アナグラム歌会 46音いろは歌(やすこ納言 部門) 受賞作発表

アナグラム46文字(ゐ、ゑ、を加えると48文字)を全部使いきるアナグラム詩。この部門に参加されたみなさん、ありがとうございました。

おつかれさま、という気持ちも。アナグラム沼にずぶずぶと、すすんで、または、気がつくと、ハマられていた方も多数。作品にふれて、わたしは、同志感も持ちました。自分だけじゃないんだ、と、ほっともしました。

「選ぶ」というのが、実は重くて、プレッシャーになりました。悩みながら、行きつ戻りつ、の作業でした。

参加作品は62作、参加者は26人。企画にかかわっていた、みえるさん、あんこぼーろさん、と私をのぞくと、作品55、参加者23人。

どの作品も、読んでは驚嘆し、感じ入り、かな文字をひとつずつ、という同じ条件で、これほど、さまざまな作品が生まれていることに、目をみはる思いでした。そして、わたしが、部門名になっていていいのかと、何度も思いました。逡巡の末の結果を発表いたします。この部門への応募作は多かったので、みえるさんが、次点という形を付け足しても、と言ってくれていたので、そうしました。



大賞

なおみ * lebouquet *さん 作

柔せ
白妙

胸染め

昇る
花火
散りぬ
音消すも

朝が
キミを
連れ行く
前に

今宵
らんでぶう


選んだ、いちばんの理由は、これが普通の詩に見えたからです。ことばが自然。表記のしかたも、カタカナあり、また、カタカナ表記になってもいい単語を、あえてひらがなにするセンス。恋心にあふれ、色気もある。なおみさんが、この詩を書かれたのは、46文字アナグラムの制約があったせいです。でも、仕上がったものは、まるで、その縛りを感じさせない。定型詩で、ここまでできる。見たことのない作品、というよりは、なじみがあるような詩。それを、決め手にしました。

なおみさんは、多作で、7つ応募されています。どれもが、同じように、艶のある、慕情あふれる作品群。(選ぶときは、まとめずに、作品ひとつひとつ、という気持ちで選びました。)そして、なおみさんが、アナグラム詩の作品で醸し出す雰囲気は、彼女が、ふだん書かれている詩の世界観でもありました。アナグラムの難しさを知る者として、それは、驚きであり、不思議でもあります。なおみさんが、楽しまれていて、ことばが、湧いては溢れているのだろうと思いました。ご本人も、46文字アナグラムを、むずかしくは感じられてないと書かれてもいました。


次点


数理落語家 自然対数乃亭吟遊さん 作


はっくーさん 作


いじゃらさん 作


吟遊さんといじゃらさんは、ほかの要件との掛けあわせで、アナグラム詩を創られました。技あり、という感じです。吟遊さんは、数え唄と。それも、かなり早めの投稿。いじゃらさんは、詩の中に、斜め読みを入れこみ、その上、小説じたての中で。最終日の投稿。こうして、ほかの要素と掛け合わせて取り組まれた作品は、他にもいくつかありました。アナグラムは、それだけで制約が多いのに、自分から、さらに縛りを強くされたわけです。ゼロの紙さんは、企画3つ(!)掛け。そして、その詩で、泣く人まで出している。秋谷りんこさんの、頭文字しばり。アナグラムに、企画の前からなじんでいた、さすがの使い手。さちさんの「干し芋部」のテーマ縛りは、かけるものの斬新さ!どの作品も、制約が多いのに、言葉に無理がないのが、印象的でした。   

はっくーさんの投稿数10作。最初の投稿から、自然な雄弁さ。だんだんに流暢に、という感じでなく、どれもが際立ちました。おふたりのほかにも、お一人でいくつもの作品を投稿されている方は、何人もいました。言葉の箱庭さんも7作。その連作どれもが力作で、中身もタイトルも、酔わせます。さちさんは3作。ほかにも、3作の方たちが。Shihoさんの、静かで「孤」なのに、寂しくない、力強い世界。穂音さん、3部作がみごと。ももりゅうさんの、覚悟と強さと、たぶんピンクに彩られた世界。広がる世界が多様な、青天さん作品。みなさん、アナグラムの世界に取り憑かれたようでもあり、または、ご自分が、取り込んでいるようにも感じられました。

私は、企画が始まったころの記事で、アナグラムを、抽象画のように感じると書きました。タロットカードにたとえたりもしました。アナグラムは、アート表現のひとつです。書き手が、アナグラムというものを、どうとっているかも、また、個々に自由。意味合いを、まるで、読み手に委ねるもあり。補足や背景説明で、意味を与えるもあり。狙った世界を創り出すもあり。

制約があるにもかかわらず、自分が言葉を引っ張っているように、わたしには思える作品。その中には、勢いのある、あるさんの詩。華も花もある、つるさんの詩、情熱的な、まつおさんの詩。きれいなことばばかりの、Minminさんの詩。反対に、言葉が連れて来た世界に迷いこんでしまった感じがすてきな、りりかるさんaliyさんの作品どの作品を見ても、自分からは出てこない、と思いました。それの、いい悪いも優劣もないと思います。自分にないという視点で言えば、やさしい、ほっこり感の、タネトハネさんの詩。謙遜されているのに、自然な詩になっている、kesun4さんぺくみさんの作品。なおみさんと並ぶ、情感と色気豊かな、みけさん作品。そして、破壊力のある、イヤシヤさん作品、アナグラム界の岡本太郎。

アナグラムの縛りは、わたしたちという書き手ひとりひとりのちがいを浮き立たせるようでした。エッセイの妙手、水野うたさんが、言われていたことですが、書いて形にするとき、同じことが、違うフィルターを通ることで、まったく違うものとしてあらわれる面白さ。共通なのはたった50足らずの文字なのに、ここまで、出てくるものの違いを楽しめるのは、不思議でもありました。

今回、わたしが選んだ作品を見る限り、狙った世界を創り出した・創り出せたものばかりになっていました。選ぶ係になったわたし自身ができないこと。それをする、または、できる人たちの作品を、知らず知らず選んでしまったのかもしれません。同じ理由で、ひとりでいくつも創られた多作の方たちに、肩入れしてしまう傾向になっているのかもしれません。

ここでの賞という形にならなかった作品を書かれたみなさん。この結果は、選ぶわたしの、現時点でのものです。選ばせてもらった作品は、どれもすばらしいと思います。そして、投稿されたどの作品にも、楽しませてもらったのも、圧倒されたのも、ほんとうです。(この記事を挙げるのは、2月3日のはずだったのに、4日未明になったことからも、わかっていただけると思います。)優劣は、わたしにはわかりません。もしも、もしも、がっかりされていたら、ほんとにすみません。微笑んで読んでくださっていたら、うれしいです。この企画は、詩も書き、ことばあそびが好きなわたしには、おまつりのようでした。選考、という役がなかったら、もっともっと、ほうけていたかもしれません。楽しい、新年最初の月になりました。ありがとうございました。


みえるさん、企画の主催、おつかれさまでした。仲間に入れてくれてありがとう。アナグラムの世界をおしえ、導いてくれたことも。軽々と、いくつも自然なアナグラム詩を投稿されるのに、感嘆。あんこぼーろさん、企画の提案から、助け舟まで、気遣いと支えに感謝します。語彙のすごい2作品も。



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