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AI歌壇!八幡氷雨というにんげんの場合
ごきげんよう。八幡氷雨です。
それと会えないときのために、こんにちは、こんばんは。そしておやすみ。
あ、あとはじめての方ははじめまして。
八幡氷雨ってなに?
って方多いですよね。わかります。わたしも日頃そう思っています。だれ?
こんな感じの短歌を詠むひとです。ぜんぶ見ていってね。
あとはきりさめ句会/歌会を不定期で開いています。フォローしてね。最近サボりぎみ
https://twitter.com/HaiTan_Kirisame
さて。
この度ネット短歌企画「AI歌壇」の人間選者として声をかけていただきました。わたしにんげんだったんですね。ありがとうございます。
短歌を盛り上げる企画、とってもすきです。わたしは文学の楽しさを広げる活動を応援しています。
企画発案者の深水英一郎さまからは「賞の名前は自由です」という旨をいただいておりまして。わたしはどうも賞と名付けてしまうとなんか権威っぽくて苦手だったりしますので、もっと気軽に捉えていただければな、と思います。
ということで。
独断と偏見と好みで選ぶ短歌たち!〜八幡氷雨ちゃんの場合〜
にしておきます。
自由詠から10首、テーマ題「針」から8首選びました。
すきだった順に並べています。それぞれ上位半分ずつ選評を書いています。
それではよろしくお願いします。あ、敬称略です。
自由詠
◎折り紙を教えてくれた祖母の手の形を探す火葬場の午後 /あおいそうか
とってもすきです。そしてとってもわかる。やっぱり思い出がたくさんあるひととの別れは受け入れがたいし、それでも眼の前の光景から目を逸らすわけにもいかないし。感情を書かずに淡々と綴っているところも、その時の空気感が切々と伝わってきてよいです。それでいて生前の祖母のほんわかとしたやさしい雰囲気も見えてきます。これ書いてる途中でちょっと泣いてしまいました。
◯最終の電車に揺られてチェロ弾きとチェロは同じ角度で眠る /ZENMI
こういう日常の中にあるちいさな発見の切り取り方がすきです。チェロを抱えて寝ていたのかな。演奏会終わりなのか練習終わりなのかは知る由もないけれど、たぶんそのチェロ弾きの人にとってとても大事な存在なのだろうな……と想像の余地ができてよいです。
◯カバになる夢を見たあんまり今と変わらない生活をしていた /ZENMI
うまく言えないけどすきです。シンプルに面白い。いいとも悪いとも言っていないところがいいですね。今と大きく変わっていたほうがよかったのか、それとも変わらなくてよかったのか。案外すぐに結論を出せませんものね。日常への愛着。
◯四十億年《しじゅうおくねん》の流れの今日もまたフルーツグラノーラ流れ込む /とらうと
四十億年の流れのその一番先端としての今日にあるのがフルーツグラノーラ、という意外性。でもそれはたしかに、いま今日という日常を創り出す欠片なんだよな……というバランスの良さがいいですね。
◯わたあめとあだ名を賜りました佐藤ですなるべくふわふわする所存であります /畳川鷺々
堅苦しくてすき。もっとふわふわしてもいいのよ。佐藤→砂糖→わたあめなんだろうけど、ザラメっぽいよね佐藤くん。わたしもザラメっぽい佐藤くんにわたあめってあだ名つけたい。
あめんぼがみづすべるやうはじめてのはだはじめてのくちびるそして /白糸雅樹
ねこねむるとけるからまるるるるるる春る、るる春あくびをしたる /秋月祐一
病院は満員であり全席が優先席のような待合 /ef
指先で波紋をつくって傷つけたメダカの数が試験に出ます /虚光
鮮やかなひまわり畑を泳ぐときひかりをまとう魚《うお》となる子ら /碧乃そら
テーマ題「針」
◎秒針は刃でもあり夕焼けへ診療所の影ながく伸びゆく /石村まい
こういう捉え直しと言うか、なにかを再定義するような短歌がすきです。診療所の静けさにかすかに響く秒針の音が聞こえてくる気がします。たしかにするどさを持つなあ。「刃」や「影」というマイナスイメージの単語で不安感が見えますが、でも診療所は夕焼けに照らされているのだし、それだけではないのかも。それだけでなければよいな。
◯妹のピアノひそかに売られゆく午後軋みつつ秒針すすむ /デコピン
ピアノ、どうしても時が経つと使われなくなってしまうんですよね……わたしの家でも経験があります。 売られゆく午後/軋みつつ秒針すすむ なのでしょうが、その空間自体もどこか軋んでいるように感じられます。妹もピアノの存在を完全に忘れたわけではないのだろうけど、間違いなく昔よりも距離があって、さびしいね。
◯検針日になると私の毎月の涙の量をはかる妖精 /宇井モナミ
泣かない月もあるのかなあ。ないかなあ。 泣かないようにしたいけど、でも泣いてしまうし。妖精にもちょっと会いたい気もするし。
◯針付きの時計を毎度買い求め実入り少なき日雇いバイト /とんだ一杯食わせ者
どうでもいいときの腕時計、存在を忘れてしまいがち。言われてその存在を思い出しました。生活感と、その中で毎度忘れてしまうものに対する淡白な関係性が面白いです。忘れないといいんだけど、そうもいかないよね。
白猫の被毛のやうな針をもつさぼてんだからキスしてしまふ /高田月光
秒針を追い越せぬまま凡百の選手の夏がさきほど終わる /ef
今も好き 針というより棘なのでピアスホールの調子が悪い /小石岡なつ海
肺胞に幽かな針と分け入ってきみのことばを分かってみたい /ef
以上です。
自由詠・テーマ詠合わせて288首だそうです。こんなに多くの短歌に触れる機会はなかなかなかったので、貴重な経験をさせていただきました。
みなさまありがとうございました。 それでは。八幡氷雨でした。