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#4 商売より、お金よりたいせつなこと【サモアの想いで】
🌴以下の作品は2007年〜2010年の間に、米国に暮らしながらサモア暮らしのリフレクションを記したフォトエッセイ(全20篇)の転載です。サモアには97年に住み始めたのでこれを記したときはその10年後。そして、今さらに記したときから十数年が過ぎました。
🌺こうした経験からできあがっているのが今のわたしですから、いつ振り返ってもすべての時間が愛おしいです。
🌈こんな人生を与えてくれた夫に心より感謝💗
サモアには、どんな僻地の村にも小さな店がある。キオスクのような小屋で所狭しと調味料、食品、雑貨などが売られている。車を持たない人々にとっては、手近に最低限の生活用品が手に入りありがたい。経済的にけっして楽ではないサモアの人々は、必要なものを必要なときに要るだけ買う。タバコを1本、バンドエイドを1枚、飴玉1つといった買い方だ。お客のほとんどは顔馴染み。店での人と人とのふれあいは、私が小さかった頃の駄菓子屋を彷彿とさせた。
サモアで暮らしている間、子どもたちは学校帰りにお決まりの店に立ち寄り買い食いすることがささやかな楽しみであり、日課だった。小銭を握りしめアイスポップと呼ばれる氷菓子やバラ売りの飴、中国製の乾燥梅干を1つだけ買い、それを口にほおばりながら帰宅した。
ある時、息子はニコニコ顔で家路に着いた。
「今日は、友だちと3人で寄ったんだ。オレしかお金を持っていなかったけど、1人分のお金でちゃんと3個買えたんだよ」
おいおい、ちがう……。ギンギラギンの陽射しの下、友だちといっしょに冷たいアイスポップを食べながら下校し上機嫌の息子を眺めた。
自分の日課を果たすため、いつものとおり20セネ(約10円)でアイスポップを1つ買ったら、お店のお兄ちゃんは子どもの数分くれたのだ。分かち合いを基本とするサモア社会ではありがちな展開だ。
商売ととらえれば、そんなことをしていては成り立たないだろう。それでも、毎日顔を見せてくれる子どもたちがそろって笑顔になれることの方が大切だ。
翌日「いつもありがとうね」と店のお兄ちゃんに挨拶すると、“Fa'aSamoa! (これがサモア流さ!)”と苦笑いしながら私にもアイスポップをくれた。“人情”という言葉が浮かんだ。人に対する思いやりや慈しみのない社会は、いくら裕福でも寂しいものだ。激しい競争社会で計算高く生きているうちに、こうしたぬくもりをつい忘れてしまわないよう心に留めておきたい。
🌴今の声
このお兄ちゃんにはそれはすばらしい彫り物があるのです。デジタル時代以前なので画像がしょぼくてすいませんけど久しぶりにお見せしちゃいましょう。
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