この優しい言葉は、様々な景色を見て、やってきた。反論や糾弾にイエスともノーとも言わず、ただ在るとして認識した。 優しい言葉は、轍をわざわざ見せつけない。「ところでさ」と、私の後ろに立って、更に奥の視線を寄越さないようにする。 けれども、私は背後に立たれるのが一等苦手なのだ。
ことばの戯れを目視すると、 目を背けたくなる。
口を付ける。それをする時、私は気が漫ろになっている。そこに意識はなく、ただぼんやりと意識を他方に飛ばし、見えない先に目を閉じる。それでも口から溢すことのない無意識はわたしの中でとぐろを巻いている。
好きなものを最後まで取っておく。別に悪いことではないと思う。フィルムを外す時の高揚感、それを誰かに強奪されるような心持ちを以って隠してしまうのはどうにも、虚しい気がする。取られてしまっても、それを喰らって嬉しそうにしている顔に、だろう、とふんぞりかえるくらいの好意を示したい。
映画鑑賞後のひとこま。 チーズケーキに添えられた生クリームを頬張ると やっぱりどうしても甘ったるくて。珈琲で呑み下してしまった。じわじわ侵蝕する悪心は、耐えられないとどうして苦い思いで掻き消したくなるのだろう。