見出し画像

せめて、ちゃんとした報告書を出してほしいですね。

 11月10日の朝日新聞デジタルに、「街にコストコ来る 急いだ開発、市は見つかった遺構を公開せず埋めた」という記事が出ています。

 山梨県南アルプス市で検出された「平安時代から鎌倉・室町時代にかけてのものと見られる二重の区画溝の一部や、東西に走る道路跡」は、「甲斐源氏」に関連する遺構の可能性があるわけで、「甲斐源氏」ならば、南アルプス市はおろか、全国的にも注目されるものです。

 確かにコストコならば集客力もあり、出店場所が中部横断自動車道の南アルプスICのすぐ近くなので、地域の活性化につながると考えるのもやむを得ませんが、中部横断自動車道を利用してコストコにだけ来て、すぐに南アルプスICから中部横断自動車道を使って帰ってしまうというパターンも多そうな気がしますので、南アルプス市にどれだけのメリットがあるのかと。

 現在および将来の住民の利便性を優先して、遺跡を破壊するということは、全国どこでもある話です(近年では日本で初めて鉄道が開業した際、海上に線路を敷くために造られた「高輪築堤」の遺構が発見されたのですが、一部のみ保存して開発を進めるということが話題になりました)。
 というか、基本的に開発に伴う発掘調査は、破壊されることを前提に、きちんと記録をとって将来遺跡を復元できる技術が開発された際に復元するために調査をするわけですから、今回のようなことはあたりまえなのですが、ただ重要性が高いと判断された遺跡が発掘された場合には、場合によっては一部を残したり、埋め戻すにしてもできるだけ破壊しないような処置したりということはあり得ます。

 今回の件は、市長が「市の命運をかけた事業」と位置づけているので、このような処置も仕方がないですが、一般向けの現地説明会だけでも行えば、このように批判されずに済んだと思われるのに、それすらも惜しんだところが残念です。せめて、ちゃんとした報告書を出すくらいは出してくれることを期待したいですが、どうなるでしょうか。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?