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水車小屋のネネ 津村記久子 毎日新聞出版

オーディブルにて。
「いい人」がたくさん出てくる。
ひどいことをする人も出てくるのに、それを受け止める主人公たちの理解の仕方がおおらかで、ああ、こんな風に物事を考えられたらなぁ、と思ってしまった。

実は、かなり過酷な運命の下で生きる人が多く登場するし、皆が成人君主なわけではないし、それぞれに現代的な悩みもある。
みんな、悩んだり、つまづいたり、困ったり、クセもいろいろあるのだけれど、優しく、ゆっくり、着実に生きている感じがして、なんだか読んでいるだけで心が落ち着く。心が落ち着く、と主人公も言う、川の音が聞こえてくるような気がする筆致だった。

この本の登場人物たちのように自然に、誰かのために何かをすることが嬉しいと思って毎日を過ごしていけるとしたら、、、人間らしい幸せって、もしかしたらそういうことなのかもしれないとふと思う。

みんなが自分にできることを持ち寄って、誰かに親切にしようとしているだなんて、文字にするとまるで空想上の理想郷のようだけれど、この本に触れている間は自分にもできそうな気がしてくるから不思議。
「自分はみんなの親切で出来上がっているからそれを今度は誰かに分ける」という発想がとても素敵に聞こえた。

ヨウムのネネの存在がとてもいい。
とても丁寧な取材をしたのであろうことが良く分かる。

誠実で、優しくてしなやかに強くて、でもサボったり誰かと話が合わなかったりもする普通の人、、、まるでこの本の登場人物たちのような人を想像させるあとがきが、また素敵だった。

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