何故大人になってベストが出たのか
自分でいうのもなんですが…
私は中学生までは地元ではそこそこ速かった。
お世辞にも練習熱心ではなかったものの
タイムも止まる事なくベストは出続けていた。
しかしながら高校になり得意の50m自由形で
ベストが二年間でなかった…
大学に入っても三年間まぁそれなりに熱心に
練習には励んだものの…
JOを切ってから0.2秒しか速くならなかった。
秒速2.0m/秒即ち50mを25.00の速度で泳ぐと
0.01秒は2cm。0.1秒は20cmだから…40cm
更に私は高校から大学で水泳を引退するまで
ほぼ毎日のように泳いでいたが…
6年で約1mしか速く泳げるようにならなかった
競泳というスポーツは幸か不幸か
他のスポーツに比べて自然の影響を受けないので
タイムで明確に成長を感じ取れるものの…
明確過ぎる残酷さもあるスポーツだ。
努力時間に対してリターンがあまりに小さい…
何て考えてしまう事もこれまで多々あった。
成長曲線は初心者は急激な角度で上昇するも
段々経験値が増えてくると成長角度も浅くなる。
とは言え八尋の現役時代を振り返ると
コーチ八尋が思う事は多々ある…
なぜ八尋は練習をしても速くならなかったのか
そしてなぜ大人になってベストが出たのか…
ちなみに私のベストタイムは…
50m自由形 長水路 25.03 (28歳) ロングジョン
50m自由形 短水路 24.12 (38歳) 高速水着
水着が進歩した影響は多いにあるものの
現役を辞めてからエンジョイスイマーとして
泳いでいる時の方が実際速くなっている。
またビーフィン(2足フィン)では40歳過ぎても
ベストが出た経験がある。
あまり大きな声では言えないが
別に前よりも沢山練習していたわけでもない。
正直いまでも、私は毎日泳いでいなかったのに
なぜ速く泳げるようになったか…
科学的根拠で説明ができない。
水泳コーチとしてこれは致命傷だ。
「練習を休んだら速くなれない!」って…
お前がいうのかよ!と突っ込まれてしまう。
しかし少年期と比べて明らかに違う点は…
❶以前よりも泳ぎが上達した事
❷ベスト必須の義務感がない事
❸練習のポイントが変わった事
他にも色々あるかもしれないけれども
今回はこの三つに絞って考察してみようと思う。
❶以前よりも泳ぎが上達した事
人に泳ぎを教えるようになると
自分も上達した実感を感じた事が以前もあった。
中学生の時の水泳部での指導
高校生の時の水泳部での指導
その時よりも今の方が圧倒的に
水泳の知識や経験、失敗例や成功例などなど…
以前とは比べものにならないほど
私はどうやったら速く泳げるかという引出しが
増えたのは間違いない。
コーチ留学した時にアメリカのチームでみた
ストレートアームで泳ぐ「カヤッククロール」…
カッコよくて真似してみたら、私も速くなった!
今では昔に比べてもSNSやYouTubeなどで
トップレベルの選手の泳ぎやコーチの理論を
誰でも知る事ができる。
北島康介選手が金メダルを取ったら
その泳ぎを真似して日本のレベルが上がった様に
研究すれば泳ぎも上達する。
ゆえに八尋少年よ。
君ももっと速い選手たちの泳ぎや考え方に
早く興味を持てばよかったのにね…
残念🤦🏻♂️
❷ベスト必須の義務感がない事
昔は出る試合、出るレース大小関係なく全てで…
ベストを出したかった!
何を馬鹿な事を言ってるんだい、八尋コーチ。
みんなベストを出す為に練習しているんだ。
その為に辛い事ややりたい事を我慢して
周りが遊んでいても1日も惜しまずに練習する。
ベストを常に出したいと思う事は当たり前の事。
それに対しては全く異論はないけれど…
私がベストを出す様になったエンジョイ期では
私はその想いを全て捨てました。
毎回毎回うまくいかなくてもここぞという時に
出したいタイムがでればそれでいい。
要するに「捨てレース」をする様になったのだ。
そう考えるようになってからは肩の荷が下りて
冷静に物事を見れるようになった。
「試合」と「大会」を分けて考えるようになって
試合では試してトライ&エラーを繰り返しながら
大会に向けて調整していく。
今は動画を撮って後から検証作業ができるのは
昔とは全く違う成功要素だと思う。
意外と完璧に泳げたと思うレースよりも
粗がある方が修正点が見えてきてワクワクする。
失敗と修正を繰り返して大会で80点を目指す。
120点なんて目指してもろくな事はない。
80点で満足できる準備をする事が大切だと
今頃になって気づいた。
ゆえに八尋少年よ。
君はもっと自分自身に興味を持つべきだった。
上手くいかないからって現実から目を背けちゃ…
ダメよ、ダメダメ。
残念🤦🏻♂️
❸練習のポイントが変わった事
昔はとにかくスプリンターであれ何であれ
5,000mぐらい泳ぐのは最低限の練習…
練習をしています、何て胸を張って言うなら
それぐらいは朝飯前にやれるぐらいじゃないと
水泳選手としては半人前だよね〜
今でもそう思っている人は沢山いると思う。
現役を引退してもまたあれぐらいやらないと
レースに出るのなんておこがましい!なんて…
そんなこと言っていたら、まぁほとんどの
競泳上がりの人ならやりたいとも思わないだろう。
しかしながら、私はまぁ図々しくも
昔ほど練習もせずにしてベストを出してしまった。
これはあまりコーチが自慢げに言う事ではないのは
重々承知していますが…
これは紛れも無い事実です!
ただ私も全く何もやっていなかったわけではない。
今までで言う「当たり前の練習」をしなかった…
じゃあ、何をしたのか。
ポイントはただ一つ。
「レース速度で泳ぐ練習」を圧倒的に増やして
ダラダラ長く泳ぐのをやめました。
レースでの速度を出して泳ぐには
その速度でしかわからない技術が必ずある。
そしてこれまでで一番の効果的だと思う練習は…
レースです。
昔に比べてレースの本数を増やしました。
大事な大会があれば、逆算して多くレースを組む。
それが一番効果的な練習だと確信しました。
あの緊張感とリアルなタイム。
映像さえあればもう完璧です。
スタートも、とにかくカッコよく飛びたいので
それは何度も練習しました。好きなので…
ゆえに八尋少年よ。
君はどうやったらもっと速くなれるか
頭使って練習していれば速く泳げたのにねぇ…
上達を実感する事が一番楽しいのに。
残念🤦🏻♂️