理解できたメニューだった(笑)

今では懐かしい思い出である。

DEAN & DELUCA

僕が生まれて初めて入った DEAN & DELUCA もこれまた旅行中のニューヨークだった。こちらも日本に上陸する少し前だ。さすがに僕は知らなかったのだが、妻が「有名な店だから行ってみたい」と言うので行ってみた。

DEAN & DELUCA は日本では Starbucks ほど店舗数が多くないから、まだ「何ですか、それは?」という人がいるかもしれない。ドリンクやベーカリーだけでなくサンドイッチやサラダ、缶詰や瓶詰めの食品からキッチン用品まで置いているお店である。

初めて行った時は何を買ったか憶えていない。そして、同じ滞在中に今度は僕がひとりで DEAN & DELUCA に行ってサラダを買ってきた。自炊できるホテルだったので、部屋で食べるためにサラダを買ってきてと妻に頼まれたのである。

するとサラダを包んでくれた太った店員さんがドレッシングはどれにするかを訊いてきた。僕は生意気にも、

What kinds do you have?

などと聞き返したのである。すると彼は3種類のドレッシングの名前を挙げた。その3つが3つとも聞き取れないのである。

僕は多分フレンチとかサウザンアイランドとかシーザーとか、そういう名前が返ってくると思っていたのであるが、そのいずれでもなかったのは確かである。

もう一回聞き返したのだが、やっぱりどれも分からない。つまり、これはアメリカでは(あるいはこのお店では)我々が日本で食べているようなドレッシングは存在しないのか、あるいは名前が全然違うかに違いない。となると、もう一回聞き返しても多分分からない。絶望的だ。

仕方なく僕は、

I'll take the first one.

と言って、彼が最初に挙げたドレッシングを受け取った。

ホテルに帰ってそのドレッシングをつけてサラダを食べてみたが、確かに食べたことのないドレッシングだった。

あれは一体何だったんだろうか? そして、僕が買わなかった残りの2種類のドレッシングは一体どんなものだったんだろうか? いまだに気になって仕方がない。

それらはそうやって、まず日本に上陸する前に僕の中に入ってきたアメリカだった。そして、今では日本のそこかしこにあるアメリカである。

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山本英治 AKA ほなね爺
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