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良い研修につながる良い雰囲気をつくる

「良い研修をつくるためには?」という問いへの答えを探すために、人材育成担当者が「き」をつけることを書き連ねています。

「良い研修」のためには、「研修そのもの」(研修を受ける時間 / 研修ルームの中)に加えて、現場とのつながりという「研修の外」に目を向ける必要がありました。

「良い研修」というテーマではあるのですが、扱う範囲が「研修の中身」を超えて、「研修と現場のつながり」に広がっていることが感じられるでしょうか。考えてみれば当たり前のことなのですが、研修というのは、そこで学んだ内容が現場で実践されて(研修を超えて)、はじめて意味が出てきます。

研修転移に必要な、心がけと声かけ』より

「現場とのつながり」「研修の外」の典型的な例として、前回は、研修転移という考え方にもとづいて、「上司の関わり」について紹介しました。

「良い研修」にするために必要な、上司の関わり方をいくつか紹介してきました。研修の前に、上司の期(き)待を伝える。研修の後には、上司が機(き)会≒仕事の提供する。そして、その仕事の中で、上司が継続的に関わることで、研修で学んだ内容に磨「き」をかける。

研修転移とは、「一回で」「一人で」起きるものでありません。また、上司のもとに手放しで転がり込む福音でもありません。研修(人材育成担当者)と現場(上司)で一緒に引き出す、共同作業の産物です。

研修転移に必要な、心がけと声かけ』より

今回は、良い研修をつくるために「き」をつけることとして、社内の雰囲気(き)をつくるという考え方を紹介します。

「毎年やってる研修」は宝の山

「良い研修」かどうかを測るモノサシのひとつが研修転移だとすると、上司からの声かけが大切なのは前回書いたとおりです。では、どうすれば上司からの「行ってこい」という前向きな声を引き出せるでしょうか。上司自身に、部下がこのあと受ける研修に対して、前向きなイメージを持ってもらう方法が2つあります。

1つ目は、そして、もっとも効果があるのが、「上司自身が同じ研修を受ける」です。

これは、ピンポイントの社外研修というよりは、社内で毎年行われている研修をイメージしたほうがいいかもしれません。社内で長年行われている研修であれば、上司自身が以前受けていることも多いです。

こういったケースにおいて、人材育成担当者は、「上司が以前受けている」という事実を積極的に活用すべきです。以前受けたことのある上司から、今度受ける部下に対して、「今度の研修は●●という点で役立つから行ってこい。私もあれを受けて●●というふうに変わったよ」という前向きな一言をかけてもらうのです。

その一言を引き出すために、人材育成担当者は、過去の受講者リストを整理しておいたり、受講当時の上司のコメントを抜粋して「以前受講した時●●とコメントしてくれていました。その感想をぜひ今度受ける部下の方にも事前に伝えてください」といった案内を送る。作業としては、いわゆるLMSでやれることですが、当の人材育成担当者自身がこういうことにアンテナを張っていなければ、LMSも宝の持ち腐れです。

悩める上司に武器を渡す

2つ目が、上司どうしや社員どうしの口コミです。今回はこちらにスポットを当てて、良い研修をつくるために人材育成担当者が「き」をつけることを紹介します。

今回の「き」をつけることは、「これは良い研修なんだ」という社内の雰囲気(き)をつくるというものです。雰囲気という目に見えないもの、そして、範囲も「社内」というあいまいなものなので、「こうすれば大丈夫」という特効薬はありません。「可能性のあるもの」を「積み上げ」ていくことが大切です。

上司どうしの口コミという意味では、部署の全体会議で研修の内容を紹介してもらう、異なる部署の上司が参加する会議に人材育成担当者が同席したときに話題に出す、などがあります。

上司には上司どうしのネットワークがあります。そして、上司は往々にして部下の育成に悩んでいるものです。ですから、上司どうしのネットワーク(全体会議や異なる部署の上司が参加する会議)のなかに、部下の育成に効くネタ(良い研修)を投げ込んであげると、それは自然に広がっていくものです。

「研修の成果発表」も宝の山

社内の雰囲気をつくるためには、研修の成果発表を会社や部署の全体会で行うことも効果的です。

なんらかの実習や成果物をともなう研修だと、この方法を取りやすいです。たとえば、現場の実際の課題を題材に行う問題解決研修や、見込み顧客を題材にした提案力向上研修などです。

研修の成果発表を現場に対して行うことは、現場と研修の両面に、プラスの効果を及ぼします。

「現場の中」(研修の外)から見ると、「研修の中身や効果に触れる場」すなわち雰囲気づくりにつながります。一方、「研修の中」から見ると、「最後にお披露目の場があるからがんばろう」というふうに、研修の中でのモチベーションにつながります。

このように、研修の成果発表を現場で行うことは、現場と研修をつなぐ橋になりえます。1つ目の「上司の過去の受講コメントを抜粋する」と同じく、人材育成担当者が日頃からアンテナを張って、研修を企画/設計する早い段階から埋め込みたいものです。

ひとりの勇気からみんなの雰囲気へ

研修転移を促進する重要な要素として、社内の雰囲気(き)というものを紹介しました。

雰囲気という目に見えないもの、すぐには変化させられないものだからこそ、人材育成担当者が日頃からアンテナを張っておき、「小さいながらも可能性のあること」を積み重ねることが大切でした。

研修の「中」において、受講者に手渡すべきものは、武器(き)であり、勇気(き)でした。

「乾き」を抱いて研修にやってきた受講者に手渡すべきは、「能書き」ではなく「武器」です。その研修が受講者にとって武器たりえているかは、「これならできそう」という「勇気」にあふれた受講者の心の声でもって判断できます。その研修では、武器を手渡し、勇気を抱いてもらえているでしょうか。

勇気の出る研修』より

人材育成担当者には、ひとりひとりの受講者が抱いた勇気を、みんなの雰囲気(き)へと広げる工夫していってほしいと思います。そういった雰囲気のなかから、次の受講者が現れるという好循環があれば、それは「良い研修」につながるのではないでしょうか。

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次回は、良い研修をつくるために「き」をつけることの最終回として、いま必要なことだけではなく、いずれ必要になることを教えるという考え方について書いてみたいと思います。


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