果物に火をいれる
秋から冬にかけて、朝一の仕事は煮りんごをこしらえること。さっと洗って縦半分、そのあと3等分にカットしたら、芯と種をとる。
小鍋が湿る程度の水をいれて、切ったりんごを入れる。蓋をして、弱火にかける。15分のタイマーをセットして、あとは時間にまかせるだけ。
わたしの煮りんごは、砂糖も入らない。火を入れることで引き出される、果実の甘さを信じているからだ。あつあつを頬張るとほわっと体が温まる。頭も動きだし、冬の1日が始まる。朝の煮りんごはそんな存在だ。
果物に火を入れる
金柑(キンカン)
真冬に旬を迎える果実で、ビタミン豊富な柑橘類と言われている。ピンポン玉程度の大きさで、最大の特徴は皮ごと食べられること。柑橘類の中でも風邪対策、とりわけ喉のケアに効果があると言われている。
ただ、我が家は生のキンカンは苦手。どうにも皮の苦味が気になるらしく、いくら体に良いと聞いたところで食べづらいので、買っても余らせてしまう。
そんな時友人が「キンカンの甘露煮」をたくさん作ったと聞いた。ピンと来た。これならきっと苦味が和らいで、家族も食べやすい。早速友人に連絡をとって、手に入れてみた。
半分にカットしたキンカンが、シロップに浸かり、とろりとしている。スプーンで触れてみると、くにゃりと柔らかい。あの硬い皮の、生の状態からは考えられないほど繊細な姿に変わっている。そして口に運んでみた。皮の食感は残っているけど、違和感はなく、中の果肉と一体化している。最初に感じるのはシロップが染みこんだ甘さだ。それでも果実そのものの酸味と苦味が、後から追いかけてくるので、後から甘みだけが口に残ることがない。
家族からも、「キンカンは苦手だけど、これは美味しい!」と絶賛された。
果物に火を入れることは、手を入れること。作り手の「果実に秘めた可能性を引き出し、美味しく長く、食べてもらいたい」という想いが伝わってくるようだ。そこには体に良いとか栄養がどうとか言う知識は必要ない。
日常に温かい果物を入れて、芯から体を温めていこう。
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