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セント・トーマスはビーチで過ごす【カリブ海クルーズ 7】
マイアミポートからクルーズ船が旅立ってから5日目。米国バージン諸島のセント・トーマスに到着した。セント・トーマスと聞いてとわたしがいちばんに思い浮かぶのは、ジャズサックス奏者ソニー・ロリンズの超有名なジャズスタンダード曲だ。
それ以外なんの知識もない無知なわたしは今回のクルーズでの停泊がなければ、セント・トーマスが米国領バージンアイランド諸島の中の島ということを知らずにいた。
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ポートに着くと何台ものトラックを改造したタクシーが待っていた。乗用車と違い、一度にたくさん乗客を載せられる。1台いくらではなく、一人いくらかで目的地まで連れて行くので、クルーズ客相手のコスパの良いビジネスだ。
テリー夫妻によると、時間が限られているクルーズ客にとって、ここではビーチを楽しむぐらいしかないという。あらかじめビーチで過ごせる格好でタクシーに乗り込んだ。
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クルーズ船の停まるHavensight Cruise Pierから、トラック改造タクシーで20分ほどのところにあるマゲンズ湾(Magens Bay)に向かった。ビーチの入口で入場料を払ったあと、さらにビーチチェア2つとパラソル代として40ドルを支払った。
勝手知ったるテリーたちのおかげでわたしたちはかなり早くに到着したので良い場所に陣取ることができたが、遅く来た人々はビーチチェアにはありつけないほどの混みようだ。
白砂でとても美しい浜だけど、午後になるとビーチは人で溢れてまるで日本の海水浴場みたいだ。クルーズ船が停まらない日は、ひっそりしたローカルの人々の憩いの場なのだろうけど、海岸も海もクルーズから降りた家族連れで大賑わいだ。
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モーガン君は「きれいな魚がいる」と、パパといっしょに潜っては大はしゃぎ。なにせ、ミシガンには湖はあっても海はないのだから、そりゃ興奮するわな。親子で海に潜っている姿をビーチチェアで眺めていると、サモアにいたころ、毎週末ビーチで過ごしたころのことが蘇った。
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わたしにとっては、海で過ごすたび、サモア時代の家族での日々や、夫とよく行ったカリビアンリゾートの思い出が記憶の引き出しから飛び出てしまう。
人間ウォッチングは楽しいけど、わたしもQPさんも、人混みが苦手な人種だ。ロマンチックなビーチを楽しむにはほど遠い賑やかさなので、二人並んでビーチチェアに横たわり海を眺めたり、ゲッコーと遊んだりしているとそのうち、スコールが来て美しい虹が出た。
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ビーチでじゅうぶんまったりできたあと、混雑前に早めに船に戻ることにした。港周辺にはこれまたたくさんの土産屋が並んでいる。何軒か覗きながらのらりくらりし、セント・トーマスの記念にはそれぞれが気に入ったTシャツを購入。
船に戻って、ディナーのあとは二人でピアノ・バーに直行し、大人の時間を楽しむことにした。
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しかし、クルーズ船の夜は長い。夜の10時も過ぎるとまたまたのパーティータイム。この日のテーマは80's Grow Party. で、80年代の音楽と、蛍光ライトのキラキラパーティ。
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船にはゲストだけでなく、こうして遊ばせてくれるクルーもたくさん乗っている。レストラン、クリーニング、イベント、ダンサー、ミュージシャン、料理人、バーテンダー……と1500人以上のクルーが、ゲストを楽しませようと働いているわけだ。
お客のほとんどがアメリカ人だというのにクルーはインドネシア、フィリピン、ミャンマー……とアジアの国々の人が多い。スタッフの名札に出身国も載っているのでわかる。特に多かったのがインドネシア人とフィリピン人でほんとうによく働く。ちなみに日本人スタッフは見なかった。
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米国人ゲストの半分ぐらいがオーバーウェイト体型だというのに、船上のクルーたちはみなシュッとして、笑顔でフレンドリーでよく動きよく働く。なぜ、米国の会社でゲストも米国人ばかりなのに働いている人々はみなアジア系外国人ばかりなのか?と不思議になる。
カジュアルなクルーズ船だけに、乗船客はバラエティに飛んでいる。バフェでの並び方、取り方、食べ方、残し方を見ていても、上品な人たちばかりではない。😅
パーティのあとで部屋に戻るときに、カーペット敷きの廊下にソフトクリームがべちょべちょになって落ちているのをみつけたアジア人クルーが黙々と掃除をはじめた。
それを見たQPさん。
「アメリカ人の行儀の悪さに心の中でウンザリしているだろうね。落としたらその場で拾いゴミ箱に捨てるぐらいのことは普通はするよね。アメリカ人としてモラルの低さが恥ずかしくなるよ」と呆れ顔。
「お行儀もマナーも気にしないけどパーティでのノリノリ方はよくご存知よね」と返すわたしの言葉に笑った。
さて、あとは2日かけてマイアミに戻る。
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