十一人の賊軍
戊辰戦争の激動の中、旧幕府軍と新政府軍の戦火が交錯する日本の一角に、新発田藩が存在します。米沢藩や長岡藩と共に幕府を支援する勢力と新政府軍の圧力の板挟みになりながらも、新発田藩は機をうかがい、寝返りを狙う策を巡らしています。戦の火種が燃え広がりつつある中で、いつ衝突が起きてもおかしくない緊迫感が漂います。
舞台は新発田藩。阿部サダヲさんが演じる家老が、この物語に一筋縄ではいかない深みを与えています。この家老は若い藩主を操り、旧幕府軍をうまく丸め込もうと画策しますが、思いがけない失敗から切腹の危機に追い込まれることもあります。さらに、犯罪者たちを無罪放免と引き換えに砦の決死隊に送り込む一方で、実は彼ら全員を闇に葬ろうとする冷徹な計画も。彼の巧妙で冷酷な戦略に、観客は驚きと緊張感を味わいます。
時代劇といえば刀による斬り合いを想像しがちですが、この映画は火薬玉と鉄砲が飛び交う爆破劇が中心です。山場では次々と爆発が起こり、その壮大な噴煙は特撮ヒーローものを彷彿とさせ、迫力満点です。この爽快感をぜひ味わっていただきたいと思います。
ただし、この映画には近年の時代劇映画に多い、リアルな首斬りや人体切断の描写があり、傷跡のメイクも痛々しくも力強い迫力を醸し出しています。過酷な戦場に生きる者たちの悲壮感が、スクリーンを通して伝わってきます。
そして主演の山田孝之さん。ポスターやパンフレットで期待されるような活躍シーンはあまり見られず、むしろ彼は逃げ回り続け、隙あらば逃亡を図ろうとします。一方、ダブル主演の仲野太賀さんは普段のギャグパートを封印し、真剣な表情で戦場を駆け抜け、散っていきます。シリアスな一面に目を見張りつつ、その生き様に胸を打たれることでしょう。