ビンテージという考え方②
そして3か月後、大阪の百貨店、次のイベント販売の日が来ました。
賞味期限があと2週間しかない超熟成もののブランデーケーキエクセレントXOを5本。
とりあえず、いやいや、わざわざ用意しました。
この初日に賞味期限が2週間ちょっとになるように、タイミングを計りブランデーケーキエクセレントXOを作り、そこから5本抜き取り、丁寧に丁寧に上下を返しながら、店舗に置かずに、じっくり熟成をさせてきました。
「さすがに美味しいはず!」
味的には、自信がありました。
でもそれ以外は不安でいっぱいです。
「本当に売れるのか?」
不安たっぷりの初日。
手に取って購入できるスタイルの売り場なので、間違って購入されてしまうと大クレームになるため、お客様の目に触れない、売り場の奥に隠しておくことが条件での販売スタートでした。
よし、お客様に説明をしっかりして、熟成したものが欲しいということになれば、この超熟成ものを提案してみよう。
「でも、さすがにあと2週間は短すぎ?」「ちょっと極端すぎたかな」「残り1か月くらいのものの方が良かったかな?」「プレミアムにすれば良かった???」
早速、不安が自問自答を始めました。
そんな思いの中、午前中は、みなさん忙しいのか、さっと買って帰られるお客様がほとんどで、商品説明する機会がなく、チャンスがないまま悶々としていました。
だんだん不安になってきました。
「そんな2週間しかないもの、よう売ろうとしたな。あまりもんやろ???」
「さすがに2週間は短いわ!」
なんて言われたらどうしよう。
結構本気で売りに来てたので、声をかけるのが怖くなってる自分がいました。
このまま無かったことにして、山口県に持ち帰ってしまおうか・・・。
「お!来たね~! あれ持ってきた???」
いきなり声をかけられました。
顔を上げると、お客様が立っていました。
スーツ姿で気が付きませんでしたが、よく見ると、あの時の男性でした。
意表をつかれたので、「はい」とだけ答えまてしまいました。
もっと苦労話や、あんなこと、こんなこと説明したかったのですが・・・、
シンプルに「はい」しか言葉が出なかった。
「何本持ってきたん?」
「じゅくじゅくやろうな~?」
「楽しみにしとってん!」
その言葉が、さっきの不安を吹き飛ばしました。
気が付くと、自信満々の自分が、嬉しそうにその苦労話や、こだわりを話ていました。
今回も、私の話に、大きくうなずいて、真剣に聞いてくださっておりました。
嬉しい限りです!!!
「で、何を何本持ってきた?」と、お客様。
あ!
しゃべりすぎた??
前回の去り行く姿を思い出し、急に不安になりました。
そして、自信なさげに恐る恐るいいました。
「ブランデーケーキエクセレントXOを5本ほど」
どうかな・・・。またダメかな・・・。
なんて不安を考える間もなく答えが返ってきました。
お客様:「じゃあ、それ全部ちょうだい!」
私:「え! 全部ですか?」
お客様:「そう、だって美味しいんやろ?」
私:「あ、はい。」
お客様:「美味しいんなら、買うわ!」
私:「あ、ありがとうございます!」
なんてすごい街、『食い道楽大阪!』。
そのやりとりを聞いていた周りのお客様も、なんだなんだと関心を持たれ、人が人を呼び、あっという間に人だかり。
やはりこの熟成という付加価値はすごいと感じました!
お客様から次々にうれしい質問!!!
「熟成するん?」
「どのくらい寝かしたらええの?」
「え!上下コロコロしたら美味しくなんの?」
「もしかして、賞味期限ギリギリのものが一番おいしいん?」
「美味そーやな~。」
「で、それあるの???」
・・・あっ!
(しまった!全部売れてしまってた!)
皆様に深くお詫びをし、次回必ず持ってくることをお約束して、その場は収まりました。
「絶対持ってきてや~!」
また嬉しい言葉をいただいてしまいました。
それ以来、熟成したものをいつの間にか「ビンテージもの」と呼ぶようになり、常連さんの知る人ぞ知る特別アイテムとなりました。
私は、この度、ビンテージタイプのブランデーケーキの販売をスタートさせました。
プロが、ブランデーケーキセラーで丁寧に熟成させたもののみ、そう呼んでいこうと思います。
1か月、2か月かかる美味しさの作りこみを施したものを、提供可能な数だけ販売してまいります。
付加価値の価格は、後々、お客様が決めてくださるものと考え、しばらくは通常のものと同価格にて販売いたします。
作って間もないもの、熟成したもの、かなり熟成したもの、それぞれに選んでいただけるように、少しずつショップ構築していく予定です。
今回、「ビンテージバレンタイン企画」は、好評のうちに終了いたしました。
今後は、ホワイトデー、母の日、父の日など、そのタイミングに美味しくなったものを提供できる仕組みを作り、ご案内差し上げます。
どうぞよろしくお願い致します。
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