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久しぶりな本あるき
2月もなかったように一瞬で過ぎ去ったし、3月も気づけばもう終わるようだし、世の中はこんなんだし、外は大雪だし。どうなっちゃってるんだろう。
3月から晴れて一人暮らしを始めたら一人の時間が増えたし、実家に比べて交通の便がかなり悪くなったので電車に乗る時間が倍になった。しかも今キャリアを外しているのでケータイに電波が通っておらず、必然的に本を読むようになっている。
かなり久しぶりになってしまったが、最近読んだ3冊を載せていくよ。
1.『日日雑記』
富士日記で有名な武田百合子さんの作品で「雑記」というタイトルからずっと気になっていた。ブックオフで購入し半年ほどの積ん読を経て、やっと読むことができた。
著者自身のある時期の日記なのだけど、その一瞬一瞬の描写が細やかで美しい。
どうってことないようなこと、すぐに忘れてしまうような違和感や良いなと思ったことをほどよく鮮明に美しく、そしておもしろく表現している。
もっと日々の生活の中にひそむ何かしらに気づき、見つけ、わかっていきたい。
なんてことのない毎日でも無意味に過ごすことがないように想像力を持ち、それをうちに貯めて消滅させず、何かに残していくことをしたい。
2.『芸術実行犯』
私にとってidea inkシリーズの本への信頼は絶大で、内沼晋太郎さんによる『本の逆襲』は、私に出版業界を目指すきっかっけを与えてくれた大切な本だ。
『芸術実行犯』は、知り合いが元自宅にて個展を開いた際にありがたく100円で譲り受けたもの。
Chim↑Pomというアーティスト集団は、アートに疎い私でも耳にしたことはあって、なんとなく「よくわからないことをしているやばい人たち」というアホらしい概念しか持ち合わせていなかった。でもなんでこの本を買ったのだろう。100円という手軽さもかなり後押ししているけど、これからデザインを学ぶ上で芸術やアートについて知りたい気持ちが強かったからだと思う。
アートってよくわからない。冒頭からアートのよく分からなさが炸裂して大変だった。でも読み進めていくと、わかりはじめたような、わかった気になっていくような感覚がうまれる。アートの概念というものが疎いながらも自分にはあって、それをこの本でひっくり返されたみたいだ。
表現の自由についての話は興味深く、たしかに自由とはそもそも与えられるものではない。社会の常識に依存してきた私たちをハッとさせるもの、それがアートなのかもしれない。わけのわからないアート、そのアクションが新しい自由というものをつねに生みだしている。アートの新しいかたち。
やっぱりアートを完全に理解できないけど、理解がぐっと深まったらしい。
これは本当に読んでよかったなと思う。
3.『蟹に誘われて』
panpanyaによる漫画。これはある方の個展に行った時「日記」をテーマに選書していた中にあった一冊で、手に取った瞬間これは…!と興奮したのを覚えている。その場では買えなかったので、メモを許してもらって即自店で注文購入した。
興奮した理由はいくつかあるのだけど、まず装丁が良い。panpanyaの漫画の表紙はまず漫画に見えないものが多いし(新書っぽかったり)、カバーを剥がした時には思わず声が出そうになった(ブックカバー下のデザインにも余念が無い本が私は大好きなのだ)。しかも著者自身の装丁だというのもたまらない。
漫画の合間合間に折り込まれる著者の何気ない日記も興味深く、著者の頭の中をもっと知りたくなる。
現実世界ではあり得ないストーリーが繰り返され、その訳のわからなさが個人的には最高に好きだった(千と千尋の神隠し的な別世界観がある。人間とカエルが同じ言葉を喋り、二本足で立ち共存しているみたいな)。
漫画の妙なエピソードを時々挟まれる日記が若干解説的な役割を果たしている。日ごろ生きている中で、む?と思ったことって山のようにあるけど、腑に落とす前に忘れてしまうことが多い。腑に落とすまで考えることを私はほとんどできてない気がする。
どうでもいいムダなことばかりを拾い集めて、それを表現することの面白さ。それを装丁という側面からも表現しているpanpanyaすごい。
この人の作品は追う必要がある、、、!
今回の本あるきはここまでで。
読んだ本は楽天のReadeeというまだまだ改善の余地ありまくりのアプリで更新しているので、よかったら見てみて〜
https://readee.rakuten.co.jp/staffreviewall/9089121