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2022年に読んだ本、119冊を紹介します

2022年は、119冊の本を読みました。いろんな本があり、大変勉強になりました。今年もいろいろ読んでいきたいです。

彼らはどこにいるのか: 地球外知的生命をめぐる最新科学
キース・クーパー

地球外の生命体を探す歴史を綴る本。書いてある内容はさほど難しくはないものの、すらすらと読めるといった類のものでもないです。地球外の生命体に思いを馳せるほど、逆に地球人たるわれわれ人間への理解が深まっていくのも面白いですね。

数学に魅せられて、科学を見失う――物理学と「美しさ」の罠
ザビーネ・ホッセンフェルダー

物理学者による、理論物理学に対する考察と批判。理論物理学が、実証不能な領域においては、物理学者の「美意識(=数学的な美)」を求める、ということに対する批判など。まあ、感覚的には、「美しいもの=シンプルなもの」であってほしいという願望があることは理解できるものの、自然法則がシンプルなものかというと、またそれは別の問題ですね。本題からは逸れますが、「美」となんなのか、というのを考えさせられますね。

創作する遺伝子 僕が愛したMEMEたち
小島 秀夫

人気ゲームシリーズ「メタルギア」の生みの親である小島秀夫によるブックガイド。と思いきや、映画もあり、ウォークマンあり、という感じで結構なんでもあり。あらゆる創作物にリスペクトがあり、貪欲に取り込んでいくあたりがさすがですね。懐かしいものに浸ることがない。

スペース・コロニー 宇宙で暮らす方法
向井千秋,東京理科大学スペース・コロニー研究センター

普通に暮らしていたらなかなか知り得ない、スペースコロニーでの暮らしや、それを支えている技術の概論がつかめる本。読めば読むほど、人間は地球表面上で暮らすようにできているのであり、宇宙空間で暮らすというのは、さまざまな「不自然さ」が要求されるのだと思います。個人的には、あんまり宇宙に行きたいとは思わないですね。

越えていく人——南米、日系の若者たちをたずねて
神里 雄大

ペルー生まれの著者が、南米を旅して「日系人」にインタビューしていく旅エッセイ。エッセイとして考えると面白くはあるが、日系人について掘り下げて見たい人には、著者の踏み込みが足りなさすぎてかなり不満を持ちます。日本が移民を受け入れる受け入れないの議論はありますが、そもそも「移民として南米にいった日本人がいる」ということを、もっと知るべきだと思いました。

ゆるく考える
東浩紀

東浩紀のコラム集。著名なネット言論の人ではあるが、読むのは初めてです。かなり読みやすい文章ではあったものの、それは連載の性質によるものかもしれません。専門は哲学とのことなのだけれど、抽象的なテーマをこねくり回すよりは、現実的に起きている問題を哲学的アプローチで分析する、というのも面白いのではないか、と思いました。文章としては悪くはなかったものの、また似たようなコラム集を読みたいかと言われると、別にそうでもないです。

同志少女よ、敵を撃て
逢坂 冬馬

第二次世界大戦のロシアを舞台にした、女スナイパー部隊の小説。表紙がなかなか印象的で、タイトルとも相まって、思わず手に取ってしまう感じです。ロシア人が主人公で、舞台が第二次世界大戦なのでハードな雰囲気だが、ストーリーは淡々としていて、ところどころライトノベルのような軽いパートもあります。ちょっと背景の壮絶さと比較するとストーリーに重みがなく、一言でいうと世界大戦中のロシアを舞台にした必然性が感じられませんでした。これを読んだからといって、ロシアのスナイパーの精神性が理解できたとも思えません。結構売れている本のようです。

ほったらかし投資術 インデックス運用実践ガイド
山崎元,水瀬ケンイチ

投資初心者のためのインデックスファンド運用術。「投資で大きく儲けよう!」という人向けではなく、「投資にそこまで時間を使ったり、リスクを負いたくないが、将来のために資産運用したい」と考える人向け。目的が、インデックスファンドを使って基本的に放置、というところなので、肩肘張らずにいけるかと。とはいえ、この本だけでなく、実際に自分でファンドをみて、分析することは必要だと思います。

ポケモン・ストーリー
畠山 けんじ,久保 雅一

ポケモンの誕生から、ブレイク後までをまとめた書籍。ポケモンファンはもちろん、当時を生きていた人なら誰が読んでも楽しめるのではないかと思います。ブレイク後の話ももちろん面白かったけれど、誕生前のアイデアや、開発の行き詰まりなどはなかなかリアルでとても面白かったです。難点は、非常に長いというところでしょうか。でもスラスラ読めます。

教室が、ひとりになるまで
浅倉 秋成

特殊能力の設定ありのミステリ小説。これを本格とはちょっと呼べない気はするものの、推理要素は高めです。「何を」推理するのか? のポイントがちょっとユニークで面白かったように思います。ミステリ部分がメインパートなので、犯行の動機やその背景にはほぼ共感できず。

真夜中乙女戦争
F

作者曰く、「エッセイと小説の中間にあるもの」。大学生の独白と、セリフの掛け合いで物語が進行していくも、ストーリー性は薄いです。現実には、こんなめんどくさいやつに絡んでくれる人などいないと思うのだけれど、掛け合いが成立してしまうのはフィクションだからかでしょうか。やはり、大学生が読むと共感できるところはあるのかもしれません。

すばらしい人体――あなたの体をめぐる知的冒険
山本 健人

「人体」という小宇宙に関する、興味深いtipsを医学従事者の視点でまとめたもの。ひとつひとつは素人でもわかりやすい「医学ネタ」という感じですが、もっと知りたい、と思わせられます。巻末に読書案内がある点は非常にGOOD。興味のある人は、さらに深堀りできる仕様になっています。

シン・ニホン AI×データ時代における日本の再生と人材育成
安宅和人

よくも悪くもコンサル系の人が書いた本だなあ、と。内容として、決して意味がないわけではないですが、これを読んだからといってどう行動すればいいのか? がさっぱりわからない。データはあるものの、変なところで主観が入りまくっているので、客観的に読み解くのも難しい本です。

アラフォーウーバーイーツ配達員ヘロヘロ日記
渡辺 雅史

ウーバーイーツの配達員の仕事内容、実態がわかる本。健康のためにチャリをこぐのは確かによさそうだけど、苦労も多そうです。しかし、レンタルサイクルで配達してるそうですが、それってコストパフォーマンス的にどうなんですかね? 著者は貯金がないことを本文でも言及してますが、申し訳ないですけどそういう計画性のなさがいろんなところで人生を苦しくしていそうです。

督促OL 修行日記
榎本まみ

カード会社の督促の部門ではたらく方のお話。ちょっと軽い感じで書かれていますが、精神的な負荷はものすごくかかるはずで、それを耐え抜いた精神力は驚嘆に値します。しかし、その修羅場を抜けた方の経験談は、示唆に富んでいます。

人工知能はどのようにして 「名人」を超えたのか?―――最強の将棋AIポナンザの開発者が教える機械学習・深層学習・強化学習の本質
山本 一成

いまとは多少、AIの最新事情が違う部分もありますが、根底の考え方は同じだと思います。将棋という限られた分野ではありますが、今後、さまざまな分野に応用されていくのでしょう。

amazonの絶対思考 常に、「普通という基準」を作り変える
星 健一

著者は元アマゾンで勤務していたようですが、Amazonのパンフレットのような薄い内容の本。こんな内容で出版するのはいかがなものでしょうか?

未必のマクベス
早瀬 耕

寡筆のミステリ作家・早瀬耕。アジアの香りのするなかなか雰囲気のいい小説で、面白く読めたものの、プロットはやや荒唐無稽で、入り込めなかったところがありました。島耕作シリーズとか好きな人は、雰囲気が味わえるかもしれません。

コンピューターは人のように話せるか?―話すこと・聞くことの科学
トレヴァー・コックス

表題の通り、「コンピュータと言語」に関するパートは一部で、多くは「話すこと」に対する言語学的なアプローチ。AIパートに期待していると肩透かしを食います。

ライティングの哲学 書けない悩みのための執筆論
千葉雅也,山内朋樹,読書猿,瀬下翔太

さらっと面白く読めるが、あまりにも内容が薄いのでは。ネットのちょっとした記事のようなレベルです。

戦略がすべて
瀧本 哲史

生きていくための戦略論。一部内容が古くなっていて、やや実態からはずれてきているが、大枠はいまでも通用すると思います。

点・線・面
隈 研吾

建築には明るくないが、興味深く読めました。「コンクリートからの解放」というテーマはなるほどと思いました。

将棋記者が迫る 棋士の勝負哲学
朝日新聞記者 村瀬信也

他のコメントにもある通り、ひとつひとつの記事は短い。しかし、棋士の基本的な情報を抑えられるといった感じです。雑誌的な感じで気楽に読むと良いと思います。

うつ病九段 プロ棋士が将棋を失くした一年間
先崎 学

将棋棋士を知っていると、また違ったように見えます。しかし、発症から寛解までの期間が非常に短いように感じます。いわゆる「重度」といっても、そこまで沼に足を突っ込んだ感じでもないのでしょう。

現代ロシアの軍事戦略
小泉悠

ロシアのウクライナ侵攻を受け、気になったので読んでみました。ここで書かれていることは、侵攻後の目線で見ても言えるのでしょうか?

クララとお日さま
カズオ イシグロ

ノーベル文学賞を受賞したカズオイシグロの小説。面白かったです。でも、思っていたほどわかりやすい話でもなかった。いい意味で、「こういう話になるのかな」というのが裏切られた感じです。また、SFというには科学的な根拠が薄いように感じたので、広い意味では児童文学の延長で書かれているような感じがしました。

サイエンス・インポッシブル SF世界は実現可能か
ミチオ・カク

ミチオ・カク先生の本はワクワクします。

好きなようにしてください
楠木 建

再読。定期的に読み返したくなります。「働くこと」について、自分の軸のひとつになっています。

自転しながら公転する
山本文緒

面白い。さすがは山本文緒。カラッとした話ではなく、むしろジメジメした展開ですが、そういった重苦しい雰囲気を描くのがうまい。脱帽です。

挑戦 常識のブレーキをはずせ
藤井 聡太,山中 伸弥

面白かったものの、さすがに内容が薄い気がした。山中先生の話は、ほかの著書でも言われていることで、特に真新しいものはなし。もっと藤井聡太の話が聞きたかった。思うんですが、山中先生って、そこまで知的な感じがしないのが正直なところです。

ブラック・チェンバー・ミュージック
阿部 和重

やくざに狙われながら、とある論文を冴えない男が探し出す話。作者は純文学の人だと思っていたのですが、こういうエンタメも書けるんですね。かなりおもしろかったです。題材や座組みは近年の村上龍、ノリは伊坂幸太郎みたいな感じでした。

ITエンジニアのための企画力と企画書の教科書
吉政 忠志

当方はエンジニアではないものの、どういう企画が通るのかについて知見を深めることができました。しかし、なかなか簡単なことではないですね。

外資系コンサルが教えるプロジェクトマネジメント
山口周

面白かったですが、技術の話というよりは心構え的な話が多かったように思います。

推し、燃ゆ
宇佐見りん

芥川賞受賞作。単純に「推し活」の話なのかと思っていましたが、主人公はどうも発達障害らしく、後半にいくにつれ少しずつしんどくなってきます。こんなに切実に「推し」を推すのが多数派なんでしょうか?

心を鍛える

タイトルは「心を鍛える」ですが、藤田晋とホリエモンの半生を振り返り、どう乗り越えていくかを語っている本。大部分はこれまで出てきた話だが、一部、知らない話もありました。ほとんどの人は、この二人が経験した負荷よりも軽いはずなので、勇気づけられる部分はあるのではないか。

営業 野村證券伝説の営業マンの「仮説思考」とノウハウのすべて
冨田和成

ゴリゴリの営業ノウハウが学べる本。まあ、野村証券の営業だったのなら、これぐらいやることが必要かもしれませんね。ただ、こうでもしないと成績があがらない場合、仕事そのものにどれぐらい価値があるのか? とも思いますが。

仕事休んでうつ地獄に行ってきた
丸岡いずみ

うつの症状だが、確かに大変そうに思えるものの、寛解するまでの期間がかなり短いように感じます。症状の重さと回復の速さは必ずしも比例しないのでしょうか?

広告コピーってこう書くんだ!読本
谷山雅計

広告コピーの本質について書かれた本。コピーライター以外の人間でも参考になります。良いコピーとは、実は奇を衒うものではなく、大衆の潜在的にあるものを引き出すものだという主張には納得です。

探偵の現場
岡田 真弓

探偵社を運営する代表による、探偵の実態について書かれた本。7割が不倫調査だというのは納得ですが、行方不明者調査は非常に精神的にも負荷が大きいような。いろんな修羅場があるので、そういうのが好きな人は天職かも……と思ったり。大変だとは思いますが。

眠れなくなるほど面白い 図解 たんぱく質の話

普通に眠れましたが、面白かったです。全編にわたって、たんぱく質の重要性をひたすら説得されます。

仕事の説明書〜あなたは今どんなゲームをしているのか〜
田宮 直人,西山 悠太朗

世の中に数多あるビジネス書をまとめたような本。知っている概念については納得感があるが、初めてこれを読んでもよく理解できないかもしれません。ゲーミフィケーションに特化した内容のほうがよかったかもしれません。

将棋の子
大崎善生

将棋棋士を目指した奨励会員が、夢破れたのちどのような人生を歩んでいるかを書いた本。想像以上に壮絶な本でした。しかし、落ちるところまで落ちてしまう人は、むしろ将棋と出会わなければ、どういう人生になっていたのだろうか、とも考えます。「将棋は何も奪わず、与えるだけ」というのは真理だと思います。

広告コピーってこう書くんだ! 相談室
谷山雅計

 実際にどのようにコピーが作られるのかが見えてよかったです。思った以上に、手慣れた人であっても、試行錯誤の連続なんですね。こりゃ大変だ。

手書きの戦略論 「人を動かす」7つのコミュニケーション戦略
磯部光毅

マーケティングの手法について書かれた本。詳しい人には物足りないだろうし、想定読者はどういう人かな? と思いました。

多浪で東大に合格してわかった 本当にやるべき勉強法
東京大学多浪交流会

漫画「ドラゴン桜」はフィクションだが、こちらは本物。ところで、現役で入る人と浪人して入る人は、やっぱり入学後のカースト的なのって影響したりするんでしょうか?

会社は2年で辞めていい
山崎元

転職に関することを、著者自身の経験も交えながら語っている本。著者は金融関係のようなので、「2年で」というのはあくまでも金融の業界だから、というのもあるかもしれません。どんな経営者や経済の専門家も10年先のことはわからず「数字的な見通しが立つのは2年先まで」というのは納得。

将棋界の不思議な仕組み プロ棋士という仕事
青野 照市

将棋ファン向け。将棋連盟の仕組みなどがわかったことがよかったです。

発達障害 生きづらさを抱える少数派の「種族」たち
本田 秀夫

発達障害、ADHDなどについて書かれた本。発達障害の当事者よりも、その周囲の人が読むべきかな、と思いました。もっというなら、意外と身近なところに発達障害の人はいる、ということを知る意味でも、広く読んでほしい本と思いました。

発達障害の僕が「食える人」に変わった すごい仕事術
借金玉

軽快な文章が面白い借金玉氏。これだけライクハックができるメタ認知能力はすごいと思います。しかし、あとがきにも書かれている通り、すべての人がこの考え方でうまくいくわけではない、ということに対しての留意は必要。

世界から戦争がなくならない本当の理由
池上彰

戦争に関する情報をまとめた本。タイトルは出版社の人がつけたんでしょうか、戦争に関する情報はよくまとまっていましたが、タイトルにあるような根源的な問いに答えているようには思えませんでした。

決断力
羽生 善治

時代が変わり、特にコンピュータ将棋のあたりの記述は現在とは違うものがありますが、将棋の本質についてわかった気がしました。羽生全盛の頃に書かれたものと考えると、かなり謙虚な内容のように感じます。

脳と人工知能をつないだら、人間の能力はどこまで拡張できるのか 脳AI融合の最前線
紺野大地,池谷裕二

脳と人工知能について最新のトピックをまとめたもの。そこまで真新しい情報はなかったですが、イーロンマスクが進めているニューロリンクのプロジェクトの内容が知れたのは収穫でした。

増補 頭脳勝負 ──将棋の世界
渡辺明

渡辺明による、棋士について書かれた本。前半は将棋というものを俯瞰的に語っていて面白いですが、後半は対象読者がちょっとわかりづらいものを感じました。youtubeなどで動的に解説するとわかりやすいかも? という分野ではあります。

コンサル一年目が学ぶこと
大石哲之

書いてあることは平凡なことばかりではあったものの、それだけに重要なことなのだろう、と思います。この本に書かれていたことではないが、自分は「上司も顧客」と考えると仕事がうまくいった経験があります。

つまらない住宅地のすべての家
津村 記久子

平凡な住宅地が、ある出来事を境にほんのり団結していく物語。派手な事件は起きない分、住民たちのちょっとリアルなやりとりが描写されています。ちょっと登場人物が多いので、掴むのが大変でした。また、横領した犯人が逃亡したからといって、そこまで警戒するものだろうか? という部分にひっかかりが消えず。結構人気があるようですが、個人的にはあまり楽しめませんでした。

書く習慣
いしかわゆき

タイトルの通り、noteやSNSなどに「書く習慣」について書かれた本。けっこういろんなところでよく見ます。自分がターゲット読者ではなかったのかもしれないが、だいぶ次元の低い話に感じました。著者は、「感情や感想を共有する」手段としてしか、「書く」ことを利用しないのでしょう。

未来を実装する――テクノロジーで社会を変革する4つの原則
馬田隆明

テクノロジーの発展と社会の発展について書かれた本。そこまで真新しい話題ではありませんが、テクノロジーが発展し、社会に受け入れられるためには、社会そのものが発展する必要があるのだな、と。

最相葉月仕事の手帳
最相 葉月

ノンフィクションライターの仕事の心得。実用書というよりは、散文の集まり。たぶん感覚的なものだと思うのだけれど、この著者の文章がなぜかちょっと自分には合いませんでした。

AIの壁 人間の知性を問いなおす
養老 孟司

養老孟司のAIに関する対談集。養老孟司はAIに関しては全体的には否定的ですが、もちろんある程度は可能性を認めていることも語っています。ただひとつ思うのは、深層学習をはじめとする最先端のAIは極めて人間の脳の仕組みに近づいており、「人間らしいAI」が生まれたときはどうなのだろう、ということです。

AI新生
スチュアート・ラッセル

AIが発達すればするほど、深層学習を中心とする思考の仕組みは人間に近づいていくが、根本の「目的がない」という点で、違いが浮き彫りになっていく気がします。

神は詳細に宿る
養老孟司

養老孟司のエッセイ。自然に回帰せよ、というのではなく、ときには都会を離れよ、というメッセージはわかりやすくていいですね。

「自分」の壁
養老孟司

養老孟司先生のエッセイ。だいたいいつもと同じことが書かれていますが、「一人称・二人称・三人称の死」は繰り返しいろんなところで語られていますね。

フォン・ノイマンの哲学 人間のフリをした悪魔
高橋昌一郎

フォン・ノイマンの生涯について簡潔にまとめた本。彼がどういうことをした人なのか、という概要について知ることができます。もちろん、一冊で語り切れるようなことではないものの、実際の彼の研究内容についてはかなりあっさりめなでした。あと、天才なのはいいのだけれど、人のことを「悪魔」と評するのはどうなんでしょうか?

果糖中毒――19億人が太り過ぎの世界はどのように生まれたのか?
ロバート・H・ラスティグ

酒、タバコ、ギャンブルなどは依存症になりやすく、社会的にも問題視されているが、「果糖」はまだほとんどメスの入っていない分野だと思います。特に、貧困層に肥満の人が多いという現状は、この実態を色濃く反映しています。また時間をおいて読み直したい本。

遊びと人間
ロジェ カイヨワ

「あそび」の本質を書いた本。時代は変わっても、遊びの本質は古来から変わらないのだな、と思った。しかし、既存の概念の組み合わせにより、昔にはなかった娯楽も増えているかもしれません。むしろ、新しく加わった要素はなんだろうか? と考えます。

NHK出版 学びのきほん 「読む」って、どんなこと?
高橋 源一郎

よく「行間を読む」といいますが、どういうことなのか。たとえ、そこに何も書かれていなかったとしても、どういう意図でそうしているのかを「読む」ことはできます。曲の歌詞などの解釈も含めて、「読む」とは、ほぼ生きることそのものですね。

食の歴史
ジャック・アタリ

かなり読み応えのある本でした。人類と食との関わりを、栄養面・文化面から整理した本。特に、古代から中世にかけては、貴族が邸宅で会食をするのを楽しんだが、近代になってからレストランになっていった、という移り変わりなどが面白かったです。それに対して現代は「会食」という文化が失われつつある、と。

虫眼とアニ眼
養老 孟司,宮崎 駿

養老孟司と宮崎駿の対談集。普段からお二人がおっしゃっていることそのままですね。宮崎駿が「子どものためにアニメをつくれ」と普段から言っているけれど、スタジオの若い人はほとんど子どもがいない、と言う部分が印象に残りました。

mRNAワクチンの衝撃: コロナ制圧と医療の未来
ジョー・ミラー,エズレム・テュレジ,ウール・シャヒン

mRNAワクチン開発の舞台裏。開発スピードはさることながら、ファイザーとの提携など、見どころ満載です。こういうのが記録として残るのはとても意義がありますね。読み応えという点では、今年イチかもしれません。

つながり 社会的ネットワークの驚くべき力
ニコラス・A・クリスタキス,ジェイムズ・H・ファウラー

人々の「つながり」をテーマにしつつ、まだSNSがあまり普及していない時代だからこそ、本質を捉えている気がします。

世界一やさしい「やりたいこと」の見つけ方 人生のモヤモヤから解放される自己理解メソッド
八木 仁平

やりたいことができる時代って、豊かでないとできませんよね。

「気がつきすぎて疲れる」が驚くほどなくなる 「繊細さん」の本
武田友紀

HSP気質の人のための手引書。ひとつ思ったのが、ただ単に繊細である、というだけではそこまで問題は生じない気がします。ここから、精神疾患などを伴うと、社会的に生きて行くのが厳しくなっていくのではないでしょうか。

皮膚、人間のすべてを語る――万能の臓器と巡る10章
モンティ・ライマン

皮膚は一般的には関心が高く、アンチエイジングなどでも高額のお金を払う人がたくさんいるが、医学的にはあまり重視されていなかったというのは面白いです。それにしても、日々接触し、当たり前にそこにあるだけに、それがどれだけ高性能なのか、ということについてはあまり考えたことがありませんでした。

世界2.0 メタバースの歩き方と創り方
佐藤 航陽

この人、かなりうさんくさいです。

そろそろ会社辞めようかなと思っている人に、一人でも食べていける知識をシェアしようじゃないか
山口 揚平

いつでも独立できると思えば、少しは楽になれるような気がします。

武器としての図で考える習慣: 「抽象化思考」のレッスン
平井 孝志

まあ、よくある軽いビジネス書です。

ビジネス教養 宗教と世界

youtubeで島田先生を知り、とりあえず読んでみました。知っていることは多かったですが、世界の宗教についてザックリとまとめられており、わかりやすくてとてもよかったです。

日本人の神道: 神・祭祀・神社の謎を解く
島田 裕巳

面白かった。日本の神道は、西洋的な意味で「宗教」ではなく、土着の文化や伝承そのものなのだと思います。その意味で「神を祀る・神に祈る」ことの意味が、単に利益を得るといったものではなく、飢饉の回避のためにやっていたという視点は、わかっていたものの新鮮でした。伊勢神宮の天照大神も、一種の「畏れ」の対象として、京都から離れた伊勢に祀られていた、というのも納得。

なぜ星付きシェフの僕がサイゼリヤでバイトするのか? 偏差値37のバカが見つけた必勝法
村山 太一

星つきシェフがサイゼでバイトしている、という記事をみかけたため、このことは知っており、書籍もあるのかと思い拝読。芸術作品と作業効率性はなかなか相容れないものと思われがちですが、たとえば漫画制作なども芸術的側面と、生産的な側面があるわけで、その両極端なものを学ぶことによって見えてくるものはあるのではないかと思いました。

マーケターのように生きろ: 「あなたが必要だ」と言われ続ける人の思考と行動
井上 大輔

マーケターの方による、仕事への考え方。するすると読める反面、あまり記憶に残らなかったのはなぜでしょうか? 僕には、この本は必要ではなかったのかもしれません。

新宗教を問う: 近代日本人と救いの信仰
島薗 進

新宗教について歴史的な経緯を踏まえてまとめられた本。戦後、「新宗教ブーム」とも言われる時期があったらしく、現代の新宗教の多くはその時代に誕生したようです。何か、宗教的な空白地帯というか、そういうものが生まれると、変なものがいろいろとできてくるのかもしれません。宗教は、いつの時代も欠かせないものなのでしょうか。

なぜ君たちは就活になるとみんな同じようなことばかりしゃべりだすのか。
吉田 将英 保持 壮太郎 西井 美保子 笹木 隆之 小島 雄一郎 大来 優

就活本が似たようなことばかり書き出すのはなぜなんでしょうか?

将棋400年史
野間俊克

江戸時代初期からの将棋界についてまとめた本。将棋の本は数多くありますが、大橋宗桂からまとめている本は意外と少ないので面白く読めました。ただ、概要をざっと掴む程度の内容ではありました。

アウトサイダー・アート入門
椹木 野衣

アウトサイダーアートについてまとめられた本。アウトサイダーアートといえばヘンリーダーガーぐらいしか知りませんでしたが、いろんなアーティストがいるもんだと思いました。芸術の教育を受けていない芸術家はたくさんいそうですが、発表を前提にしていないアーティストはたしかにアウトサイダーアートと呼べるかもしれません。

性格とは何か-より良く生きるための心理学
小塩 真司

性格について体系的に書かれている本。……が、まだ科学で扱うにはふわっとしすぎているのか、トリビア的なネタの集合体に思えました。

職業、女流棋士
香川 愛生

香川愛生による、女流棋士の紹介。あんまり好きになれません。

不屈の棋士
大川 慎太郎

ソフトがプロ棋士に勝ち始めた時代に行われた、プロ棋士へのインタビュー録。まだ藤井聡太が登場する前で、「これから将棋界はどうなるのか」といった不安と恐怖が言外に読み取れます。佐藤康光九段のように、ソフト使用に否定的な棋士のほうが多いのかと思いましたが、実際は勝負師の側面もあり、「勝つためにはなんでもする」というのが棋士の本質なのでしょう。本当の手の内は、誰も明かしたくないのかもしれません。

シンクタンクとは何か-政策起業力の時代
船橋 洋一

シンクタンクという存在に対して、漫然と「コンサルのようなもの」だと考えていましたが、本質は民間による政策立案や分析にあるのだといいます。その視点は持っていなかったので勉強になりました。ただし、書籍として見た場合、非常にわかりにくいものではあった。

棋士とAI――アルファ碁から始まった未来
王銘〓(おう めいえん)

将棋AIに関する本はこれまで数多く読んできましたが、囲碁AIはあまり詳しくなく、ちょっと毛色が違うように感じました。なんというか、将棋のほうがもっと「先を見通す」ことが重視されているような気がするが、囲碁のほうが言語化が難しい分野なのかなと思いました。だからこそ、AIの感覚を身につけたAIネイティブの世代が出てくると、強いのかな、と思いました。

シン・エヴァンゲリオン論
藤田直哉

エヴァを評価する層は、エヴァと自分を同質化することでしか語れないのか、と思います。

探究する精神 職業としての基礎科学
大栗 博司

大栗先生は一流の科学者でありながら、一般向けの本も多く著されています。科学者自身が科学とどう向き合ってきたのか、と半生を振り返りつつ、歴史的な経緯にも触れている本。何より、科学一辺倒でなく、文学などの幅広い分野に造詣の深い博覧強記ぶりに驚嘆します。

僕たちのゲーム史
さやわか

ゲーム黎明期から、ゲームの特性に触れながら、歴史を振り返った本。なかなかの良書。文化的側面やノスタルジックな感想ではなく、構造的にどのようにゲームというエンターテイメントが推移していったのか、その本質がわかります。

職業としての官僚
嶋田 博子

官僚について学術的に論考した本。レビューを読むと高評価で、平易でわかりやすいと高評価ですが、自分にとっては予備知識が少ないためか理解しにくい箇所も多くありました。英米仏の官僚制などと比較して論じてある部分はわかりやすく、各国の方針によって立ち位置も違う、というのは興味深かったです。政治家の答弁を官僚が作成するいまのスタイルは絶対おかしいと思うが、外国ではちがう、という点は面白かったです。

コロナ後の世界

コロナがある程度収束しつつある2022年11月現在から読むと、全体的にややズレている印象。GAFAはたしかにコロナ渦中は追い風だったが、現在は軒並み株価を落とし、特にFacebookはメタと社名変更して以降、壊滅的なダメージを負っています。予測の精度が低いというよりは、それだけ予測が難しい状況だったのでしょう。

コロナ後の未来
ユヴァル・ノア・ハラリ,カタリン・カリコ,大野 和基

インタビュイーは豪華だが、それぞれの主張が噛み合ってないし、全体的に薄味。それに、どの主張とも現実が噛み合っていないように思います。特に、リモートワークを中心とした「働き方」についてはまだ意見がバラバラして、統一した見解はほぼありません。自分自身、リモートワーク主体で仕事をしているが、これでいいのか? ということは常に思っています。

流通大変動 現場から見えてくる日本経済
伊藤 元重

10年ほど前の本だが、この頃からずいぶんと世の中が変わってしまいました。一番大きな変化は、スマホがここまで普及することで、人々のライフスタイルが変化したことでしょう。

官僚の掟 競争なき「特権階級」の実態
佐藤優

論点が散らかっており、よくわかりません。佐藤優も、粗製濫造がすぎるので、もう読まないでしょうね。

私たちの国で起きていること 朝日新聞時評集
小熊英二

社会学者・小熊英二氏のコラム集。氏のファンなので、読み応えがあります。

政治家の見極め方
御厨 貴

戦前の政治家のありかたからいまの政治家のありかたを比較したり、安倍内閣が官邸主導だとしたり、時代によって変わっていく政治家のスタンスの変化が見れて面白かったです。一方で、SEALDsを礼賛していたり、ちょっと自分の感覚からは外れたところもあったので、全体的に話半分に捉えました。

大量生産品のデザイン論 経済と文化を分けない思考
佐藤 卓

「デザイン論」というほど論に重点がおかれてなかったような気もしますが、大量生産品のデザインをすることについて、経験談を交えて語られています。街を歩いて、目にするものはほぼすべて誰かがデザインしたものだと考えると面白いかもしれません。

狩猟 始めました --新しい自然派ハンターの世界へ
安藤 啓一,上田 泰正

個人的に馴染みの少ない「狩猟」についての本だったため、好奇心で手に取りました。が、確かに専門的な内容は少ないものの、読んでいてあんまりしっくりきませんでした。自然と関わり、自然を慈しむのがハンターと書かれているが、猟銃で自然動物を殺す行為に必然性があまり感じられません。また、害獣駆除的な意味合いでいうならば、別の方法もあるように思います。ハンターが年々減っているのは、それだけ人々の生活から乖離があるからではないでしょうか。とはいえ、なかなか自分の中でも結論は出ません。

考える、書く、伝える 生きぬくための科学的思考法
仲野 徹

実際のゼミの様子を書籍化した良書。どれも基本的なことではありますが、学生の実際の論文やプレゼンなどを紹介することにより、具体的な例を踏まえて理解しやすい。これは、学生たちも大学院に進学しても生きてくることばかりでしょう。

現代戦争論―超「超限戦」- これが21世紀の戦いだ
渡部 悦和,佐々木 孝博

一応通読したものの、専門用語が多いため、理解は浅いかもしれない。ロシア・ウクライナの戦争については2020年の本なので当然記述がありませんが、この本で書かれていることが展開されているのだと思います。

キラーストレス 心と体をどう守るか
NHKスペシャル取材班

あたりまえのことしか書いてないような感じですが、反響は大きいみたいですね。ゼブラフィッシュの実験の話が面白かったです。

ルワンダ中央銀行総裁日記
服部 正也

1960年代にルワンダの中央銀行総裁として赴任した著者による本。専門的な金融政策の話が淡々と続くので、正確な理解は難しい。だが、空港には建物らしい建物もなく、商店が数軒ある程度だったキガリにて、方針を定め、発展へと導いたのは素晴らしいです。外国人ということで味方も何もないような状態からのスタートだが、早々に大統領からの信頼を得、反対派を説得していくところは凄い。しかし何よりも、ルワンダの発展を阻害していたのは国民性などではなく、発展する「仕組み」がなかったからで、それの礎を作った功績は大きいと思います。

就活のワナ あなたの魅力が伝わらない理由
石渡 嶺司

就活対策本。就活したはもう10年以上前のことだが、いまの就活はどうなっているのか関心があったので読んでみた。基本は10年前と変わっていないが、動画で自己PRする企業もある、というのはびっくり。コロナで書くことがあまりない、という声もよく聞きますが、コロナ環境で何ができたか、というあたりは書きがいがありそうですね。

あの棋士はどれだけすごいの?会議
高野秀行(棋士),岡部敬史,さくらはな。

歴代の棋士の凄さを伝えてくれる本。この手のライトな読み物には珍しく、図面が多いため、実際に将棋を指す人のほうが楽しめるかもしれません。大山先生、升田先生のことはよくわかりましたが、中原先生の凄さなどもよくわかり、とてもよかったです。

土地は誰のものか: 人口減少時代の所有と利用
五十嵐 敬喜

土地の所有や活用について総括的に書かれた本。かの司馬遼太郎が、土地の活用がずさんなことに警鐘を鳴らしていたのが興味深い。「土地」というが、要は「土地」という所有物があるのではなく、「利用権利」をやりとりしている、と考えるとしっくりきます。九州全土に匹敵する土地が不明瞭になっているということは、活用の価値がないということなので、活用の方法を考えるのが先ではないでしょうか。

作家という病
校條剛

編集者の視点から、作家という生き物を見た本。昭和の作家が多いので、いまの作家という観点でみると、また見方が違うかもしれません。あきらかにこの時代のほうが、人間的にはクセのある人が多かったでしょう。

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