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白濱裕太(元広島)ドラフト答え合わせインタビュー全文公開!【後編】他の捕手になかなかできない捕球技術を身につけた理由

絶賛発売中の『別冊野球太郎ドラフト答え合わせ1998-2022〈増補改定・完全保存版〉』では、NPBの現役から離れた6名のインタビューを行いました。
嶋基宏(元楽天、ヤクルト)、坂口智隆(元近鉄、オリックス、ヤクルト)、内海哲也(元巨人、西武)
白濱裕太(元広島)、寺島成輝(元ヤクルト)、吉持亮汰(元楽天)
アマチュア時代から取り上げてきたからこそできる、内容の濃い、プロ生活を振り返る「ドラフト答え合わせインタビュー」ができました。

noteでは本誌4ページに収まりきらなかった部分も含めた全文を前編・後編に分けて、公開しちゃいます!
【前編はここをクリックしてください】

●白濱流キャッチング術

――白濱さんといえば、キャッチングが巧い印象を抱いている野球ファンは多いと思います。「キャッチングは誰にも負けていない!」という自負はあったのではないですか?
白濱
 自分はおそらく他の誰よりもボールを受けている、という自負はありました。ブルペンでもマシーンでも、他の選手の何倍もボールを受けてきた自信はありましたね。現役が終わったいまだから言えることですが。
――キャッチングで心がけていたことはなんでしょうか。
白濱
 自分が強く心がけていたのは、「ストライクはきちんとストライクとコールしてもらう」キャッチングです。そのために強く意識していたのは捕球したところできちんとミットを止めること。捕った場所からミットを動かさない。それが自分にとっての「上手に捕る」ということでした。捕球後にミットが下がったり、外に流れたりして、ストライクがボールとコールされるようなキャッチングだけは絶対にしたくなかった。
――ボール球をストライクに見えるように捕ろうという意識はなかった?
白濱
 そうですね。僕はフレーミングという言葉があまり好きじゃなくて。体をストライクゾーンに寄せながら捕ったり、ミットをストライクゾーン方向に動かしながら捕ることは基本的にはしなかったです。ただ、低めに関しては、ミットを動かさなくても後ろから見ている球審がストライクに見えやすい捕り方を自分の中で開発していました。
――詳しく教えてください。
白濱
 低めのボールを捕球する際に頭を下げるんです。そうすると球審の位置から見ると、ミットが上がっているように見える。それによって低めのきわどいボールがストライク判定になることが増えましたね。
――その技術は誰かに教わったわけではなく、自分で考えたのですか?
白濱
 そうです。2012年頃だったと思うのですが、チームメートの誰かが捕球しているのを後方から見た時に、「あれ? もしかして頭を捕球と同時に下げたらミットが上がっているように見えるんじゃ?」と思ったんですよね。試しにチームの人に球審の位置から見てもらって、やってみたら「その捕り方だったら実際の位置よりもミットが高い位置にあるように見えます。ストライクに見えやすいと思います」と言われたので、じゃあこれを試合でもやってみようかと。
――その技術はカープ捕手陣の中で共有していたのでしょうか。
白濱
 「自分はこうしているよ」という話をすることはありました。でも、このテクニックを実行するには、体が柔らかくないと難しいみたいなんですよね。僕自身は体がすごく柔らかいんです。だからできた部分もあった。体の硬い會澤はやろうとしてもできないと思うんですよね。
――誰もができる技術ではない。
白濱
 そうなんです。誰もができるわけではない。体の硬い選手はまた違う工夫が必要になってきます。

●もしもタイムマシンがあったなら

――プロ生活19年であの頃に戻ってやり直せたら、と思う時期はありますか。
白濱
 プロ8年目の2011年ですかね。この年は春季キャンプ前の自主トレ段階からかつてないほどにバッティングの感覚がよかったんですよ。
――そうだったんですか。何かを変えたのですか?
白濱
 構えた際のスタンスをかなり狭くしてみたんです。すると下半身の力がバットに伝わって打球が一気に変わって。いままでになかった感覚が生まれたんです。一緒に自主トレをおこなっていた東出(輝裕)さん、梵(英心)さんも「お前どうしたんや!」と驚いていました。
――この年、初の開幕1軍をつかんでいます。
白濱
 キャンプに入ってもその感覚をキープできたので、首脳陣に「今年の白濱は一味違う!」と思わせられたのかもしれないです。でもシーズンが始まると、そのいい感覚は消えていって。いい結果も残らなかったので、そのフォームを続けることが不安になり、やめてしまったんです。後年、「やっぱり11年春の感覚が1番よかったよな」と思い出し、何度かそのフォームに立ち返ったこともあったのですが、11年の春先のいい感覚は2度と戻ってくることはなく、続かなかった。
ただ、現役を終えたいま振り返ると、一番自分に合っていたフォームだったのは確信できる。いい結果がすぐに出なくても、自分を信じて、あのフォームを貫き、継続できていたら、時間はかかったとしても「自分の打撃はこうだ!」といえる軸ができていた気がする。課題と言われ続けた打撃面の数字は変わっていたと思うんです。
――もしもタイムマシンがあれば、11年春の自分に「自分を信じてそのフォームを続けるんだぞ!」と伝えに行きたいですか。
白濱
 伝えたいですね。続けた先が見たかったです。
――打撃が覚醒し、レギュラーを獲っていた未来があったかもしれないですね。
白濱
 そのかわり、もっと早く現役生活が終わっていたかもしれないですね。
――どうしてですか?
白濱 レギュラーを獲って、試合に出る機会が増える分だけケガのリスクは高まりますから。内角攻めが厳しくなって選手生命が絶たれるデッドボールを受けていたかもしれませんし。
――たしかに……。現役生活は10年で終わったけども、3、4年レギュラーを張った野球人生があったならそちらを選びますか?
白濱
 そちらを選びます。でも、現役19年で1年だけレギュラーを張ったシーズンがあったなら、そちらを選びます。そちらのほうが現役を終えた時点での引き出しは多いと思うので。いまは會澤と野球談議を交わしていても「白濱さんの意見はわかるんですけど、1年フルで出たらそうもいかないんですよ」なんて返されたら、その話題に関してはそれ以上、僕からは意見を言えなくなる。でも1シーズンフルに出た年が1年でもあれば、もっと対等な深いやりとりが長くできるはずなんですよね。
――なるほど……。
白濱
 こんな感覚に行き着いた野球選手、たぶん僕しかいないような気がします(笑)。
 
●これから
 
――今季からはスコアラーとしてリスタートする白濱さん。スコアラーという立場に就くことへの迷いなどはなかったですか?
白濱
 なかったです。カープで現役を終えられたらと思っていましたし、そのカープからお仕事がいただけるのであれば、受けるのが筋だと思っていたので。1年全力でやってみて、ダメだったら切ってもらうし、必要だと思ってもらえたなら契約をしていただけるだろうし。スコアラーという立場で、1年勝負で選手たちと一緒に戦うつもりで臨みたい、と思っています。
――配球を読む力がチームの貢献につながる仕事でもある。
白濱
 データを選手たちに提供する際も、外れることを恐れて自分の意見をはっきり言わないやり方は自分の性格上できない。「狙うべきはこの球種」などと明確に自分の意見を伝えて、迷いを消し、背中を押してやれるようなスコアラーになれたらと。「これ狙っていこうよ!」と根拠を持って言えるくらいに自分もとことん試合を見て、データを入手しなければと思っています。そういう気持ちでいっぱいです。
――今後もチームに不可欠な存在として活躍する未来が見えた気がしました。気がついたらスコアラー人生も19年に達しているかもしれませんね。
白濱
 ハハハハハ(笑)!
――19年の現役生活を通じてやってきたことが今後の人生でも生きそうですね。
白濱
 生きればいいですね。

白濱裕太プロフィール

『別冊野球太郎ドラフト答え合わせ1998-2022〈増補改定・完全保存版〉』のインタビュー全文公開はいかがだったでしょうか?
本からnoteにお越しいただいた方は、いままで読むことができなかった、未掲載部分を読み、いかがだったでしょうか?
まだ誌面を未読の方、このような深く、独占情報満載のインタビューがあと5本掲載されている『別冊野球太郎ドラフト答え合わせ』をどうぞよろしくお願いいたします!