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CXの仕事はマーケでもなく、テクノロジーでもなく、対話である、という話

「他者とわかりあい、より成果をあげる」を読んで直感的に思いついたのは、これがCX(Customer Experience)の仕事である、ということでした。
※本の詳細はこちらに記載されてますので、本記事では関係箇所のみかいつまんでご説明します。


技術的課題と適応課題

前提として、課題には技術的課題(Technical Challenges)適応課題(Adaptive Challenges)の2種類に分けられます。定義は下記のNoteから引用させてもらいます。

1. 技術的課題(Technical Challenges)とは
技術的課題(Technical Challenges)とは、ある課題に対して、新たな知識やスキルを身につけることにより、特定の「正解」を導き出すことができる課題のことです。
産業革命時代〜20世紀にわたるまでは、このような課題として捉えられていたものも多かったと思います。

2. 適応課題(Adaptive Challenges)とは
これに対して、Heifetzは、21世紀における様々な課題は、技術的課題よりも適応課題(Adaptive Challenges)が主流を占めるようになってきたと主張します。
では、適応課題(Adaptive Challenges)とは何かといえば、正解はもとより、問題が何かということ自体についても、容易に特定が出来ない課題です。したがって、それに対処するには、単に知識やスキルを身につけるだけでは不十分であり、自らの「価値観」や「物の見方」を問い直す必要がある、ということです。

https://note.com/hiro276/n/nb9560a22ba61

この様に分けた場合、CXにおいて発生する課題は、まさしく適応課題と思います。

CXは必ず組織を跨いだ横断的な取り組みとなる

CXは企業の組織構成と噛み合っていない

多くの場合、CXは企業における組織構成と噛み合っていません。CXを考える=広告→購入→製品利用→サポートまでの顧客接点のあるべき姿を考える、ということですが、CX事業本部、という組織はほぼなく、マーケティング/営業/製品開発/CSなどの組織に分かれます。なので、各事業部の管轄は、一部の顧客接点のみに限られている、というのが実態です。

そのため、各事業部の活動を突き詰めていくと、部分最適全体不最適になります。例えばコールセンターを最適化するため、コールセンターのオペレーションを超効率的にしたとします。すると、コールセンターは非常に丁寧かつ迅速に課題を解決できるかもしれませんが、そもそも製品に課題が頻発する、または解決方法をウェブで調べても出てこない、となるとユーザは架電を行わざるを得ない状況に追い込まれた時点で、満足度が低くなります。このマイナスの状況をコールセンターがいくら丁寧に対応したとしても、逆転することは非常に困難です。全体として取り組むべきは、架電した後の対応のみではなく、架電をそもそもさせないためにどうすべきか、です。この様に全体不最適に陥ると、当然顧客の満足度は下がる傾向が見られると思います。

この部分最適全体不最適を避けて全体最適を図ることは、まさしく適応課題です。なぜならば、全体最適を図ることは複雑度が一気に増し、答えを導き出すことが困難だからです。

対話を実現、そして促進するためには?

部分最適全体不最適を避け全体最適を目指す、適応課題にアプローチするには、部門間の対話が必要不可欠です。但し、やるべきだ、と言ってもその実現は簡単ではありません。

誰がこの対話をリードすべきなのか?

この組織構造において、全体最適な状態を作る/維持する、というのは誰の役割でもありません。強いていうなら、事業部をまとめる社長や役員なのですが、CXの最適化には上位指針に加えて具体的な施策まであらゆるレベルの対応が求められる上、全体をモニタリングする機能も必要となるため、ただ意思決定者がいれば良いというわけにはいきません。

そこでよく出てくるのは、タスクフォースの形成や外部コンサルタントの招聘です。これは有効なアプローチですが、その課題は継続性がない、ということです。

これを解消するためには、やはりCCXO(Chief Customer Experience Officer)が役員レベルで戦略のファシリテーション、そしてCross Functional Teamが継続的な役割として現場の部門横断的なモニタリングとファシリテーションを担うことが大切かと思います。この様な役割が定義されない限り、非常に視座が高いかつ、責任を超えて稼働できる超優秀人材が出てくることを祈る、お祈りソリューションでの解決しか期待できません。

この組織がCX全体をモニタリングし、全体最適に向けて必要な取り組みや課題を特定し、各部署の対話のきっかけを作る必要があると思います。

CXの担当者にとって、CXの促進=対話の促進

但し、この組織横断的なチームはあくまで各施策の実行部隊ではありません。実行部隊は、各事業部です。そこに既に人材がいるため、Cross Functional Teamに重複した役割を担わせることに意味はありません。

なので、CCXOやCross Functional Teamは、対話のきっかけを作ったら、次は対話のサポートをしなければいけません。なぜならば、各事業部からしてみると、ちゃんと自分の仕事をしてKPIを達成しているのに方針転換しろと言われるリスクがあるため、この対話に前向きになるインセンティブがありません。

なので、CXの実現には対話が必要なのです。このCXを担う部署は、各事業部の立場を理解し、それをさらに説明して反対側に理解させ、「お客様のため」というNorth Starに向かった場合、何が最適か、という適切な議論を行い、この適応課題を解消することが求められます。
対話を通じて方向性が決まれば、あとは各事業部による実現に向けた技術的課題が中心となります。

まとめ

この様に、CX担当部署の役割においては、全体最適に向けた適応課題に、対話を促進して推進していく/各部署に推進してもらえる様に誘う、ことが最重要であると思います。このため、CXを話す際はマーケやテクノロジーが関わることが多いですが、その実は対話なのではないかと個人的に思います。

そして、CXが当たり前になると、企業における自己組織化が促進され、カルチャーとして定着すれば、このCX担当部署というものが存在しなくとも、最適なCXをお客様に提供できる様になるのかと思い、それが目指す姿かと思います。



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