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【思い出語り】映画「フルメタルジャケット」レビュー

あいさつ

こんにちは、皆さまお疲れ様です。
本日は映画「フルメタルジャケット」のネタバレあり思い出垂れ流しです。
余りに著名すぎる作品なのでご存じの方も多いと思いますが、久しぶりに見返したので書き残しておきます。
なお今回は字幕版を前提にしています。

「戦争映画の傑作」

まごうことなき傑作であり、世間から非常に高い評価であることも納得。
実際に「戦争映画でオススメは?」と聞かれて挙げた事も多い。

戦争に出向くということがどういうことか。戦場はどういうものなのか。
フィクションの中だと分かってもいてもこれらが生々しく伝わってくるあらゆる演出と迫真の演技。
全てが高いレベルでまとまっており、1987年公開とは思えない程のクオリティである。
戦争映画に抵抗が無く、本作を見ていない方は是非一度鑑賞してほしい。

特に監督・脚本のキューブリック氏が監修した日本語字幕(表現)は他のどの映画よりもインパクトが強い。
一部は現代でもネットミームに残る表現もあるので、本作を知らずとも馴染みのある人もいるかもしれない。

無理やり欠点を挙げるとしたら、執筆時の現代から見たら諸々と安っぽく見えてしまうのは仕方ないと思います。
とはいえ撮影技術も表現技法も30年近く前の作品なんだから当然ですが。

前半:キャラが強すぎる訓練時代

大半の人が前半1時間の記憶ばかりになってしまうんじゃないか…?
と思わせるほどにはインパクトが強すぎる鬼教官。そして微笑みデブ。
どうやったらあんな罵詈雑言のレパートリーが生まれるんだ。

  • 「口からクソを垂れる前と後にsirを付けろ!分かったかウジムシども!」

  • 「貴様らは人間ではない、両生動物のクソをかき集めた値打ちしかない!」

  • 「ふざけるな! パパの精液がシーツのシミになり、ママの割れ目に残ったカスがお前だ! どこの穴で育った?」

  • 「まるで、そびえ立つクソの山だ」

  • 「人種差別は許さん!黒豚、ユダ豚、イタ豚を、俺は見下さん!すべて平等に価値がない!」

こんなのおよそ人にかける言葉じゃないよな…
上記ですら罵詈雑言のごく一部だというのがまた常軌を逸している。
この記事を執筆時の社会では、各方面への配慮が必要だったり行き過ぎた表現は規制されがちだが、無事に配信されていて良かった。
(そもそも過去の時代を描く作品に規制ってどうなんだ?)

あと、主人公はレナード(微笑みデブ)だと思ってた。
落ちこぼれが同期からもいじめられ心が壊れていくが、狙撃の腕を軍曹に認められた時に「あぁ、これで微笑みデブも報われるのか…」と思ったよ。
そして最後のトイレでジョーカーと対峙したレナードの表情がまた良かったんだ…

後半:ベトナム戦争の一幕

後半は完全にジョーカーが主役として描かれる。
戦争の最前線においては敵対勢力に対するモラルや道徳といったものが崩れている側面も映す。
戦争なんだから当然という声もあるでしょうが、現実にはルールや決め事があり、それを遵守しなかったことも米国批判に繋がっているわけで。

それが最も顕著なのはドアガンナー(ヘリから機銃を打つ人)かな…

  • 「逃げる奴は皆ベトコンだ! 逃げない奴は訓練されているベトコンだ!」

  • 「簡単さ、動きがのろいからな」(女子供を撃つことに対して)

  • 「ホント戦争は地獄だぜ!」(満面の笑み)

本当にセリフどうなってんの。
ぶっ飛びすぎててもう分からん…何というか「サイコパスぶったキャラを作ろうとして出来たキャラではない」感がすごいのよ。

あとは玩具をはじめとした何かに見せかけた爆弾(ブービートラップ)の描写が入っていたり、ジョーカーの小隊を苦しめたスナイパーが一人の女性兵士であったり。
「ベトナム戦争はこういうものであった」というのをフィクションながらに表現しきったものという印象。

そして最後の「ミッキーマウスマーチ」
前半のハートマン軍曹の罵倒に並び、これらがフルメタルジャケットにおいて印象に残るシーンの2大巨頭かなと。
印象に残るというだけで、何か大きなメッセージ性があるのかと言われると「そうではないんじゃない?」って気もする最後の行進。正直ちょっと不思議なシーンでもある。

反戦映画なのか?

「戦争映画」だけど「反戦映画」ではないかな。
こればっかりはスタンリー・キューブリックが本作品を「戦争そのものを映画に」として制作したことから明白かなと。

戦争映画 → 戦争を描いた映画
反戦映画 → 戦争の愚かさや残虐さを訴える映画

よく思うのが、戦争映画を見て「戦争は繰り返してはならない」と感じ反戦感情を抱くのは間違っておらずその通りだが、それは「この映画は反戦映画である」というレッテル貼りとは違う。
「自分の感じたこと」と「作品が表現したかったこと」は違うよね。

ただ「戦争はこういうものである」ということを表現した作品であり、それが映画というエンターテインメントとして優れているだけの話かなって思います。

最後に

先述の通り、戦争映画の傑作であり一見の価値あり。
そして鑑賞して良かった映画として間違いなく記憶に残ったもの。

もちろんある程度の暴力描写に抵抗の無い場合に限った話ではあるが…みた人に強烈なインパクトを残すことは保証できる。

蛇足だけど、常々「翻訳や吹替の際には原作を尊重すべき」と思うな…
読みやすく、分かりやすく表現するのはそれはそれで大事。
でも原作通りを尊重して売れなかったならそれまでの作品であっただけだよなぁって。


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