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PCRキット販売には、陽性反応後の診断・治療もセット販売してほしい

どうも、薬剤師の川島です。

新型コロナの漠然とした不安の中、こんなニュースがでました。

要は『法人向けにPCR検査キットを販売します!』ということですね。
漠然とした不安が渦巻いているので、メチャクチャ売れると思います。

僕はある条件が無ければ買いませんけど。

これを読んでくださる方の、購入するかしないかの判断の判断の一助になればと思い、僕が思うところを書きました。(今私に出来ること)

医療業界からは疑問の声

これに対して医師がコメントしてました。

文章を一部コピペしますと
政府の専門家会議メンバーを務める日医の釜萢(かまやち)敏常任理事も会見で

(1)検体採取をする際に周囲に感染する

(2)実際は陽性なのに誤って陰性との判定結果が出る-ことが懸念されると説明。

「社員が出勤できるかどうかの判断に使うと大きな誤りが出る」と指摘した。

医師のコメントを分析すると

まず(1)に関してはキットの説明に「自分で採取する」となっていますので隔離した状況(自宅など)なら大丈夫じゃないですかね。
(もちろん細心の注意をはらっている前提です)

次に(2)「実際に陽性なのに誤って陰性との判定結果がでることが懸念」とありますが、医師が採取した検体でもその可能性はあるわけです。

もちろん素人の検体採取と医師の検体採取の正確性を比べればどちらが正確かは言うまでもありませんが。

正直このコメントだけでは個人的には販売の抑止力にはなりにくいなぁ、と思ったのです。
(記事の内容しか読んでないので、会見コメントを全部見ると納得できるかもしれませんが。)

問題は3つ

この検査キットの問題は
①陰性の場合はどうする?
②陽性の場合はどうする?
③責任はだれが負う?

だと思います。

順に説明していきます。

①PCR陰性=非感染 ではないのです。PCR検査は検体を採取して、そこに含まれる微量のウイルスを増殖させてウイルスがいたかどうか、を判定する。PCRでも引っかからないほどの微量のウイルスであれば、感染していても陰性に出る可能性があります。
検査をした=怪しい症状がある⇒陰性なら出勤停止しなくてよい。というのは一見正しく見えて、リスクがあります。

②一番の問題はここ。陽性反応が出たらどうするの?

③もし①のパターン、陰性だったから出勤して、その後、実は感染していたがわかったら?
また陽性反応が出たのでかかりつけ医に電話相談したら、そのキットは正式なものでないので3~4日自宅待機の指示が出たとする。3~4日経って症状がなく出勤。
その後、症状が出て実は感染していた。
いずれにしても検査キットを使ったのに、他の従業員にうつした場合は誰の責任?

羊水検査(出生前診断)を思い出した

話はそれますが、うちには二人の子供がいますが妻が妊娠中に
「羊水検査(出生前診断)した方が良いかなぁ?」と相談されたことがありました。
僕は
「羊水検査のリスクをわかった上でやりたいなら、止めないけど、
もしも検査して何かしらの障害を持っている可能性が高い、
とわかったらどうするか決めてる?

「僕は(障害の可能性の)結果が出た時に、どんな判断をするかは決められない。決めろと言われたら、産んで、としか言えない。自分の中ではその答えは、ある?」
と聞きました。

妻からは
『何も問題ない、という結果が欲しいけど、もし何かの障害があったら、というのをそこまで真剣に考えてなかったかも』
と言われ、結局、検査をしませんでした。

陽性反応の対応もセット販売されてたら買うかも

結局はどんなアイテムも「どう使うか」だと思うんですね。
「バカとハサミは使いよう」なんて言葉があるくらいです。
もし僕が社員を多く雇っている社長だとして。
この検査キットが【陽性だった場合に優先的に受診、確定診断、そして治療までフォローします】という商品なら買いますね。
さらに医師会から「確定診断にはなりえないが、診断の参考にはなりうる」というお墨付きをもらう。でも、そうではないですしね。

次善策としては近隣の病院に事前に相談して、陽性だったあとのフォローを確保した上で購入。
それが出来ないなら混乱を招くだけなので買わない。

現実的にはどちらも難しいので、結果的に買わない、になります。

だから、もしあなたが従業員という立場で「不安だ!だからこの検査キットを買うべきだ!」と社長に提案するなら。この辺をクリアした上で提案してもらうと良いかなぁ、と思います。

科学の進歩は素直に歓迎した上でどうする

こういう簡便に検査ができる商品が出てくることは科学の進歩なので、僕はむしろ歓迎します。
そして医療の大衆化に関しては、これだけ情報があふれた世の中では止められないので、その前提で僕たち薬剤師も対応していく必要がある、と思います。

例えば簡単な検査キットでいうと、ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)の検査キットとかは良いですよね。
早期発見⇒除菌⇒胃がんリスク軽減につなげられるアイテムになるわけですから。

なので、今回のこのキットにしても、どう活用するか?が大切。

どんな状況でこのキットを使って、陰性ならどうするか?陽性ならどうするか?

このキットを買う会社の社長の中には「そうは言っても従業員の漠然とした不安を取り除いてあげたいんだ!」という方もいると思います。
もし買うなら、社内でしっかりと指針を決めてから購入して、従業員の不安を取り除ける選択肢になれば良いなぁと思います。

購入することでかえって不安、混乱が起こりませんように。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

※YouTubeでも新型コロナの解説をしています。
科学的な根拠(エビデンス)に基づいた情報を心がけています。
みなさんの漠然とした不安が少しでも減りますように。

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薬剤師 川島敦
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