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服薬治療中に気をつけたい食事と栄養素①エネルギー
このシリーズでは管理栄養士の立場から、服薬中の患者さんにお伝えしたい食事と栄養について解説していきます。服薬とあわせて、からだの素を作っている食事や栄養はとても重要です。みなさまのQOL向上に少しでも寄与することができましたら幸いです。
エネルギーとは
私たちが、呼吸をしたり、脳を働かせたり、体温を維持したりするために、さまざまな場面でエネルギーが必要です。もちろん仕事をしたり、体を動かすためにもエネルギーが必要不可欠です。
エネルギーを過剰に摂りすぎると、肥満や生活習慣病につながりやすく、逆にエネルギーが過剰に不足するとフレイルや低栄養などにつながりやすくなってしまいます。
『食事摂取基準2025』では、下表のように推定エネルギー必要量が定められています。
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出展:厚生労働省『日本人の食事摂取基準(2025年版)』(各論1 エネルギー・栄養素)
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316461.pdf
年齢や性別、活動の度合いにより、違いがあることがお分かりになると思います。
60歳の女性(身体活動レベルふつう)であれば、1,900kcalが1日に摂るエネルギーの目安となります。1日3食とすると、1食あたり約630kcalですね。
注意:食事摂取基準は健康な個人及び健康な者を中心として構成されている集団(生活習慣 病等に関する危険因子を有していたり、また、高齢者においてはフレイルに関する危険因子を有していたりしても、おおむね自立した日常生活を営んでいる者及びこのような者を中心として構成されている集団含む)が対象となります。医師や管理栄養士から食事療法を受けている方はそちらの指示に従ってください。
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1ヶ月で1㎏減らす・増やすには?
エネルギーの目安とあわせて確認いただきたいのが、体重やBMIです。体重やBMIの変化をあわせて見ることで、過剰や不足を把握していきましょう。
脂肪1㎏は約7,200kcalのエネルギーを持つと言われています。つまり、脂肪を1㎏減らすためには、食べる量を減らすまたは体を動かす量を増やすことが必要になります。1ヶ月で1㎏減らすと想定すると、1日では約240kcalになります。
※BMIとは
体格指数のこと
算出方法:体重(㎏)÷身長(m)÷身長(m)
例)身長160㎝ 体重56㎏
56㎏÷1.60m÷1.60m≒ 21.9 ➡BMI 21.9
食事摂取基準 目標BMI(下表)
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出展:厚生労働省『日本人の食事摂取基準(2025年版)』(各論1 エネルギー・栄養素)
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316461.pdf
生活習慣病で服薬をされている方にとって、エネルギーを適切に摂ることはとても重要なことです。服薬をして、一時的に検査値が落ち着いたとしても、エネルギーの過不足が続けば、検査値が再び悪化してしまったり、他の疾患のリスクを高めることにつながってしまいます。服薬を正しくしながら、食事もご自身にあったものにしていくことが、将来のQOLを高めることにつながります。
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<書いた人・監修>
小口淳美
管理栄養士
株式会社フォーラル 栄養統括シニアマネジャー
薬局管理栄養士研究会会長