暮らしの薬学【防虫剤編】~④衣類を害虫から守るために
ミズホ「今年の冬に昨年買ったセーターを着ようと思ったのに、虫さんに食べられちゃった。あ~あ。夏のお洋服は絶対にシミができたり虫に食べられたりしないようにしたいなぁ。。」
穴のあいた衣類をみるとがっかりしますよね。虫に食われないように収納するにはどうしたらいいでしょうか。被服の保管前に注意すること、事前のお手入れについてまとめました。
衣類を害虫から守るために
1) 清潔:汚れやシミは、微生物の繁殖や虫害の原因になるので、完全に除去する。家庭での洗濯は、糊づけしない。特に高級品は信頼できるクリーニング店に依頼する。
2) 乾燥:保存前の衣類は十分乾燥する。原則としてスチームアイロンは避けたほうがよい。加熱乾燥したものは、必ず室温に戻してから、包装し、収納する。また、クリーニングから戻ってきた衣類は再度よく乾燥して収納する。
3) 保管場所:低湿度で、年間または1日の温室度の変化が少なく、直射日光、蛍光灯が避けられる所で外気と直接接していない押入れ、風通しがよく空気のよどみのない場所がよい。
4) 殺虫:いくら防除したつもりでも、虫に食われることもあり、その虫は、衣類に潜んでいる可能性が高い。再度、洗濯・クリーニングに出す、タンスや衣装ケースは、掃除機できれいに掃除する。クローゼットや部屋全体は、ピレスロイド系の殺虫剤や燻煙剤で殺虫し、潜んでいる虫を防除する。
特に大事な服やまた自宅では洗濯でいない服はクリーニング店に依頼することが多いと思います。クリーニング店できれいになった衣類は、カバーがかかったまま、たんすに入れていませんか?
クリーニング店から戻ってきた衣類にはクリーニングカバー(ポリ包装)が施されています。これは返却時に汚れが付かないよう保護するためのもので、長期保管のためのものではないので、通気性などは考えられていません。そのため、クリーニングカバー(ポリ包装)をかけたまま衣類を収納してしまうと、空気や燃焼ガスがこもって「虫食い」や「カビ」や「変色」の原因となってしまいます。
クリーニング後は、クリーニングカバー(ポリ包装)を外して十分に乾燥させてから収納するか、不織布のカバー(専用の防虫カバー)に掛け替えれば空気を通しながらホコリも防ぎ、虫食いからも大切な衣類を守ることができます。
Q.子どもが防虫剤を口の中に入れてしまいました。
防虫剤のうち、「ピレスロイド系」はその形状から誤飲しにくい上に、毒性が低いため中毒の心配はあまりないと言えるでしょう。しかし、「パラジクロロベンゼン」「ナフタレン」「樟脳」の場合、経口、経皮、蒸気で毒性がありますので、注意が必要です。また、親油性のため牛乳や脂肪の多い食べ物を摂取すると吸収されやすいので、誤飲後は2時間位避けなければいけません。
これら3つの防虫剤を誤飲した時の対応についてそれぞれまとめました。
◇パラジクロロベンゼン
なめた程度、少量かじった場合は、水(牛乳はだめ)を飲ませ、様子をみてください。
体重10キロ当たり1g(碁石型の1/3くらい)を越える量なら、水(牛乳はだめ)を飲ませ、吐かせて病院へ。*牛乳や脂肪の多い食べ物は誤飲後、2時間位避けてください。
◇ナフタリン
少しなめた程度なら、水(牛乳はだめ)を飲ませ、様子をみてください。
それ以上の量の場合は、水(牛乳はだめ)を飲ませ、吐かせて医師へ。*牛乳や脂肪の多い食べ物は誤飲後、2時間位避けてください。昇華したものを吸い込んだ場合は、新鮮な空気のところで休ませてください。
◇樟脳(カンフル)
絶対に吐かせないでください。少しなめた程度なら、水(牛乳はだめ)を飲ませ、様子をみてください。それ以上の量の場合は、水(牛乳はだめ)を飲ませ、吐かせずに病院へ。
*牛乳や脂肪の多い食べ物は誤飲後、2時間位避けてください。
もっと勉強したい人に ~ 参考リンク
●衣類用防虫剤の誤飲(日本薬剤師会)
●クリーニングから戻ってきた衣類は、そのまましまっても大丈夫? 収納する際の注意点はありますか?(エステー化学)
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<この記事を書いた人・監修>
藤田知子
京都薬科⼤学卒業後、メーカー勤務を経て、ドラッグストアでOTC医薬品販売から処⽅箋調剤など薬剤師業務 に従事。“薬剤師は町の科学者”をテーマに薬系新聞に寄稿、「ドラッグストアQ&A」(薬事⽇報社)を編集。